株式会社帝国データバンクは、従業員の離職や採用難などに起因する「人手不足倒産」の発生状況に関する調査・分析を実施しました。この調査により、深刻化する人手不足が企業経営に与える影響が浮き彫りになっています。
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調査結果のポイント
2025年度における人手不足倒産は前年度比約1.3倍となる441件に達し、過去最多を更新する結果となりました。建設業や道路貨物運送業をはじめ、老人福祉事業や飲食店、労働者派遣業といった労働集約型産業において増加が目立っています。特筆すべきは、従業員や経営幹部などの退職を要因とした「従業員退職型」の倒産が118件に上り、こちらも過去最多を更新したことです。
なお、調査期間は2013年1月1日から2026年3月31日まで、集計対象は負債1000万円以上で法的整理による倒産となっています。
人手不足倒産が441件に達し3年連続で過去最多を更新
従業員の退職や採用難、人件費高騰などを要因とする人手不足倒産(法的整理、負債1000万円以上)は、2025年度において441件発生しました。これは前年度の350件から約1.3倍の増加となり、年度ベースで初めて400件を突破し、3年連続で過去最多を更新したことになります。
建設業が全体の4分の1を占める状況
業種別に見ると、建設業が112件と最も多く、全体の25.4%を占める結果となりました。建設業は全業種の中で人手不足を感じている企業の割合が最も高く、深刻な人手不足が継続している状況です。施工に必要不可欠な資格・スキルを有する現場作業員や営業担当者の退職が続き、事業の継続が困難になる事例が多く見られました。
具体的な事例として、足場工事業を営んでいた幸佳組(三重県、2026年2月破産)では、職人不足に加えて、それを補うための人件費上昇も重なったことで赤字体質が続き、これが引き金の一つとなって破産に至りました。

労働集約型産業で軒並み過去最多を記録
また、ドライバー不足や高齢化が深刻な課題となっている道路貨物運送業では55件の倒産が発生しました。さらに、老人福祉事業で22件、飲食店で21件、労働者派遣業で12件と、労働集約型産業を中心に、それぞれの業種別で過去最多を更新する事態となっています。
従業員退職型が初めて100件を超える
人手不足倒産のうち、従業員や経営幹部などの退職を要因とした「従業員退職型」の倒産は118件となりました。年度ベースでは初めて100件を超え、4年連続で増加している状況です。
橋梁工事業を営んでいたライブディック(宮城県、2025年9月破産)は、従業員の退職が相次いだことで例年通りの工事受注ができない状況に陥り、事業継続を断念することとなりました。また、浄化槽の清掃保守・点検を手がけていた日本公害管理センター(東京都、2025年10月破産)では、2025年に入って複数の若手従業員が立て続けに退職したことが影響し、事業停止を余儀なくされています。
中小・小規模事業者の課題
企業からは「求めるスキルを有する人材の応募が少なく、仮に応募があったとしても、自社よりも賃金水準の高い他企業へと流出してしまう」といった声が聞かれています。特に中小・小規模事業者においては賃上げが容易ではありません。今後は賃金以外の要素も含めた総合的な魅力の構築が不可欠であると言えますが、物価高の継続で収益改善も進まず、事業継続を断念せざるを得ない企業がさらに増える可能性もあります。
出典元:株式会社帝国データバンク













