
株式会社帝国データバンクは、全国における「花屋」市場に関する調査・分析結果を公表しました。
調査結果の概要
2025年度における花屋市場(事業者売上高ベース)は、およそ2250億円規模に到達し、前年比で1.4%の増加となることが明らかになりました。これにより、2年ぶりに市場が拡大に転じたことになります。生活に必須ではない花卉(かき)類の購入抑制や冠婚葬祭の小規模化傾向により、店舗での販売は苦戦が継続しています。その一方で、「母の日」における需要の安定性に加えて、ライブ・舞台・コンサートなどで定番となったフラスタ(フラワースタンド)の需要、さらにフォトスポット・フラワーウォールといった体験型消費の広がりが、市場の回復を支える要因となっています。
[調査対象] 「花・植木小売業(花屋)」を主力事業として展開する企業
[注1] 業績等のデータについては、2026年3月時点における帝国データバンクが保有する企業概要ファイル
(COSMOS2、約150万社収録)、企業信用調査報告書(CCR、約200万社収録)、外部情報などを基に集計されています。
[注2] 事業者売上高(セグメント売上高、推定を含む)の合計。2025年度の数値は各社の予想値に基づきます。
フラワースタンドが新たな成長要因に 花屋市場が2年ぶりのプラス成長
2025年度(2025年4月~2026年3月期決算)における花屋の市場規模(事業者売上高ベース)は、約2250億円前後となる見通しです。前年度と比較して約1.4%のプラスとなり、2年ぶりに前年度を上回る結果となる見込みです。花屋市場はコロナ禍において大幅な落ち込みを記録し、近年は横ばいの傾向が続いていましたが、「母の日」などのイベント向け販売に加えて、ライブやコンサートで近年定着してきた高単価・高収益な「フラワースタンド(フラスタ)」の需要拡大など、新規ジャンルへの取り組み・市場開拓が進展しています。
国内における花卉(かき)類を取り巻く状況として、大阪花博から37年ぶりとなる国際園芸博覧会(花博)が2027年に神奈川県横浜市で開催されることが決定しています(2027国際園芸博覧会、GREEN×EXPO 2027)。花屋業界においては、プレイベントや関連するイベントを通じた「花とのふれあい」の機会増加により、生活の中に花を取り入れる文化が再び注目されるといった効果への期待が高まっています。

花屋の業績動向(見通しを含む)を見ると、2025年度は前年度と横ばいの「前年度並み」が6割を超える結果となりました。一方で、「増収」となった企業が18.5%に達したほか、損益の面では前年度からの「増益」が40.9%を占めており、前年度(32.6%)から上昇しています。母の日イベントをはじめとして、家族や友人へのカジュアルなギフトとしてフラワーアレンジメントが選択されるようになったことに加え、「体験型」のフラワーウォールやフォトスポットなど、写真映え・没入型コンテンツとしての花の価値が再認識されつつあります。その結果、利益率の高いイベントや展示会などの空間プロデュース案件、オフィス・商業施設向けのグリーンレンタルが増加し、大型ディスプレイ用の装花を提供可能な花屋を中心に業績が改善傾向で推移しました。ドライフラワーや塊根植物(コーデックス)といった趣味性・専門性が高い商品を展開する花屋では、インターネット通販(ECサイト)を活用して根強いファン層を獲得し、成長につなげる事例が見られました。
また、最近ではライブやコンサート、舞台の出演者に向けてファンが推し活の一環として個人・グループで贈る「フラワースタンド(フラスタ)」が定番となっています。演者やキャラクターのイメージ、コンセプトを花やパネルで表現するフラスタは、高度なデザイン力と技術力が求められることから競合が少なく、一般的な生花販売と比較して高単価・高収益を実現しやすい特徴があります。店頭でのホームユース向け花卉販売が低迷するなか、大型装花を得意とする花屋では、こうした「推し活」「体験型」の拡大も業績を下支えする要因となっています。
一方で、損益面において「減益」(見通しを含む)となった花屋は24.8%、「赤字」が33.6%を占めており、減益と赤字を合計した「業績悪化」の割合は58.4%に達しました。6割を超えた前年度(66.6%)からは減少したものの、依然として利益確保が困難な花屋も多く存在しています。長期化する物価高のなかで、生活必需品ではないホームユース(家庭用)の購入抑制が継続しており、食品スーパーやホームセンターなどの大手量販店との価格競争も厳しい状況です。また、巨大な生花祭壇など安定した需要が見込めた冠婚葬祭向けにおいては小規模化・簡素化が進んでおり、こうした販売先を主力とする花屋では受注減少による影響が大きくなっています。他方で、肥料や資材費の高騰により花卉類の仕入れ価格が上昇しているほか、物流費、水道光熱費も高騰しており、花の鮮度を維持するための運営コストも増加し、利益面で余裕のない状況が継続しています。この結果、顧客離れを懸念して価格転嫁が遅れた花屋では、減収と大幅な赤字を余儀なくされるケースが目立つようになっています。
推し活などの「体験価値」、花を活用した訴求が市場拡大の鍵
現在の状況では、従来型の店頭小売りや「従来型の冠婚葬祭依存」では生き残りが困難になっています。また、肥料高騰に加えて、原油高を背景とした花卉類のさらなる価格上昇が予想され、仕入れ価格の上昇を避けることができない情勢となっています。また、花卉類は商品の特性上、温度や水分管理など鮮度維持が不可欠であり、輸送コスト増や輸送力の低下といった影響を受けやすいほか、人件費や水道光熱費などのコスト増への対応も求められています。一方で、デジタル化や効率化が進むなかで「思いを伝える」体験(トキ)を演出するツールとしての花の価値が見直されているほか、「推し活」などで注目を集めるフラワースタンド文化の浸透、「バレンタインに男性が女性に花を贈る」など花を素材とした新たな文化の定着が花卉類の需要を生み出す原動力になっています。
「映える」フラワーアレンジメントなど花屋の技術(スキル)も問われるなかで、「花を通じた体験価値」をどのように提供できるかが、今後の花屋業界で生き残るための鍵になると考えられます。
出典元:株式会社帝国データバンク












