
「コマースピック」の読者の中には、Xを活用されている方も多いと思いますが、こんな風に感じることはありませんか?
「商品の魅力を丁寧に投稿しているのに、ユーザーからの反応が薄い」
「一時的にバズっても、継続的な売上にはつながらない」
「プレゼントキャンペーンは盛り上がったけれど、その後の投稿のインプレッションが伸びない」
実は、こうした悩みの多くは「Xのアルゴリズムに対する誤解」から生まれています。
2026年1月20日に、Xは「おすすめ(For you)」に関わる最新のコードを公開しました。
We have open-sourced our new 𝕏 algorithm, powered by the same transformer architecture as xAI's Grok model.
— Engineering (@XEng) January 20, 2026
Check it out here: https://t.co/3WKwZkdgmB https://t.co/nQ5GH1a42e
昨年9月に公開されたアルゴリズムの全体構造自体は変わらず、「スコアリング(Phoenix Scorer)」と「検索(Phoenix Retrieval)」の2つのフェーズでGrokベースのシステムに置き換わっていることがわかりました。
本記事では、現時点で公開されているアルゴリズムの仕組みをもとに、EC事業者に押さえていただきたいX活用方法を解説します。
秋山 幸世
株式会社ホットリンク
コンサルティング営業本部 事業推進補佐
2019年3月に入社し、飲食やスキンケア、アパレル企業などのソーシャルメディアマーケティングのコンサルティング業務・SNSアカウントの運用代行に従事。現在はコンサルティング営業本部で事業推進補佐として、Instagram事業の拡大に携わる。
株式会社ホットリンク
https://www.hottolink.co.jp/
Xでよくある「3つの誤解」
まず、Xを活用する際によくある「3つの誤解」を整理しましょう。
誤解①フォロワーが増えれば、その分インプレッションも増える
「フォロワー数 = 安定したリーチ基盤」と考えていませんか?これは現在のXでは成り立ちません。
例えば、100万以上のフォロワーを持つ大手飲食チェーンの公式アカウントでも、通常投稿のインプレッションはフォロワーの約5〜6%程度にとどまっています。
仮にフォロワーが1万人増えたからといって、通常投稿が1万インプレッション増えるわけではないのです。
誤解②商品を丁寧に紹介すればユーザーに届く
「うちの商品は本当に良いものだから、丁寧に説明すれば伝わるはず」と思っていても、Xのアルゴリズムが判断するのは、商品自体の良し悪しではありません。「その投稿にユーザーが反応するか」です。
どれだけ良い商品でも、投稿として「反応したくなる」設計でなければ、アルゴリズム上、評価されにくいのが現実です。
誤解③広告を使わず、オーガニックで勝負すべき
「SNSは無料でやるもの。広告に頼るのは邪道」と考えていませんか?
しかし、オーガニック投稿はアルゴリズム変更によって露出が大きく左右されます。フォロワーがいても確実に届くわけではなく、仮に一度バズって大量のインプレッションを獲得できたとしても、再現性をもってバズを起こすのは困難です。
こうした不確実性を、広告で補完するのが合理的です。
誤解の原因は?
なぜこうした誤解が生まれるのでしょうか?それは、「Xがどのように投稿を表示しているか」の仕組みを理解していないからです。
ただし、誤解しないでいただきたいのが、アルゴリズムは非常に複雑なので「攻略」できるものではありません。
この記事では、アルゴリズムの構造を知ることで「何が本質的に評価されるか」を理解し、小手先のテクニックではなく、中長期で成果につながる運用の考え方を身につけていただくために、ホットリンクが読み解いたアルゴリズムの仕組みを解説していきます。
Xの「おすすめ」が決まる仕組み
自社の投稿が他のユーザーの「おすすめ」に表示されるまでには、5つの工程を経ています。この構造を知ることで、「なぜ届かないのか」「何が求められているのか」の本質が見えてきます。
各工程を詳しく見ていきましょう。
工程①候補生成(Candidate Generation)
フォローしている・していないアカウントのポストを含めて、「表示候補になり得るポスト」を幅広く収集する工程です。
2023年に公開されたソースコードでは「フォロー内50%・フォロー外50%」という割合が明示されていました。しかし、最新版のコードではこのような固定比率は示されていません。現在は、各候補ソースから一定数ずつポストを集め、工程②を経て、結果的にバランスを取る設計になっていると読み取れます。
フォローしているアカウントのポストの抽出ロジック
- 直近の投稿を中心に、一定期間内のポストが候補となる
→「あなたがフォローしている人の投稿の中から、一定期間内の投稿」が候補として集められる。
フォローしていないアカウントのポストの抽出ロジック
- あなたのフォロー相手が反応したポスト
- あなたと似た行動傾向を持つユーザー群の中で注目されているポスト
- 過去にあなたが反応した投稿と、同じ投稿に反応したユーザーが、他に反応しているポスト
→フォロー関係ではなく、「行動や関心の近さ」を軸に、投稿が広く集められる。
ここからわかるのは、Xは「フォロワー以外にもリーチできる設計」になっているということです。
重要なのは、自社アカウントが「どのコミュニティの会話に参加しているか」です。同じコミュニティ内で反応を得ることで、そのコミュニティに属する他のユーザーにも投稿が広がっていく構造です。
工程②軽量選別(Light Ranking)
工程①で集められた1,500〜2,000件のポストに対し、比較的軽量な特徴量を用いてスコアを付与し、工程③で処理する対象を上位数百〜1,700件に絞り込みます。
公開されたソースコードから読み取れる、軽量選別で主に参照されている要素は以下の通りです。
「いまの関心」に近いか
- Xの内部システムが、ユーザーの直近の関心シグナル(閲覧・反応・フォロー関係など)と投稿内容との近さを評価
- 「いま関心の高いテーマ」に近い投稿ほど、相対的に高いスコアが付与されやすい
行動が似ているユーザーの反応
- 行動傾向の近いユーザーが、対象ポストにどの程度、どのような反応(いいね・リポスト・返信・クリックなど)を示したかを数値化
エンゲージメント統計値
- ポスト自体が集めている反応量(いいね数・リポスト数・返信数など)を反映
→多くのユーザーから反応を得ている投稿が、相対的に有利になりやすい
鮮度・著者情報
- 投稿の新しさ(投稿時刻)や、著者が過去に得てきた反応実績など、比較的軽量な特徴量を参照
「いま」話題になっているトピックへの反応速度が重要です。「○○の日」などのモーメントや、自社が属するコミュニティ内で盛り上がっている話題に、タイムリーに乗ることが効果的です。
また、エンゲージメント(いいね・リポスト・返信など)は引き続き重要な指標であることが確認できます。
工程③本ランキング(Heavy Ranking)
工程②を通過した候補に対して、高精度な機械学習モデルを用い、「その投稿があなたにとってどれだけ価値が高いか」を予測スコアとして算出する工程です。
工程②が比較的軽量な特徴量を用いた大まかな選別であるのに対し、工程③では、約6,000もの特徴量を使い、各行動が起こる確率を予測する点が大きな違いです。
特徴量の再構築
投稿ごとに、モデル入力用の約6,000もの特徴量を組み立てます。例えば以下のデータが含まれます。
- 投稿内容:テキスト、メディアの種類(画像/動画)
- 投稿者の特徴:過去のエンゲージメント実績
- 関係性特徴:あなたと投稿者の接点(フォロー関係、過去の反応など)
- 時間的特徴:投稿からの経過時間
- トピック特徴:関心トピックとの距離(SimClustersなどの埋め込みを利用)
行動確率の予測
再構成された特徴量をもとに、投稿を表示した際に起こりうる各行動の確率を同時に推定します。
- 正の行動(例:いいね、リポスト、リプライなど)
- 中立的行動(例:プロフィール閲覧など)
- 負の行動(例:ミュート、報告など)
スコア統合
- 各行動確率に重みを掛け合わせ、投稿ごとの総合スコアを算出
- スコアが高い投稿ほど、「反応される可能性が高い」と評価される
単一の指標(いいね数など)だけでなく、多面的に評価されていることがわかります。
いいね数やリポスト数といったわかりやすい指標だけでなく、プロフィール遷移、メディアのタップ、滞在時間なども含めて評価されている可能性があります。投稿が伸びた、あるいは伸びなかった理由を考える際には、複数の指標を定点観測することが重要です。
工程④可視性・品質フィルタ(Visibility / Quality Control)
工程③で高精度なスコアが付与された投稿群に対して、「そもそもタイムラインに表示してよいか」を判定し、明確に表示不適切なものを除外するフェーズです。
この工程では、表示順そのものを決める処理は行われず、主に安全性や信頼性の観点からのフィルタリングが行われます。
可視性フィルタ(Visibility Filter)
- ブロック/ミュート関係にある投稿の除外
- センシティブ設定や年齢制限に基づく表示制御
- 「安全性フラグ」が付与された投稿の抑制
品質フィルタ(Quality Filter)
- スパム確率やbot判定にもとづく低品質投稿の除外
- 信頼性の低いアカウントからの投稿の抑制
- 安全性や信頼性の観点で問題があると判定された投稿の制限
公序良俗に反する内容の投稿や、他のアカウントからのパクリ投稿、頻度が高すぎる投稿などは、ブロックやミュートといったマイナス評価を受けやすく、結果的にアカウント全体の信頼性評価を下げてしまいます。こうした行為を避け、健全な運用を心がけることが重要です。
工程⑤ミキシング/最終出力(Mixing & Response)
スコア付与や可視性フィルタを通過した投稿群をもとに、「どの投稿を、どの位置で、どの順序で表示するか」を組み立て、最終的に1本のタイムラインとして画面に表示するフェーズです。
工程③で算出されたスコアは重要な判断材料として用いられますが、ここでは単純なスコア順ソートではなく、構成ルールにもとづいたミキシングが行われます。
投稿ソースの統合とミキシング
- 複数のパイプラインから供給されたオーガニック投稿を統合し、提案コンテンツやモジュールを含めて、1本のタイムライン構成を作ります。
広告の組み込み
- 広告は通常の投稿とは別の仕組みで選ばれ、タイムラインを組み立てる途中で専用の処理によって差し込まれます。
- 広告と通常の投稿がスコアで直接競い合うわけではなく、投稿の並びを大きく崩さない形で、あらかじめ決められた位置に配置されます。
位置指定・順序制御
- 決まった位置への挿入や表示数の上限、特定タイプのコンテンツが続きすぎないようにするなど、いくつかのルールを順番に適用しながら、最終的な並びを整えます。
- そのため、スコアが高い投稿であっても、構成上の理由から表示位置が前後することがあります。
重複・過密の調整
- 同じ投稿者やトピックスが過度に続かないように整理されます。
ここで重要なのは、「広告は確実にリーチできる別枠」だということです。
オーガニック投稿はアルゴリズムの影響を大きく受けますが、広告は通常の投稿とは別の仕組みで選ばれ、あらかじめ決められた位置に表示されます。そのため、予算をかければ確実にリーチできます。「広告は逃げ」ではなく、不確実性の高いオーガニック運用を補完する合理的な選択だと言えます。
アルゴリズムを踏まえた運用のポイント
アルゴリズムの構造を理解した上で、以下のポイントを意識しましょう。
- エンゲージメントは引き続き重要な指標として追い続ける
- 投稿単体ではなく、アカウント全体の傾向も評価されることを理解する
- フォロワー数より、反応率を重視する
- オーガニックの不確実性を理解し、広告との使い分けを考える
小手先のテクニックで瞬間的なバズを目指すよりも、中長期的な視点で本質的な運用に取り組むこと。それがX活用における成功の鍵となります。
Xは認知の入口、全体設計が重要
Xは「認知の入口」として機能するプラットフォームです。おすすめ表示を通じて、自社アカウントだけではリーチできなかった層(フォロワー以外や異なるコミュニティ)との接点をつくり、新しい顧客層や相性の良いコミュニティを発見できる可能性があります。(※)
一方で、期待しすぎてはいけないこともあります。おすすめに載った投稿から直接的にCVが増えるわけではありませんし、フォロワーが増えたからといってインプレッションが安定するわけでもありません。
アルゴリズムを攻略して瞬間的なバズを目指すよりも、中長期的な視点で運用に取り組むこと。それがEC事業者にとってのX活用における成功の鍵となります。
今後新しいアルゴリズムが公開された際にも、本記事で解説した「どのような軸で評価されるか」という本質的な理解があれば、変更点を冷静に判断できるでしょう。
(※)コミュニティに入り込むアプローチは、書籍『コミュニティマーケティングは「巨人の肩」に乗れ UGCと指名検索が増え続けるSNS活用の新常識』(2025年12月20日発売、日経BP)でも詳しく解説しています。
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