Quanmaticの量子計算技術がカインズの配送効率を約30%向上、必要車両台数を6台削減

株式会社Quanmatic(クオンマティク、本社:東京都新宿区、代表取締役CTO:武笠陽介)は、株式会社カインズが展開する顧客向け配送サービス「CAINZお届け便」において、量子計算技術を応用した「ダイナミック配送システム」を正式に導入し、2025年7月から本格的な実運用をスタートさせたことを発表しました。

このシステムの導入により、複数の店舗における需要に対応したリアルタイムでの配送ルート策定が実現したとのことです。その成果として、サービスの品質水準を保ちながら、必要とされる車両台数を21台から15台へと削減することに成功し、配送の効率性は従来と比較して約30%の向上を達成しています。現在、関東圏および関西圏を中心とした全国21店舗において本システムが稼働しており、「お届け便」のサービス基盤を支えているということです。

「CAINZお届け便」サービスの概要

「CAINZお届け便」は、徒歩や自転車、公共交通機関を利用した来店が主流となっている都市部エリア(一都三県・名古屋・大阪・神戸)の21店舗を対象として、カインズが2022年から提供を開始した配送サービスです。店頭で購入した商品を自宅まで最短で当日中に届けるという利便性の高い仕組みが顧客から好評を得ており、2024年には年間の配送件数が20,000件を突破するまでに成長しました。

量子計算技術の本格的な導入背景

今後の「お届け便」サービスの拡大に伴い、配送件数が比較的少ない店舗も対象に加わることが想定されています。そのため、複数店舗において柔軟性の高い配送ルート設計を実施することで、車両を効率的に共有できる体制を構築する必要性が生じていました。このような複雑な計算課題への対応策として、QuanmaticとカインズはCO2削減を目指し量子計算技術を適用したアルゴリズムを実装した「ダイナミック配送システム(特許公開済、公開番号:2024-176474)」を共同で開発しました。

近隣に位置する複数の店舗で車両を共有する共同配送モデルを採用することにより、各店舗における配送需要に応じた最適な配送ルートをリアルタイムで策定することが可能となり、配送効率の大幅な向上を実現しています。

量子計算技術導入による具体的な成果

2025年7月に本システムを導入した結果、サービス品質を維持したまま、必要とされる車両の稼働台数を21台から15台へと最適化することができました。これにより、配送効率は従来と比較して約30%の向上を達成しています(2025年11月時点のデータ)。

この「約30%向上」という数値は、導入前後における必要車両台数(21台から15台への削減)に基づいた概算値となっており、具体的には6台の削減(6÷21≒28.6%)を意味しています。

今後の展望と取り組み

Quanmaticは今後も、量子計算技術を積極的に活用することで、社会が抱える様々な課題の解決に向けて取り組んでいく方針を明らかにしています。本システムの導入により実証された配送効率の向上は、物流業界における人手不足や環境負荷の低減といった課題に対する有効なソリューションとなることが期待されています。

特に都市部における配送サービスの需要は今後も増加が見込まれる中、量子計算技術を活用した高度な最適化アルゴリズムは、持続可能な物流システムの構築に向けた重要な技術基盤となるでしょう。カインズとQuanmaticによる本取り組みは、小売業界における物流DXの先進事例として、今後の業界全体への波及効果も期待されています。

また、本システムで得られた知見やノウハウは、配送サービスだけでなく、在庫管理や店舗運営の最適化など、小売業における様々な領域への応用可能性も秘めています。両社は引き続き、量子計算技術の実用化に向けた取り組みを推進し、より効率的で持続可能なビジネスモデルの構築を目指していくとしています。

量子計算技術は、従来のコンピューター技術では解決が困難だった複雑な組み合わせ最適化問題に対して、高速かつ精度の高い解を導き出すことができる次世代の計算技術です。本事例は、この先端技術が実際のビジネス現場において具体的な成果を生み出した好例として、今後の量子コンピューティングの社会実装に向けた重要なマイルストーンとなることでしょう。

出典元:株式会社Quanmatic プレスリリース

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