Googleがショッピング体験を強化!Agentic AIの新機能により購買プロセスが自動化へ

Googleは、商品の比較や在庫確認、購入手続きまでをAIがサポートする新機能を発表しました(対象エリアは米国となっており、日本は現時点では対象外)。ショッピング体験のあらゆる工程が自動化されることで、顧客の意思決定がスムーズになり、販売機会の取りこぼしを抑えることが期待されます。

今回のアップデートは、特に価格変動や在庫確保が重要となる年末商戦でも効果を発揮する見込みです。本記事では、Googleが推進する「Agentic AI(エージェント型AI)」による購買プロセスの進化と、その影響について解説します。

AI Modeで「探す〜比較」が効率化

これまでの購買行動では、「検索 → 条件指定 → 商品比較 → 在庫確認」というプロセスを、ユーザー自身が何度も繰り返す必要がありました。

これらの工程がAI Mode(AI検索モード)によって大幅に省力化します。ユーザーが友人に相談するように、自然な言葉で「欲しいもの」を伝えるだけで、必要な情報がまとめて提示されるのです。

  • 価格情報
  • ユーザーレビューから抽出された特徴
  • 在庫状況
  • 商品画像や類似アイテム
  • 比較が必要な場合は、比較表形式で表示

さらに、これらの情報はGoogle が持つ巨大な商品データベース「Shopping Graph」によって裏付けられています。これは、世界中のECサイトやブランドから収集した商品情報(価格・在庫・レビュー・色・サイズなど)を、機械学習で整理し、常に最新状態へアップデートする仕組みです。この基盤をもとに、Googleは“実際に買える”信頼性の高い商品情報を提示できるようになっています。

「条件を絞る」作業はAIに任せ、ユーザーは最初から“意思決定フェーズ”に進める。つまり、検索から購入検討に至るまでの距離が短くなることが大きな効果です。

EC事業者からすると、従来の検索対策(SEO)だけでなく、商品情報そのものの整備がコンバージョンに直結する重要なポイントになります。

Geminiで「検討フェーズ」が効率化

これまで、購入のアイデア出しから比較検討まで、ユーザーはSNSやレビューサイトで情報を集めたあと、別のECサイトで商品を探し直す必要がありました。しかし、Googleの生成AI「Gemini」によって、アイデア出しから候補比較までを、ひとつの体験内でスムーズに進められるようになります。購入手続き自体は、ECサイトやGoogleのサービス側で行う形です。

「友人へのギフトを予算○円以内で探したい」「今年は暖かい色味のコートを探したい」など、会話形式で条件を伝えるだけで、

• 複数の候補商品を提案
• 価格・レビュー・ブランド・在庫情報をまとめて表示
• 気になる商品はそのままキープ

といった流れがスムーズに進みます。Geminiアプリでも同様の体験が提供されており、複雑な検索キーワードを考えなくても、欲しい商品にたどり着けるようになるのです。

EC事業者にとっては、従来の「検索 → サイト流入 → 購入」という導線に加えて、会話経由での検討 → 購買という新しい流入経路が生まれることになります。

そのため、商品説明の明確さやレビューの充実など、Geminiが理解しやすい構造化された商品情報(サイズ・素材・カラーなどの属性情報)が、今後ますます重要になるでしょう。

店舗在庫確認までAIが代行

「今すぐ欲しい」「近くの店舗で受け取りたい」というニーズは、年末商戦をはじめ年間を通じて高まっています。しかし実際には、在庫確認のために電話をしたり、何軒も回ってみたりと、ユーザー側の手間が大きいのが課題でした。

そこでGoogleが発表した「Let Google Call」は、その負担をAIが肩代わりする機能です。検索で「near me(近くで)」などの条件を指定すると、AIが近隣店舗へ問い合わせを行い、

  • 在庫の有無
  • 価格
  • 割引情報やキャンペーン

といった情報を確認して、結果を通知でまとめて返してくれます。Duplex(AIによる音声通話技術)とGeminiが連携し、これまで人が行ってきた問い合わせ業務をサポートします。

リアル店舗の在庫情報がGoogle内の購買導線と結びつくことで、欠品による買い逃しを防ぎ、Click & Collect(BOPIS:店頭受取)の強化にも繋がる点が重要です。店舗在庫データの整備状況が、そのまま検討候補に残れるかどうかに影響する環境が進みつつあります。

Agentic Checkoutで「購入の最終段階」を支援

購入直前に離脱してしまう理由のひとつに、「もう少し安くなるかも」「セールを待ちたい」という心理があります。しかし待っている間に、サイズ欠けや品切れが発生し、結局買えなくなることも少なくありません。

Googleが発表した Agentic Checkout は、この「買い逃し」をAIが補完する機能です。ユーザーは商品ページで、

  • 追跡したいアイテム
  • サイズやカラー
  • 許容価格(予算)

などを指定しておきます。すると値下がりしたタイミングで通知が届き、条件が揃えば、対象加盟店に限りGoogleが代理購入まで実行してくれるのです(事前承認あり)。

対応企業としては、Wayfair、Chewy、Quince、そして一部のShopifyマーチャントが公表されています。

Agentic Checkoutは、価格変動を前提とした購買行動をサポートする機能でもあります。欠品による機会損失を抑制し、値下げ時のコンバージョン最大化に寄与する点が重要です。

また、「どこで・誰が・購入を確定させるのか」という意思決定の主導権がGoogle側へ移りつつあるという視点も見逃せません。Google経由で意思決定が完結する場面が増えるほど、EC事業者はGoogleとの連携を前提とした商品情報や在庫管理が求められるようになります。具体的には、以下の取り組みが今後の競争力に直結します。

. 価格戦略の再設計
価格比較が即可視化されるため、「理由ある価格設定」がより重要に。

. 在庫・店舗情報の精度向上
情報が古ければ候補から外れ、購入機会を損失しやすい。

. SCO(Shopping Content Optimization)への対応
AIが理解しやすい商品情報の整備。

①タイトル・属性情報の構造化
②レビュー要点の整理
③返品理由と解消策の明示

人が探す前にAIが先に商品を提案する。そんな購買の主導権が移る変化が、すでに始まっているのです。

Agentic AI時代に求められる商品情報と在庫管理

Googleが購買プロセスに深く関与することで、EC事業者はこれまで以上に「販売データ」と「商品情報の精度」が問われるようになります。特に以下の3点は、今後のAI連携において重要な領域です。

1. 価格透明性への対応
Agentic AIは、価格差を鮮明に提示します。これまで目立ちにくかった競合との違いが可視化されるため、「意図しない価格競争」や「マージン低下」のリスクが高まります。価格戦略は「安さを競う」から「価格に納得できる理由を示す」方向へのシフトが求められるでしょう。

2. 在庫・店舗情報の精度向上
Let Google Callでは、在庫情報が古い場合、その時点で候補から外れる可能性があります。

  • 在庫同期の精度向上
  • 店舗在庫情報のリアルタイム化
  • BOPIS(店頭受取)の導線設計

これらは、Google経由の購買導線においてCVRに直結します。

3. SEOに加えて「SCO(Shopping Content Optimization)」を意識する
商品情報をAIに理解されやすくする取り組みが重要になります。

例)

  • タイトルや属性情報を構造化
  • レビュー内容の要点整理
  • 返品理由に関する情報の明確化

AIが商品を推薦しやすくすることが、今後の比較・検討フェーズにおける重要なポイントとなるのです。人が探す前にAIが商品を提示する可能性が広がる中で、商品データの整備は競争力に直結する要素となりつつあります。

まとめ:購買意思決定の自動化が商戦を変える

Googleが推進する「Agentic AI」は、ショッピング体験のあらゆる工程に介入し、ユーザーの購入判断を支援する仕組みです。

  • 検索 → 検討 → 在庫確認 → 購入をAIが支援・代行
  • 店舗送客とオンライン購買がシームレスに
  • 購買ロス削減による売上改善効果が期待

一方で、EC事業者にとっては、

  • 価格比較の高度化による競争激化
  • 在庫情報の精度不足による機会損失
  • 「Google内で意思決定が完結する」構造変化

など、新たな課題も見えてきます。今後はSEO対策に加えて、AIが理解し推薦しやすい商品情報を整備すること、すなわち「SCO(Shopping Content Optimization)」の重要性が高まるでしょう。

AIが購買の“エージェント”として振る舞う時代。EC事業者は、この変化を前提にデータ設計と導線管理を行うことが、今後の競争力の源泉となっていくのではないでしょうか。

参照:Let AI do the hard parts of your holiday shopping(Google)

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