
2025年、アパレル業界における偽造品の流通は依然として拡大傾向にあります。SNSを通じた新作や限定商品の情報拡散速度が年々加速する中、その熱気に便乗する形で偽造品の市場流通が増加しています。本記事では、「SNKRDUNK(スニーカーダンク)」(以下、スニダン)を運営する株式会社SODAの発表をもとに、主要ブランドの偽造品の特徴や見分け方、購入時の注意点などを詳しくご紹介します。
この記事の目次
偽造アパレル流通の現状
2025年、アパレル市場において偽造品の流通は拡大の一途をたどっています。SNSによる新作や限定商品の情報拡散スピードが加速する中、その人気に便乗する形で偽造品が市場に出回るケースが年々増加しています。
スニダンが今年6月に実施した利用者調査によると、約6割のユーザーが「偽造品が届く不安がある」と回答し、5人に1人が「実際に購入経験がある」という結果が明らかになったとのことです。特に20代では無自覚に購入してしまったケースも確認されており、消費者にとって偽造品は「身近なリスク」となりつつあるのが現状です。
この状況に対し、調査では8割以上のユーザーが「偽造品と知っていれば購入しない」と回答しており、多くの消費者が正規品を求めていることも分かっています。
さらに注目すべき点として、偽造技術そのものが高度化している傾向があります。縫製やロゴ加工、パッケージの細部に至るまで正規品に近い仕上がりを再現する事例が増えています。スニダンの鑑定拠点「スニダンベース」では、X線や赤外線、UVライト、マイクロスコープなどの先端機器を駆使し、こうした精巧な偽造品を識別・研究する取り組みを日々行っているとのことです。
この記事では、2025年に二次流通市場で確認された偽造アパレルの最新傾向について詳細にまとめられています。
2025年 偽造品が多く見られたアパレルブランド5選
1. Chrome Hearts(クロムハーツ)
ブランド名:Chrome Hearts
商品名:Chrome Hearts Trucker Cap CH "Black"
真贋ポイントとしては、偽造品ではツバやクラウンの形状が正規品と比較して歪んでおり、全体のバランスが取れていない特徴があります。
また、メッシュ部分については正規品と比べて柔らかく型崩れしているものが多く見られます。天ボタンに使用されるコンチョについても、偽造品ではメッキ素材のものが多く使用されており、光沢や加工の質感が正規品と異なっています。




2. THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)
ブランド名:THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)
商品名:The North Face 1996 Retro Nuptse Jacket "Black"
真贋ポイントとして、胸のロゴ刺繍を詳細に観察すると、「C」と「O」の書体に違いがあることがわかります。また、使用されている糸の種類にも微妙な差異が見られます。
さらに、ハーフドームの刺繍の仕様にも相違点があります。「トラストネームタグ」は形状に明確な違いがあり、正規品が横長の形状なのに対し、偽造品は正方形に近い形状になっていることが特徴です。加工の精度も正規品より劣り、雪山の雪の表現量が多いのも偽造品を見分けるポイントとなります。



3. ARC'TERYX(アークテリクス)
ブランド名:ARC'TERYX(アークテリクス)
商品名:ARC'TERYX Beta LT Jacket "Black"
真贋ポイントとしては、偽造品の特徴として、フロント部分やポケットに使用されているファスナーにブランド刻印が入っていないものが多く見られます。また、本体に施される始祖鳥の刺繍にも違いが現れやすいことが特徴的です(ただし、年式や商品によって刺繍の形状は異なります)。



4. MONCLER(モンクレール)
ブランド名:MONCLER(モンクレール)
商品名:MONCLER Maya Short Down Jacket "Black"
真贋ポイントとして、ブランドロゴの再現精度に顕著な特徴が見られます。書体では、正規品は「MONCLER」のO・C・Eの曲線や文字の間隔(カーニング)が正確である一方、偽造品ではOの潰れ、Cの開きの不均一さ、Eの線の歪みなど字形の癖が表れやすい傾向があります。
また、雄鶏モチーフのトサカ(青色部分)や首元のラインについては、正規品では線の角度・太さ・カーブが均一で、刺繍の輪郭が滑らかに立ち上がっているのに対し、偽造品では刺繍機の精度不足によりトサカの部分にギザつきが生じたり、首元ラインにわずかな歪みが生じたりする特徴が見られます。



5. Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)
ブランド名:Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)
商品名:Louis Vuitton x Takashi Murakami Nano Speedy Monogram"Multicolore Blanc"
真贋ポイントとして、まず偽造品ではキーベルのサイズが正規品より大きく製造されている点が確認できます。
また、レザータグに押印されているアイコンモチーフの形状にも違いが見られ、正規品と比較すると押印の深さが浅い傾向があります。
さらに、ボタン部分の刻印についても正規品とは仕上がりや形状に差異があり、字体や大きさに明らかな違いが確認できます。




二次流通での購入時における注意点
フリマアプリやECサイトなどの二次流通市場では、出品者が「並行輸入品」「海外限定」「ノベルティ」「アウトレット品」などの表現を添えて偽造品を販売しているケースが多く見受けられます。こうした商品の中には正規品も存在する一方で、このような表現を偽造品業者が「正規品らしく見せるための手段」として利用するケースも少なくないとのことです。
特に「海外限定」「現地仕入れ」といった表記は、消費者に「レアアイテム」や「掘り出し物」という印象を与えやすいため、特に注意が必要です。実際には、ブランド公式の販売経路を通っていない、あるいは真贋が確認されていない商品が含まれている場合があります。
ただし、ここで重要なのは、偽造品と並行輸入品は同義ではないという点です。並行輸入自体は、海外の正規販売店などから独自に商品を仕入れる合法的な流通形態であり、すべてが偽造品というわけではありません。重要なのは、以下の要件を満たしているかどうかになります。
並行輸入が適法となるための3つの要件
1. 真正商品であること(適法性の要件)
2. 日本と日本国外の商標権者の実質的同一性があること(同一人性の要件)
3. 品質の同一性があること(品質管理性の要件)
安心して取引を行うためには、購入前に販売経路や販売者の実績を十分に確認し、可能な限り真贋鑑定を経た商品を選択することが重要です。
スニダンの鑑定技術と今後の展望
スニダンでは、取り扱うすべての商品に対して真贋鑑定を導入しており、X線・赤外線・UVライト・マイクロスコープといった最新機器を活用することで、外観だけでは判別が難しい内部構造や素材の違いまで詳細に確認しているとのことです。鑑定拠点「スニダンベース」では、専門知識を持った鑑定士が常駐し、日々進化する偽造品の収集・分析を通じて鑑定精度の向上に取り組んでいるそうです。
2025年には新たに「スニダン鑑定研究所」が設立されました。この研究所は、偽造品の研究・分析や鑑定技術の高度化、鑑定士教育への活用に加え、偽造品に関する情報発信の中核としての役割を担っているとのことです。これにより、現場で蓄積された専門知識を体系的に整理し、鑑定水準を継続的に向上させる体制が確立されたそうです。
今後も、ますます精巧化が進む偽造技術に対応し、「偽造品流通ゼロ」の実現に向けて、研究所での取り組みと現場の鑑定体制を有機的に連携させながら、消費者が安心して取引できるマーケットプレイスの構築に努めていく方針だとのことです。
出典元:株式会社SODA プレスリリース












