
泉 研
株式会社宝石の玉屋
1991年 大学卒業後
船井総合研究所入社
1995年 宝石の玉屋入社
2009年 同社 3代目代表取締役に就任
現在に至る。
この記事の目次
ホームページ作成の現実
弊社、株式会社宝石の玉屋は創業87年の札幌の小売業です。15坪の小さなお店1店舗で展開しています。田中貴金属工業の特約店としての顔もあり、金のインゴットの売買をしつつ、ファッションジュエリーや結婚指輪などを店頭販売しております。
遡ること30年ほど前から世の中インターネットの時代になり、自社ホームページをつくるのが当たり前になってきました。ご多分にもれず、10名弱の社内に今でいうDX人材はおらず、アウトソーシングしてホームページを作成してきました。
新聞広告や、ダイレクトメールと同じように制作会社やデザイナーさんからのヒヤリングを受けて、自社の理念や概要、商品や独自のサービスなどを説明。いくつかのデザイン案を出していただき「これが好きだな」「このレイアウトが見やすそう」という感覚というか主観でホームページを作成してきました。
時代によって営業時間の変更やトピック的なことがあれば、書き加える程度の更新や10年に1度くらいのリニューアルをするも、同じように「感覚」や「好き嫌い」が意思決定の基準だったように思います。
ヒートマップとの出会い
そんな中、ご縁があり、ホームページを「見える化」して検証してみませんか?とご提案をいただきました。お恥ずかしながらヒートマップという言葉を初めて聞きましたが、「ネット上でどこから自社のホームページにユーザーがきて、どこをみて、どのくらいの時間滞在しているかデータで検証できます」とのこと。
ネット音痴な私でも、自社ホームページを数字やビジュアルで検証できるのはありがたい。健康診断でもレントゲン写真や血液や血圧などをデータ化して、数値の良くないところを指摘してもらえれば次の日からの生活を改善する道しるべになるのと同じだと思い、まずは半年、1年やってみようと決断しました。
リニューアルにかける費用を考えたら、主観ではない、データの裏付けをもとに行うほうが今後のためになると思ったのも理由の一つです。
「想い」を数字(データ)で検証
いざヒートマップで自社診断してもらうと、衝撃の結果でした。天気予報でいうと暑い場所が真っ赤になる絵がわかりやすいのと一緒で、自社のホームページがハンバーガーメニュー?(右上によくある3本線)の部分だけが真っ赤になっていました。
「まったくスクロールされていないんだ!」自社のホームページを検証してこなかったせいもあり、友人、知人などのいわゆる身内から「綺麗なホームページだね」、「新しく変えたんだね」という声を真に受け、「裸の王様」状態だったことに気づかされました。
「見える化」されたら次の「打ち手」が見えた
そこから、すぐにプロジェクトはスタートしました。新商品やサービス、弊社としてお客様になりえるユーザーにどのように最後までスクロールしてもらい、こちらの「読んでもらいたい」場所に誘導できるかを、Webデータの取り扱いや分析でアドバイスを頂いているarumi 社の木村さん、そして制作を担当しているSILKS社の兼田さんにもオンライン会議で参加してもらい少しずつ改善をしていきました。
どんな仕事も一緒ですが、仮説をたて、データで確認し、少し数字が改善されたら次の手を考える。今までの「これいいねー」「この感じが好きだなー」という会話はなくなり、ここまでは滞在時間は長いけどここで離脱してるね。ボタンがわからなくて押してもらえてないのかな?よく見られている部分をここに持ってこよう。すべてではありませんが、意思決定の基本はデータです。
会議は木村さんに分析結果を、私と兼田さんが一緒に聞きます。次の打ち手もその場で「これならすぐできそうです」「いったん直して次のデータで様子を見ましょう」と問題提起から変更までの意思決定がとてもスムーズです。木村さんが一般的なデータの基準を教えてくれます。
健康診断で数字だけ見せられても、50代男性の自分がこの数字だと良いのか悪いのかドクターの見解がないと次の打ち手がわからないのと同じだと思いました。おかげさまで、少しずつですが数字は間違いなく改善され、ホームページをご覧になった方の売り場でのリアクションにも手ごたえを感じています。
ホームページの健康診断をして、結果をドクターと日常一緒にいる家族と共有するみたいな感覚で健康を取り戻せつつあるのかなーと感じています。
パートナー企業のコメント
制作会社:SILKS 兼田広樹さんコメント
今までのホームページはイメージ先行で、ユーザー視点が欠けているということが課題でした。ジュエリーの販促担当者と膝を突き合わせて、玉屋様の見せたい・伝えたいを最優先に考えてきましたが、ブランドが正しくお客様へ伝わっているのか・・・。暗中模索の状態で制作を続けてきました。
ヒートマップの情報は、お客様の反応がダイレクトに反映されているため、いつも目から鱗が落ちる思いです。「お客様が何を求めているか」を正しく理解するために、大きな力となってくださっています。情報の優先度を整理し、デザインへ落とし込み、アクションを誘導する。という流れが確立されました。
もともと玉屋様は、店頭での接遇に力を入れている会社です。お客様にとって「実店舗での接客体験」と「ホームページの閲覧体験」とが一致するような未来を夢見ています。木村さんの、経験に裏打ちされたアドバイス。そして、泉社長の決断のスピードに背中を押され、会議の熱量を保ったまま、制作に着手することができています。
玉屋様の創業者の「プラスワンモア」の精神に倣い、“一歩ずつ”着実に進んでいるという手応えを感じています。

SILKS 兼田広樹さん
2003年 セツ・モードセミナー卒業
広告代理店、レコード会社での勤務を経て
2007年に独立、現在に至る
データ分析:株式会社arumi 木村景都さんコメント
今回、Webサイトの数値を可視化するために、Google Analyticsによる解析およびヒートマップ*ツールの導入をご提案いたしました。
これまで「来店予約」という成果のみでしか計測できていなかったWeb上のユーザー行動を、Analyticsとヒートマップの活用により可視化することが可能となり、「どのページで離脱が起きているか」「ユーザーがどこに興味を示しているか」など、より詳細な分析が可能になりました。
この可視化によって、来店を検討されているお客様に対する理解が深まり、改善施策の精度も高まりました。結果として、来店促進に寄与できたと感じております。
*「ヒートマップ(Heatmap)」とは、数値データの大小や分布を色の濃淡や色の違いで視覚的に表現したグラフや図のことです。主に、ユーザーの行動や傾向を一目で把握しやすくするために使われます。
<実際の画面(before)>

メインコンテンツはほぼクリックがされず、読み飛ばされてしまっている
ヒートマップの導入により玉屋様として見ていただきたい項目の閲覧がされていなかったり、読み飛ばされてしまっていたりしていた項目が多数あり、約半年間にかけて課題の抽出、打ち手の検討を行いHPのリニューアルにいたりました。
<実際の画面(After)>

会社としての思いは尊重しつつ、ユーザーに見てもらうため・アクションしてもらうためのHP作りに寄与できたと感じております。

株式会社arumi 木村景都さん
新卒で株式会社リクルート 結婚情報誌「ゼクシィ」の部署で結婚式場・ジュエリーショップを担当。 リクルートの出身者が立ち上げたWebマーケティングのスタートアップへ広報・マーケティング責任者として入社。現在は法人化し、広報/マーケティングメイン事業としています。
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