BCG調査:世界のAI利用率72%に対し日本は51%と低迷、企業のAI活用促進には経営リーダーの支援が不可欠

経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(BCG)は、職場におけるAI活用に関する意識調査に基づくレポート「AI at Work 2025: Momentum Builds, But Gaps Remain」を発表したことが明らかになりました。この調査は日本を含む世界11の国・地域において、経営幹部から一般従業員まで1万600人以上を対象に実施されたもので、BCGのデジタル領域に特化した専門家集団BCG Xによる3回目の年次調査となります。

生成AIの日常的な利用率は世界平均72%、日本は51%と大きく差

調査結果によると、全回答者の72%が日常的にAIを使用しており(週に数回以上、または毎日使用)、世界全体としてAI導入が進展していることが報告されています。しかし職位別の分析では、一般従業員のうち日常的にAIを使用する人の割合は51%にとどまり、昨年の52%からほぼ変化がない状況です。

地域別に見ると、インド(92%)や中東諸国(87%)などのグローバルサウス(発展途上国・新興国)の国々でAI利用率が特に高い傾向にあります。一方、日本は51%と世界平均を大きく下回る結果となりました。

一方で、自動化による雇用への影響に対する懸念も大きくなっています。調査によると、全体の41%の回答者が「今後10年で自分の仕事がなくなる可能性がある」という不安を抱えていることが判明しました。特にAI利用率が高い国ほど、この懸念が強い傾向にあることも示されています。

AI活用を促進するための3つの重要な施策

レポートでは、組織内でのAI活用を促進するために必要な重要施策として、以下の3点が挙げられています。

  • 十分なトレーニングの提供: AIの使い方について「十分なトレーニングを受けた」と感じている回答者はわずか36%にとどまっています。特に注目すべき点として、対面式かつ助言を受けられるコーチング形式で5時間以上のトレーニングを受けた従業員は、AIを日常的に活用する可能性が高まることが示されています。
  • 適切なAIツールの提供: 回答者の半数以上(54%)が「正式に許可されていなくてもAIツールを使う」と回答しています。特にZ世代(1997〜2012年生まれ)やミレニアル世代(1981〜1996年生まれ)は、会社の許可がなくてもAIを利用しようとする傾向が強いことが分かりました。このような「シャドーAI」の問題は、企業にとってセキュリティリスクの増大につながる可能性があります。
  • 経営リーダーの明確な支援: 一般従業員のうち、「自社の経営層はAIの使用に関して十分な指針を示してくれている」と感じている人はわずか25%にとどまっています。一方で、経営リーダーが積極的に関与している組織では、AIの利用率とAIの影響に対して前向きな姿勢を持つ従業員の割合が明らかに高い傾向が見られます。

AIエージェントの重要性が高まる一方、日本での導入は遅れ

調査によると、回答者の4分の3以上がAIエージェント(自律的なタスクマネジメントが可能なデジタルアシスタント)が今後の成功に不可欠だと考えています。しかし、現時点でAIエージェントが業務フローに統合されていると回答した人の割合は世界平均で13%にとどまっており、日本ではさらに低い7%という結果でした。また、AIエージェントの仕組みを理解していると答えた人も全体の3分の1程度にとどまっています。

興味深いことに、AIエージェントの仕組みについて理解している人ほど脅威を感じる割合が低くなる傾向があり、AIエージェントを「競合」ではなく「協働するパートナー」として捉えていることも明らかになっています。

企業のAI活用を加速させるための要件

AIによる本質的な変革へと踏み出そうとする経営リーダーに向け、レポートでは以下の要件が提示されています:

  1. AI活用によって生まれた価値を可視化する
  2. 人材投資を通じて業務フローを再設計し、AIの価値を最大限に引き出す
  3. AIエージェントについてA/Bテストなど定量的な検証を徹底し、経験曲線を加速させる

BCG Xで日本における生成AIトピックのリーダーを務めるマネージング・ディレクター&パートナーの中川正洋氏は次のようにコメントしています。

「日本企業においても積極的なAI活用を進める姿勢は見られますが、グローバル企業がより速いスピードで活用を推進しており、徐々に差が開き始めています。また、生成AIの活用環境を整備しても、実際の活用が進まず苦慮している企業も少なくありません。日本においてAI活用が進んでいる企業は、経営トップのサポートや後押しと、現場レベルでの成功事例の確立という両輪がうまく機能しています。世界的な動きも踏まえると、AIを日常的に活用するだけでなく、業務プロセスや顧客への提供価値を変革するような取り組みにいかにつなげられるかが鍵といえます」

調査レポートについて

「AI at Work 2025: Momentum Builds, But Gaps Remain」レポートの詳細は、BCGの公式サイトで確認することができます。

日本における担当者

中川 正洋氏(マネージング・ディレクター & パートナー)

日本における生成AIトピックのリーダー。BCG X、BCGパブリックセクターグループ、およびテクノロジー&デジタルアドバンテッジグループのコアメンバー。早稲田大学理工学部卒業、同大学大学院理工学研究科修了。グローバルコンサルティングファームなどを経て現職。

ボストン コンサルティング グループ(BCG)について

BCGは、ビジネスや社会のリーダーとともに戦略課題の解決や成長機会の実現に取り組んでいる企業です。1963年に戦略コンサルティングのパイオニアとして創設され、クライアントとの緊密な協働を通じてすべてのステークホルダーに利益をもたらすことを目指す変革アプローチにより、組織力の向上、持続的な競争優位性構築、社会への貢献を支援しています。

BCGのグローバルで多様性に富むチームは、産業や経営トピックに関する深い専門知識と、現状を問い直し企業変革を促進するためのさまざまな洞察を基にクライアントをサポートしています。最先端のマネジメントコンサルティング、テクノロジーとデザイン、デジタルベンチャーなどの機能によりソリューションを提供し、経営トップから現場に至るまで、BCG独自の協働を通じて組織に大きなインパクトを生み出すとともにより良き社会づくりに貢献しています。

日本では、1966年に世界第2の拠点として東京に、2003年に名古屋、2020年に大阪、京都、2022年には福岡にオフィスを設立しています。

BCG X(エックス)について

BCG Xは、テクノロジーやデジタルを駆使したビジネス、およびプロダクトビルディングを担う、BCGの専門家集団です。BCG Xは、BCGの産業や経営機能に対する深い専門知識を活用しつつ、高度な技術的知識と意欲的な起業家精神を結集して、企業の大規模なイノベーションの実現を支援しています。

80を超える都市に約3,000人のテクノロジスト、データサイエンティスト、エンジニア、デザイナー、プロダクトマネジャー、アントレプレナーを擁し、世界で最も重要な課題と機会に対応するプラットフォームとソフトウエアの構築・設計に取り組んでいます。BCG Xのエンドツーエンドのグローバルチームは、既存の産業・機能別プラクティスの枠を超え、クライアントと密接に連携しながら、新しい可能性を切り拓いています。

出典元: ボストン コンサルティング グループ(BCG)

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