博報堂メディア環境研究所「メディア定点調査2025」:スマホ接触時間が過去最高を更新、TVerの利用率は約6割に拡大

株式会社博報堂(本社:東京都港区、代表取締役社長:名倉健司)のメディア環境研究所が、2006年から毎年1月末~2月頭にかけて実施している「メディア定点調査」の最新結果を発表されました。この調査は生活者のメディア接触の現状を把握し、メディア環境の変化を時系列で分析するものです。2025年の調査では、スマートフォンの接触時間が過去最高を更新し、TVerの利用率が約6割に達するなど、注目すべき結果が明らかになっています。

調査結果のポイント

① メディア総接触時間は440.0分。昨年から約8分増加し、スマホは165.1分で過去最高を更新

今回の調査では、1日あたりの週平均メディア総接触時間が440.0分となり、昨年から約8分増加したことが分かりました。特に「携帯電話/スマートフォン」の接触時間は昨年からさらに3.4分増加し、過去最高となる165.1分を記録しています。

近年減少傾向が続いていた「テレビ」(122.1分 昨年差-0.4分)と「雑誌」(9.2分 同-0.3分)は下げ止まりの兆候を見せ、「ラジオ」(24.0分 同+1.0分)および「新聞」(10.7分 同+1.5分)はプラスに転じています。全体として、メディア接触時間は「携帯電話/スマートフォン」の牽引により、コロナ禍以前よりも高い水準で推移していることが明らかになっています。

② 各種配信サービスが横ばいの中、「TVer」は引き続き堅調で利用率は6割に迫る

コロナ禍をきっかけに急成長した各種配信サービスは、今年は成長が一段落した様子です。「定額制動画配信サービス」の利用率は64.3%(昨年差0.2ポイント減)、「定額制音楽配信サービス」は48.3%(同2.7ポイント減)と横ばいとなっています。

一方で、民放公式テレビポータルサイト「TVer」は引き続き利用者を増やし、利用率が59.7%(昨年差5.9ポイント増)と約6割にまで拡大しています。TVerの利用率は2020年の19.8%から2025年には59.7%へと、わずか5年間で約3倍に拡大していることが注目されます。

③ テレビで見逃し配信、無料動画、有料動画視聴は約5割。テレビでの多様な配信コンテンツ視聴が定着

テレビスクリーンで視聴されているコンテンツの種類について調査したところ、「録画」視聴は69.6%(昨年差5.4ポイント減)と減少傾向にある一方、TVerなどの「見逃し配信」は50.0%(同4.9ポイント増)と増加し、5割に達しています。

また、「無料動画」(55.7% 同2.5ポイント増)、「有料動画」(48.2% 同2.9ポイント増)も微増し、いずれも約5割となっています。これらの結果から、コネクテッドテレビの普及を背景に、テレビスクリーンでの配信コンテンツ視聴が本格的に定着したことがうかがえます。テレビがマルチプラットフォームデバイスとしての存在感を高めていることが明確になっています。

調査設計

  • 調査地区:東京都
  • 標本抽出方法:RDD(Random Digit Dialing)
  • 調査手法:郵送調査法
  • 調査対象者:15~69歳の男女
  • 標本構成:650サンプル(2024年住民基本台帳に基づき性年代でウエイトバックを実施)
  • 調査期間:2025年1月24日~2月7日
  • 調査機関:株式会社ビデオリサーチ

調査結果詳細

① -1 メディア総接触時間の時系列推移(1日あたり/週平均)

Q.あなたは、自宅内・外を問わず、各情報メディアを、どのくらい見たり利用したりしていますか?

① -2 メディア総接触時間の時系列推移 構成比

② 配信サービスの利用率 時系列推移

③-1 テレビスクリーンで見ているコンテンツの利用率 時系列推移

③ -2 テレビスクリーンのインターネット接続率 時系列推移

メディア定点調査2025 資料編

性年代別メディア総接触時間(1日あたり/週平均)

性年代別メディア総接触時間の構成比

調査結果からの考察

今回の調査結果から、日本のメディア環境において、スマートフォンの重要性がさらに高まっていることが明らかになっています。メディア総接触時間の増加を牽引しているのはスマートフォンであり、特に若年層においてその傾向が顕著です。

また、TVerに代表される見逃し配信サービスの急速な普及は、テレビ視聴のあり方を大きく変えつつあります。従来のリアルタイム視聴や録画視聴に加え、配信サービスを通じたコンテンツ視聴が一般化しており、テレビというデバイスの使われ方が多様化していることがわかります。

特筆すべきは、テレビがかつての単なる放送受信機から、インターネット接続されたマルチプラットフォームデバイスへと進化している点です。録画コンテンツの視聴が減少傾向にある一方で、見逃し配信や各種動画サービスの視聴が増加しており、コネクテッドテレビを介した多様なコンテンツ消費が定着しつつあります。

メディア環境の変化は企業のマーケティング戦略にも大きな影響を与えます。ターゲットとする年齢層や目的に応じて、適切なメディアミックスを検討する際の重要な指標となるでしょう。例えば若年層へのリーチを目指す場合はスマートフォンを中心としたデジタル戦略が、幅広い年齢層へのリーチを目指す場合はテレビと配信サービスを組み合わせた戦略が効果的である可能性が示唆されています。

また、TVerの急速な普及は、テレビコンテンツの新たな価値創造の可能性を示しています。放送と配信の融合により、これまで以上に柔軟なコンテンツ提供が可能になっており、生活者のメディア接触行動に合わせたコンテンツ戦略の重要性が高まっていると言えるでしょう。

今後も博報堂メディア環境研究所の「メディア定点調査」は、日本の生活者のメディア接触行動の変化を継続的に捉え、マーケティングやコンテンツ戦略の基礎データとして活用されることが期待されます。

出典元:株式会社博報堂 メディア環境研究所 プレスリリース

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