2025年版カスタマーサクセス日本市場動向調査結果の概要

最近、バーチャレクスグループのバーチャレクス・コンサルティング株式会社(以下、バーチャレクス)が実施した「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」の結果がまとめられ、このたび2025年版第九弾が発表されました。

本調査では、カスタマーサクセスに取り組んでいない企業の経営・管理層からの見解を分析しており、具体的には以下の2点に焦点を当てています。

  • 「導入の必要性を感じている」経営・管理層の意見
  • 「導入の必要性を感じていない」経営・管理層の意見

取り組んでいない企業の経営・管理層から見るカスタマーサクセス

最近、カスタマーサクセスが多くの企業で注目されているものの、その必要性に関しては企業ごとに差異が見られます。「導入を検討しているが実行には至っていない」企業もあれば、「カスタマーサクセスの必要性を感じない」企業も存在します。本調査では、カスタマーサクセスに取り組んでいない企業の経営・管理層に焦点を当て、その認識や障壁を分析しています。

市場環境の変化に伴い、企業の成長戦略としてカスタマーサクセスがどのように位置づけられているかを探ることが重要です。

「導入の必要性を感じている」経営・管理層の意見

まず、カスタマーサクセスに現在取り組んでいないが「必要性を感じている」と回答した経営・管理層91人に対して、サブスクリプション型商材の取り扱いについて尋ねたところ、「ある」と答えた企業は15.4%に過ぎず、「ない」と回答した企業は78.0%に達しました。この結果は、サブスクを導入していない企業でも、顧客との関係を重要視する傾向があることを示しています。「不明」(6.6%)という回答もあり、社内でのカスタマーサクセスの認識や運用状況が整っていない企業も存在することが分かります。今後、非サブスク型企業においても、顧客満足度向上を目的としたカスタマーサクセスの導入が進む可能性があります。

サブスクリプション型商材の取り扱いはありますか?(カスタマーサクセスの必要性を感じている経営・管理層)
図1:[2025年] サブスクリプション型商材の取り扱いはありますか?(カスタマーサクセスの必要性を感じている経営・管理層)

さらに、「カスタマーサクセスの必要性をどの程度感じているか」との質問に対し、約半数が「やや感じている」と回答し、関心はあるものの、優先順位やリソース配分については慎重に検討している様子が伺えます。「非常に感じている」と回答した層は1割未満であり、強く導入を望む層は依然として少数派に留まっています。

カスタマーサクセスの導入についてどの程度必要性を感じていますか?(カスタマーサクセスの必要性を感じている経営・管理層)
図2:[2025年] カスタマーサクセスの導入についてどの程度必要性を感じていますか?(カスタマーサクセスの必要性を感じている経営・管理層)

必要性を感じる理由としては、「既存顧客離脱の増加」(34.1%)や「顧客との持続的な関係構築」(30.8%)が上位に挙げられ、経営層にとって既存顧客の維持は戦略的な重要テーマとなっています。「新規顧客数の減少」(27.5%)や「顧客単価の減少」(19.8%)も影響しており、収益基盤が弱体化していることがカスタマーサクセス導入の背景にあります。また、「モノ消費からコト消費へのシフト」(8.8%)や「少子化による人口減少」(11.0%)といった外部環境の変化も影響を与えていることが確認されました。

カスタマーサクセス導入に必要性を感じている理由(カスタマーサクセスの必要性を感じている経営・管理層)
図3:[2025年] カスタマーサクセス導入に必要性を感じている理由(カスタマーサクセスの必要性を感じている経営・管理層)

また、「どのような条件が整えばカスタマーサクセスへの取り組みが始められるか」という質問に対しては、「組織体制や人材が整えば」(45.1%)や「予算が確保できれば」(30.8%)が挙げられました。この結果は、経営層が新たな組織構築や人材育成のコスト、投資対効果(ROI)の明確化を重視していることを示しています。さらに、「取り組みの優先順位や進め方の明確化」(24.2%)や「必要なツールが揃っていること」(17.6%)といった回答も見られ、実務レベルの課題が導入の意思決定において重要な要素であることが示されています。

カスタマーサクセス導入を進めるために必要なこと(カスタマーサクセスの必要性を感じている経営・管理層)
図4:[2025年] カスタマーサクセス導入を進めるために必要なこと(カスタマーサクセスの必要性を感じている経営・管理層)

最後に、「カスタマーサクセス導入を進める上での障壁」について尋ねると、最も多く挙げられたのが「人材・組織体制が不十分/スキルのある人材がいない」(39.6%)でした。このことから、経営・管理層にとっては専門知識やノウハウを持つ人材の確保が急務であることが分かります。次に「取り組みの始め方が不明」(26.4%)や「ツール導入の費用がかかる」(19.8%)といった、実行段階での準備不足や投資に対する懸念も大きな障害となっています。また、「社内の理解・協力が得られない」(16.5%)や「経営層・上層部の理解が得られない」(11.0%)といった、内部合意形成の難しさも無視できません。しかし、「特に問題はない/障害は感じていない」と答える層も14.3%存在し、導入に対する感じ方には幅があることが伺えます。経営・管理層は、人材と予算を優先的に確保し、具体的なロードマップや社内の意識醸成を進めることがカスタマーサクセス成功の鍵となるでしょう。

カスタマーサクセス導入を進めるに場合障害になりそうなこと(カスタマーサクセスの必要性を感じている経営・管理層)
図5:[2025年] カスタマーサクセス導入を進めるに場合障害になりそうなこと(カスタマーサクセスの必要性を感じている経営・管理層)

「導入の必要性を感じていない」経営・管理層の意見

一方、カスタマーサクセスを必要としていない経営・管理層は、どのような考えを持っているのでしょうか。「カスタマーサクセスの必要性を感じておらず、今後も導入する予定はない」と回答した経営・管理層101人に対して、サブスクリプション型商材の扱いについて尋ねたところ、約9割(90.1%)が「ない」と述べました。これは、サブスクリプション型ビジネスを展開していない企業では、顧客と長期的に関わる必要性が低いと捉えられており、その結果「カスタマーサクセスは不要」と見なされる傾向にあります。一方で、「ある」と答えた企業も6.9%存在し、サブスクリプション型商材を扱っていてもカスタマーサクセスを必須とは考えていない企業もあるようです。「不明」との回答も見受けられ、これは社内の認識が統一されていない、あるいは限られたサブスクリプションモデルを部分的に採用している場合が考えられます。この結果から、サブスクリプションモデルを採用していない企業ほどカスタマーサクセスの必要性を認識しづらいことが明らかになりました。

サブスクリプション型商材の取り扱いはありますか?(カスタマーサクセスの必要性を感じていない経営・管理層)
図6:[2025年] サブスクリプション型商材の取り扱いはありますか?(カスタマーサクセスの必要性を感じていない経営・管理層)

次に、「カスタマーサクセスの必要性を感じない理由」を尋ねたところ、最も多かったは「特に理由が思い当たらない」(28.7%)でした。つまり、カスタマーサクセスを不要と考えながらもその具体的な根拠を持たない企業が一定数存在している実態が浮き彫りになっています。「費用対効果の見極めが難しい」(25.7%)や「ツール導入にかかるコストが大きい」(19.8%)といった、投資に対する懸念も重要な障壁として挙げられています。経営・管理層の観点からは、カスタマーサクセスの導入には人的・金銭的リソースが必要となるため、ROIや導入後の成果を測る指標がない場合、慎重な判断に至ることが理解できます。また「自社の事業にはカスタマーサクセスが必要ない」(13.9%)や「取り組むメリットを感じない」(12.9%)といった意見もあり、自社のビジネスモデルへの適合性に疑問を感じている企業も一定数いることが示されています。特に顧客管理が属人的である企業や、既存顧客の満足度が高い企業においては、カスタマーサクセスを新施策として導入する必要性が感じられない傾向が強いでしょう。経営・管理層は、限られたリソースの最適な配分が要求されるため、「カスタマーサクセスが本当に業績拡大に繋がるのか」を見極めることが導入可否の重要なポイントとなります。

カスタマーサクセスの導入に必要性を感じていない理由(カスタマーサクセスの必要性を感じていない経営・管理層)
図7:[2025年] カスタマーサクセスの導入に必要性を感じていない理由(カスタマーサクセスの必要性を感じていない経営・管理層)

最後に、「どのような成果が得られれば、カスタマーサクセスに取り組む価値があると思うか」という質問に対しては、最も重視されたのが「利益拡大」で、調査結果によると「非常に重視する」(32.7%)と「まあ重視する」(41.6%)を合わせると74.3%に達しました。次いで「売上拡大」(70.3%)も高い割合を示し、短期的かつ直接的な成果が求められる傾向が明らかになりました。一方で、「顧客満足度の向上」(63.3%)や「製品・サービスの質の向上」(60.4%)も一定の評価を受けており、顧客との関係強化と品質向上が企業成長に必要不可欠であるという認識が浮き彫りとなっています。

しかし、「LTVの最大化」や「投資家からの注目度」など、長期的視点や外部評価に関連した要素は相対的に低い数値となっており、カスタマーサクセス導入に際しては長期的な顧客関係の維持よりも、売上・利益などの短期成果を重視する意識が強いことが読み取れます。また、「取り組みに労力がかからない」「取り組むことに費用がかからない」といった応答も見られ、導入時の負担やコストの低減を重要視する回答も一定数存在しました。この結果から、カスタマーサクセス導入を促進するためには、短期間での売上・利益の拡大や顧客満足度の向上に結びつく施策を明確に提示し、その後、長期的な価値創出にも目を向けさせる手法が求められると言えるでしょう。

何が実現されればカスタマーサクセスに取り組む価値があると思うか(カスタマーサクセスの必要性を感じていない経営・管理層)
図8:[2025年] 何が実現されればカスタマーサクセスに取り組む価値があると思うか(カスタマーサクセスの必要性を感じていない経営・管理層)

カスタマーサクセスの必要性を感じる経営層と感じていない経営層の違い

今回の分析を通じて、カスタマーサクセスの必要性を感じる経営層と感じない経営層の間には、導入に関する認識や課題に大きな違いが浮き彫りになりました。

必要性を感じる経営層は顧客との関係維持やロイヤルティの向上を重視し、カスタマーサクセスを成長戦略の一部として捉えています。しかし、導入に躊躇する理由として「人材不足」「進め方が分からない」「コストへの懸念」が挙げられており、具体的な実行プロセスが不透明なために意思決定が先送りになっているケースが多いようです。

一方で、必要性を感じていない経営層の多くは、カスタマーサクセスが自社のビジネスにどのように関連するかを明確に捉えきれていません。特にサブスクリプション型商材を扱わない企業では、導入の必要性が低く見られる傾向があります。また、カスタマーサクセスの導入による具体的な効果や投資対効果(ROI)が不透明であることも障害の一要因です。

カスタマーサクセスは企業の成長に寄与すると期待されていますが、その価値を経営層に理解してもらうためには、「なぜ今取り組むべきか」「どのようなリターンが期待できるのか」をビジネスの観点から具体的に伝えることが不可欠です。導入を成功させるためには、経営層が納得できる形で計画を進め、実績を上げながら社内の理解を深めていくことが重要です。

出典元:バーチャレクス・コンサルティング株式会社

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