
みなさんはじめまして。
ブランディングエージェンシーFRACTA代表、Shopifyエバンジェリストの河野です。
ブランディングに関わるあらゆる最新情報の提供を生業としており、最近ではeコマース、そしてAI情報の発信に注力しています。このたびコマースピックさんへの寄稿のご機会をいただき、ここに馳せ参じた次第です!
AIの進化が著しい2023年。当初はベータ版やアルファ版だったさまざまなAIサービスも徐々に正式リリースされたり、既存のサービスに組み込まれてきたりしています。僕がエバンジェリストをしているeコマースプラットフォームのShopifyでも「Shopify Magic」という名称でワークフロー全体に統合されたAI対応機能のスイートが無料で提供されています。
一方で、「実務に本当に組み込めるのか?」「効果はあるのか?」「リスクは?」とさまざまな疑問を持たれている方も多くいらっしゃるのではないかなと思います。そのような疑問を一つずつ、現場の声も交えながら解説していきたいと思い、今回筆を取りました。
この記事がみなさまのAI活用の一助になれば幸いです。
この記事の目次
ECの現場で活用可能なAIのカテゴリ
さて早速ですが、AIの活用についてまずは簡単にカテゴリ分けしていきたいと思います。
- アシスタント系
- 完全代替系(パーソナライゼーションを含む完全自動化・複数パターンの高速生成)
- 能力解放・強化・イノベーション系(クリエイティブ・ディレクション、サービス開発)
- エンターテイメント・インフルエンサー代替系
1.アシスタント系
アシスタント系についてはすでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、一番有名なものとしては「Microsoft 365 Copilot」があげられます。
参考:文書作成もプレゼン作成もAIで。「Microsoft 365 Copilot」が11月1日に一般提供(PC Watch)
AIブームの火付け役となった「ChatGPT」もこの部類に入ります。主に効率化に貢献し、今最も身近で簡単に使えるものと言っていいでしょう。冒頭で紹介した「Shopify Magic」もアシスタント系と言えますね!
2.完全代替系(パーソナライゼーション含む完全自動化・複数パターンの高速生成)
これはあらかじめ設定した内容に沿って全て自動で実行してくれるもので、一般的に言われる「AI」のイメージに1番近いものです。Webサイトであれば訪問元から判断してLPのデザインを変更したり、顧客の情報に基づきマーケティングオートメーションの設定を変更したりするなど・・・
米国などの一部ではサービス提供が開始されていますが、非常に行動的な能力を要求するため、実用サービスに乗っているものは少数というのが現状です。そのような中でも「FERMAT AI」は、今一番進んでいるサービスではないでしょうか。
参考:FERMAT AI
3.能力解放・強化・イノベーション系(クリエイティブ・ディレクション・サービス開発)
これらについてはAdobeの「Firefly」をはじめとするクリエイティブ系の支援ツールが有名でしょう。クリエイティブ系は当初著作権などの問題もあり、なかなか導入に踏み切れない企業も多かった背景がありますが、Fireflyはその懸念を解消してくれます。
また誰もが簡単に使えるデザインツール「Canva」もOpenAIと密接に連携しており、素材が必要な際にCanvaの画面からDALL·E 2モデルを使い、画像生成が可能になっています。他にも、「GitHub Copilot」は、エンジニアの生産性向上と能力向上の側面でも活用されている良い事例と言えるでしょう。
参考:GitHub Copilotをエンジニア全員に導入して開発生産性を継続的に上げていく(Zenn)
4. エンターテイメント・インフルエンサー代替系
エンターテイメント・インフルエンサー代替系については、中国で最も人気のあるeコマースプラットフォームのタオバオで活躍している24時間稼ぎ続ける生成AIインフルエンサーが話題です。
参考:AI生成インフルエンサーが24時間稼ぎ続ける中国ライブコマース新事情(MIT Technology Review)
これは完全自動で運用できるものの、AIのストリーミング映像は本物と比較するとユーザーが商品をテストする際の訴求力に欠ける点、そして中国政府自体が今後コマースストリーミングでの使用に適用される、メディアと生成AIに関する法律を多数制定していく見込みとされている点などから、課題もゼロではありませんが、人間に変わる24時間稼働できるインフルエンサーとしてかなり期待されています。
また、YouTubeが生成AIを活用した新たなクリエイター向けツールも、今まで苦労していた編集作業を一気に楽にしてくれる可能性があり、これから動画を始める方には大きな味方となってくれるでしょう。
プロンプトでアイデアを入力し、AIが生成した動画や画像の背景をショートに追加できる機能や、自動字幕起こし機能、ナレーション機能、フィルター、エフェクト、自身の母国語以外の言語を話す視聴者にリーチできる機能が予定されており、年内にはアルファ版(ベータ版?)のリリース、2024年には正式リリースが予定されています。
参考:Made on YouTube: 誰もが「創造」できるように(日本版 YouTube 公式ブログ)
EC運用ではまず何からAIを活用するのが良い?
これらの内容を見てみると、どれもワクワクし、とても便利そうではあるものの、実際の使用はハードルが高そう・・・と感じられるものも多いと思います。現にまだ正式リリース前ですと導入は難しいですし、そもそも完全に任せるのはちょっと怖い・・・と感じてしまいますよね。そこで、まずは1番初めに導入すべきものからお伝えしていきたいと思います。それは自身の「壁打ち相手」です。
例えば、「ECの今困っている事象についての解決策のヒントが欲しい」「Shopifyの機能について聞きたい」など・・・、どこかにお願いする手前でまずは軽く聞きたい、という事情に大変有効なものが、AIです。実はChatGPTは2021年9月までの知識しか持っていないとされていましたが、現在その期限が2022年1月までに延長されていると言われています。ですから、Shopifyの情報も2022年1月までのアップデートであれば、しっかり答えてくれます。さらに最近の情報が必要であれば「Google Bard」を使いましょう。
参考:Bard - PaLM 2 を活用した、Google によるチャットベースの AI ツール
Google Bardであれば、最新の情報を元に回答してくれます。また、ECやマーケティングの情報については「Perplexity AI」も活用できます。
参考:Perplexity AI
いずれにしてもこれらのAIに対してはどんどん質問を投げてみると良いでしょう。思いの外専門的なことを回答してくれることに驚きます。もちろん、よく言われるように、全てが正しいとは限りません。間違ったことを発言することも多々あります。しかしここで大切なことは、まずはサクッと聞いてみる壁打ち相手として活用すること。その回答の確からしさを別のAIで確認してもいいですし、別途検索して裏取りしてみてもいいでしょう。
そういったやりとりに慣れてくると、AI自体をうまく使いこなせる(乗りこなせるように)なってきます。
次回は、AIを活用した壁打ちに役立つ具体的な手法、プロンプト、具体的な活用手順についてお伝えして行きたいとい思います。
お楽しみに!
■株式会社フラクタ
https://fracta.co.jp/
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