
小売業界の転職トレンドについて
未経験採用がトレンド!ITエンジニアの採用ニーズが増加
小売業界全体で人材不足感が高まっていることから、未経験採用がトレンドとなっています。
新型コロナの影響を大きく受けた業界の1つである小売業界は、異業種への転職を余儀なくされた人が多くいました。さらにはコロナ禍で「はたらき方」が多様化し、リモートワークを望む人材が流出した企業も少なくありません。
2023年に入り、コロナが5類移行し、インバウンド需要や国内の人流が回復したため、リアル店舗での販売や接客を行う人材の採用ニーズは向上しています。しかし、各社採用が厳しい状況にあるため、経験者採用が中心となる中途採用においても、間口を広げるために未経験採用に踏み出す企業が増加しているのです。
また、販売や接客などのポジションに加え、ITエンジニアの採用ニーズは大変高く、引く手あまたな状態になっています。高いニーズの背景として、顧客体験価値を向上させることを目的にECアプリの仕様改善を通してリアル店舗とオンラインをかけ合わせ(OMO)ようとする動きや、業務効率化を目的に基幹システムを見直す企業の動きが活発になっているからです。
小売業の中で求人の伸びが目立つリユース関連企業と専門店(家電量販店)
2021年以降から継続的に求人数が伸びているのは「専門店(その他・小売)」に含まれるリユース関連企業の求人です。また、2023年4-6月期の求人において、前年同期(2022年4-6月期)比でみた場合、「専門店(家電量販店)」の求人の伸びが目立っています。それぞれどういった理由から求人が伸びているのか見ていきましょう。

1.リユース関連企業の求人増加の背景
昨今のSDGs意識の高まりやフリマアプリの浸透、円安・物価高などを一因に、リユース店の売り上げは右肩上がりの傾向にあります。さらに、高齢者の間では「終活」、若者の間では「モノを持たない」という考え方が浸透し、買取を希望する人も増加傾向に。これらを受け、リユース市場は好調で、全国への店舗拡大なども積極的な企業が多く、中途採用での増員をはかっています。
募集ポジションは、出張して買取査定を行う営業職や実店舗での販売・買取を行う接客スタッフや店長職の求人増加が目立ちます。その他、ECサイトの仕様を改善するためのエンジニアや、事業拡大に伴って事業企画や人事などのミドル・バックの求人も見られます。
2.「専門店(家電量販店)」の求人増加の背景
「専門店(家電量販店)」の求人が増加する要因は大きく2つ挙げられます。
1つ目は、「DX人材の確保」です。生産性を上げ収益性を高めるために、店舗のDX化に注力する家電量販店が増加しています。例えば、スマホアプリで商品情報を見られるようQRコードを導入するなど、オンラインとオフラインの融合を推進しています。そうしたスマホアプリの自社開発や改善、データ分析に加え、社内の基幹システムの見直し、新規プロジェクトの進行マネジメントなどを担うDXポジションのニーズが高まっているのです。
2つ目は、「携帯電話販売スタッフの確保」です。携帯電話の解約金撤廃を受け、気軽に通信キャリアの変更ができるようになったこと。そして、事前予約が不要な店舗が増えてきたことも影響し、キャリアショップや家電量販店に赴く人が増加傾向にあります。一方で、携帯電話販売スタッフは、未経験から提案経験を積み、数年で他業界の営業に転職するというキャリアステップを踏む傾向が強く、離職率が比較的に高いという課題があります。結果、ニーズに対して人材不足が加速していることもあり、求人数は増加しているのです。
小売業の中で求人が減少傾向の通販・ネット販売
通販・ネット販売の求人は減少トレンドになっています。その背景として、昨年までの求人増加の反動があったことが考えられるでしょう。コロナが流行した2020年以降、EC利用者・EC化率は増加し、ネット販売企業は人材投資を強化しました。
2023年に入り、リアル店舗での売り上げ創出に改めて注力する企業が増加したため、人材投資が大変活発だった昨年に対して、やや採用熱が落ち着いた、とみています。一方で、依然として企業の採用意欲は高く、商品の売上向上に直結するマーケティング職や、自社ECサイトの開発運用やシステム改善などを担うSE職などはニーズが高い状態が続いています。また、ECプラットフォームを提供する企業の法人営業なども売上拡大に向け、採用意欲が高い状況といえるでしょう。
流通業界の転職トレンドについて
2024年問題目前!流通業界はほぼすべての求人が増加傾向
流通業界においても、ほぼすべての業種で求人は増加傾向にあります。特に求人増加が目立つのは、航空旅客を含む「航空運輸業」と、物流2024年問題で注目を集める「道路貨物運送業(宅配便・トラック運送など)」です。

1.「航空運輸業」の求人増加の背景
旅行需要が急減したコロナ禍初期から中期は、空港の地上スタッフを中心に異業界への転職が増加しました。この期間の人材流出の影響は大きく、新型コロナの5類移行やインバウンド再開による国内外への旅行など、昨今の急な需要の戻りに対して人材不足が深刻化し、求人数が増えています。
具体的には、地上で搭乗手続きや荷物の受け入れ、出発・到着ロビーでの案内を行う「グランドスタッフ」や、荷物の運搬や搬入などを行う「グランドハンドリング」といった地上スタッフの確保が急務になっています。
2.「道路貨物運送業(宅配便・トラック運送など)」の求人増加の背景
2024年4月から施行される働き方改革関連法案により、時間外労働の年間上限が960時間までとなり、トラックドライバー1人あたりの労働時間の短縮が必要です。そのため、各社トラックドライバーなど、輸送を担う人材確保に力を入れており、求人数が増加したと推測されます。
流通業界の担い手不足とどう向き合うか?
2024年問題で、対応が迫られる「道路貨物運送業(宅配便・トラック運送など)」において、企業の対応は大きく2つ見られます。
採用間口の拡大や制度の改善
若者が車離れしていること、物理的な移動が伴うトラックドライバーは他職種と比べはたらき方の柔軟性が低いことなどを理由に、転職を希望する人は少ない傾向にあります。結果、採用に苦戦する企業が多いのが実態です。そのため、未経験採用を強化して間口を広げるほか、月1.2万円程度のベースアップの検討や転居費の負担など、制度改善の動きも行う企業がみられています。こうした企業の工夫や取り組みは採用において重要なカギを握るのではないでしょうか。
省人化に向けたIT人材の確保
ドライバーの人員を増やすだけでなく、ベースとなる業務の生産性アップや効率化を狙い技術職の採用を強化する企業も増加傾向に。具体的には、荷役を効率化させるために使う機械(マテリアルハンドリング)の設計や配達向けドローン開発などの求人、社内のシステム導入を推進する社内SEの求人などが増えています。
まとめ:魅力的な環境整備と「雇用」に限らない選択肢を視野に
前述の通り、小売・流通業界では人材不足が深刻化している業種が多く、採用意欲が高い状態にあります。実際に、2020年はコロナ禍初期で求人数が一時的に減少したものの、2021年以降、求人数は右肩あがりの状態が続き、今後も増え続けると予測されます。この状態は、個人から見ると売り手市場の好機と言えますが、企業にとっては採用競争が激化していくことを示しているのです。
そのため、今いる社員が気持ちよくはたらくことができる、そして中途採用において転職希望者にとって魅力的な会社(仕事)だと感じてもらうための環境整備の工夫や自社ならではの魅力を創り出すことが重要だと考えています。また、今後ビジネスを推進するうえで「採用できるまで待つ」という状態を解消しに行く必要があります。そのため、「雇用」に限らない選択肢を持つことも大切なことだと言えるでしょう。例えば、プロジェクトに応じて業務委託形式で専門的知識を持ったプロ人材を活用する、ニーズが高いデジタル人材を副業で受け入れる、などの選択肢を持つことで解決できる課題はたくさんあります。
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