
中東地域における情勢の緊迫化は、原油やエネルギー資源、海上輸送ルート、さまざまな素材の供給ネットワークを経由して、世界全体の経済活動に暗い影を投げかけています。日本国内でも、エネルギーや燃料のコスト増加、原材料の価格高騰、物流網の遅延などの形で影響が広がり始めており、輸出入を行う一部の企業だけの課題ではなく、多様な業種における経営の共通基盤として認識されるようになってきています。
特に中小企業においては、コスト増加分を販売価格に転嫁することや、安定した調達先を確保することにおいて、大企業と比較して選択肢が限られ、交渉における力関係でも不利な立場に置かれやすいという現実があります。
今回の調査は、このような環境の変化の中で、中小企業が中東情勢の緊迫化からどのような影響を受けており、それに対してどのように対応しようとしているのかを明らかにし、今後の経営判断や支援政策の立案に役立てるための基礎データを収集することを目的として実施されました。
この記事の目次
調査結果の概要
今回の調査は、エフアンドエムクラブの会員企業を対象としたアンケート形式で実施されました。調査の実施期間は2026年5月1日から5月31日まで、有効な回答を得られた企業数は2,611社となっています。設問の内容に応じて単一回答方式と複数回答方式を使い分けており、未回答のデータについては集計の対象外としています。
中東情勢の緊迫化がもたらす影響は、既に中小企業全般に及んでいることが明らかになりました。何らかの影響を受けている、あるいは懸念を抱いていると回答した企業は全体の9割を超えており、実際に影響を肌で感じていると答えた企業も約7割に上っています。運輸業界では燃料コストの増加として、製造業や建設業では資材調達の困難さとして、業種によって異なる形で問題が顕在化しています。
影響の核心はコスト面に集中しており、原材料や仕入れにかかる価格の上昇と、エネルギーや燃料費の値上がりが二大要因として挙げられています。さらに、ナフサを原料とする資材(シンナー、塗料、潤滑油など)の入手困難や納期の長期化など、価格の問題だけでなく「必要なモノが手に入らない」という供給面での影響も現実のものとなっています。
影響が広範囲に及んでいる一方で、対応策は十分に講じられていない状況が浮き彫りになりました。何らかの対策に着手している、または検討している企業は全体の約4割にとどまっており、約3割の企業が「何をすべきかわからない」と回答しています。自由記述欄においても、有効な打ち手を見出せないという趣旨のコメントが多く見られました。
対策を実施している企業では、販売価格への転嫁と調達先の多様化が主な取り組みとなっている一方で、公定価格による制約を受ける医療・福祉業界のように価格転嫁が困難で、在庫の確保など防衛的な対応を取らざるを得ない業種も存在しています。
政府などによる支援策については、物価高騰対策の支援金や燃料費に対する助成金を活用している企業が一定数存在する一方で、「制度の利用に伴う負担が想定以上に重い」という声も上がっており、活用の度合いには企業間で差が見られます。
調査結果のまとめ
中東情勢の影響は業種を問わず全体に拡大しています
今回の調査から明らかになったのは、中東情勢の緊迫化が一部の輸出入関連企業だけの問題ではなく、中小企業全般に共通する経営環境の前提条件になりつつあるという実態です。何らかの影響を受けている、または懸念を抱いていると答えた企業は9割を超え、既に影響を実感していると回答した企業も約7割に達しています。その影響の経路は、原材料や仕入れ価格の上昇、エネルギーや燃料費の値上がりというコスト面に集中しており、運輸業では燃料費の増加として、製造業や建設業では資材調達の困難さとして顕在化するなど、業種によって表れ方は異なっています。中東という地理的には遠く離れた地域での出来事が、供給ネットワークと価格メカニズムを通じて、国内の幅広い業種に波及している状況が確認されました。
影響の広がりに企業の備えが追いつかない状況です
特に注目すべき点は、影響の広がりに対して企業側の対応が十分に追いついていないことです。対策に着手している、あるいは検討している企業は全体の約4割にとどまり、残りの約6割は「特に対応する予定はない」または「何をすべきかわからない」と回答しています。
自由記述欄においても、「対策の打ちようがない」「代替となる製品が見つからず作業が進められない」といったコメントが寄せられており、影響を認識しながらも効果的な手段を講じることができない企業が一定数存在することが見て取れます。
さらに、実際に講じられている対策は、販売価格への転嫁と調達先の多様化が中心となっていますが、ナフサを原料とするシンナーや塗料、潤滑油などの代替が困難な資材の入手難は、個々の企業の取り組みだけでは解決が難しい課題となっています。
公定価格による制約を受ける医療・福祉業界のように、コスト上昇を販売価格に反映させることができず、在庫の確保など守りの姿勢に偏った対応を取らざるを得ない業種も存在します。これらは供給ネットワークと制度に起因する構造的な課題であると言えます。
個社の努力に頼らない重層的な支援が求められます
以上の結果を踏まえると、中東情勢の緊迫化への対応を、個々の企業による自助努力だけに任せることには限界があることが明らかです。
第一に、有効な打ち手を見出せない企業に向けて、影響を把握する手法や初動段階での選択肢を提示する情報提供や相談機能の充実が必要とされます。第二に、代替が困難な資材を取り扱う企業に対しては、調達先を分散させる取り組みや在庫戦略を支える資金面・情報面での支援を検討する必要があります。第三に、価格転嫁が構造的に難しい業種に対しては、転嫁を促進する取引環境の整備や、制度的な下支えの仕組みが重要となります。
中東情勢の今後の展開は予測が困難であり、影響の長期化や再度の激化も否定できない状況です。平常時から調達リスクを分散させる取り組みと、業種ごとの制約条件に応じたきめ細やかな支援体制の整備が望まれます。
出典元:エフアンドエムクラブ












