
EC事業の拡大において、避けては通れないのが「在庫管理」の課題です。売上が伸びれば伸びるほど、現場は混乱し、利益を削るミスが増えていく……。そんなジレンマを抱える経営者や担当者の方に向けて、「なぜ在庫の一元管理が、EC成長の第一歩なのか」を徹底解説します。
岡本 茂靖
瀬戸内scm株式会社
代表取締役
外資系産業機械メーカーでの生産管理実務を経て、2015年に独立。2019年に瀬戸内scm株式会社を設立。これまで中小企業を中心に500社以上の生産性向上や脱属人化を支援してきた。専門ウェブサイト『在庫管理110番』での情報発信や著書『経費15%削減在庫管理術』、中小企業大学校や大阪府工業協会等で講師も精力的に行う。理論だけでなく、現場実務に即した改善提案で、企業の在庫最適化と生産性向上に貢献する在庫管理の専門家。
この記事の目次
売上拡大に不可欠な「複数EC運営(多店舗展開)」とその難しさ
単一のネットショップだけで売上を伸ばし続けるには限界があります。今のEC市場で売上を伸ばし続けるためには、「複数モールでの店舗運営」(マルチモール展開)が不可欠です。

しかし、これまでは1つのモールに広告などの販促活動や商品の分析、商品ページの管理などの労力を集中させていたのが、マルチモール展開ではそれを複数のモールでしなければならないため、管理が複雑化し労力は何倍にも増します。
EC事業者が直面する5つのリスク
売上を上げるための活動(広告などの販促、新規商材の仕入れや開発)にいくら力を入れて頑張っていても、複数モールの運営を始めると管理面で足元をすくわれかねません。
在庫管理を疎かにしていると直面する代表的なリスクは次の5つです。
・機会損失
商品ページで「在庫切れ」表示になっているにもかかわらず、実際には商品在庫がある(あった)という経験はありませんか?買いたいと思っている人を逃しており、せっかくの売上機会を損失しています。
・顧客からの信頼の低下
一方、「在庫あり」となっているのに、実際には在庫がなかったという経験もあるのではないでしょうか?この状態を「売り越し(オーバーセル)」と言い、顧客からの信頼を失います。今はSNSがあるため悪いウワサは一気に拡散されてしまうリスクもあります。一度ネットで広まった情報は完全に消すことができません。
・ショッピングモールからのペナルティの予防
在庫がなければ出荷できません。ショップは出荷をキャンセルせざるを得ませんが、ショップ都合の出荷キャンセルは、モールからペナルティを受ける可能性もあります。
ショップ都合による出荷キャンセルを行った場合の、主要なモールのペナルティ対応は以下の通りです。
楽天市場
「違反点数制度」を採用しており、違反行為として加算されます。年間の累計点数に応じて「検索表示順位のダウン」「ランキング掲載制限」「10万円以上の違約金」などのペナルティが発生します。違反レベルが高くなるほど加算される点数が大きく、累計点数が重なるほどペナルティ内容も厳しくなり、営業停止・契約解除・多額の違約金(最大300万円)に至るケースもあります。
Amazon
「出荷前キャンセル率」、「注文不良率」として計測されています。
例えば、 「出荷前キャンセル率」は2.5%以上になると、アカウント停止や削除される可能性があります。
Yahoo!ショッピング
「注文キャンセル発生率」としてカウントされます。ペナルティはありませんが、ストア評価ページに表示されます。評価が低いとショップの信頼性が損なわれ、ユーザーから敬遠されるようになってしまいます。
一度下がったスコアを戻すには膨大な時間と労力がかかるため、売り越しを防ぐことはEC運営の生命線と言えます。
・資金繰りの悪化
EC事業者の毎月の日常的な資金は「仕入れ」に費やされています。その割合は70%以上です。無駄な仕入れが増えれば、資金繰りが悪化します。さらに、現金がなければ新商品などここぞ!というときの勝負もかけられません。
・生産性の低下
注文を受けたのに在庫がない場合、社内では在庫を探し回る一方で、クレーム対応も緊急性が高いため最優先で行う必要があります。そこに時間を割くために、本来やるべき仕事を後回しにせざるを得ません。「ミスの発生⇒リカバリー時間がない」の負のループに陥り、従業員が疲弊します。
なぜEC事業者が「一番最初」に導入すべきは在庫一元化なのか?
広告運用やサイトデザインなど、「売上」をあげるためにやりたい施策は山ほどあるでしょう。しかし、同時に「守り」にも目を向けておかなければいけません。守りの中でやるべきことは「在庫管理」が最優先です。
複数のECサイトを運営し、商品点数も増えると、整理・整頓、ピッキングや梱包などの作業が増え在庫管理が複雑化します。その中でも、単純ですが大変で、致命的になりやすいのが正しい在庫数の維持です。
それがわかる事例として、在庫管理110番に相談のあった、1点モノのインポートアパレルを扱う事業者様の事例を紹介します。
この事業者様は、モールAとモールBに出店していて、商品の在庫はいずれも1個です。
ある週末の深夜に、モールAで商品が1個売れました。この商品の在庫数は0個になります。
ところが、その直後にモールBで注文が入りました。この時点で在庫はまだ連動されておらず、表示上は在庫ありになっていたため、モールBの注文も受け付けられた状態となります。
翌朝、土曜日で出勤者が少なく、さらに出荷作業が多かったため、モールBの注文が「売り越し」になっていたことに事業者様が気づいたのが昼頃です。
慌てて電話をしたが注文者は不在。日曜日は休業日で連絡ができなかったため、月曜日に改めて電話したら、モールBの注文者は激怒。注文キャンセルは受け付けてくれたそうですが、その後クレームの口コミを投稿されてしまいました。
商品は休日、夜間いつ売れるかはわかりません。
「売れたら手入力で在庫を即修正する」は、単純作業ですが大変な労力です。
特に「売り越し」は、顧客の信頼を失うだけでなく、モール側からのペナルティリスクがあるため、あらかじめ在庫数を少なく設定してクレームリスクを避けている事業者が多いようです。しかし、その行為は自ら売上機会を捨てていることとイコールです。
在庫管理でやるべきことはたくさんありますが、在庫管理の専門家として、ネットショップ事業者特有のリスクに対応するために最初に導入をお勧めしたいツールは、在庫一元管理システムです。
EC一元管理システムの特徴(比較・検討)
在庫一元管理ツールの役割は、複数のモールで商品を販売していてどこかのショップで商品が売れた際、連動して他ショップの在庫数も自動で更新して24時間365日、全店舗の在庫数を最新に保つことです。
■主要な在庫一元管理ツール
| サービス名 | 特徴 | URL |
| ネクストエンジン | 国内シェア最大級。アプリによる拡張性が高い。注文が入ると即時に全モールの在庫を更新するリアルタイム連携が強みで、確保在庫・拠点管理にも対応。 | https://next-engine.net/ |
| CROSS MALL | アパレル業界に強い。「在庫振分け」機能が特徴的で、モールごとに見せる在庫数を調整して在庫切れリスクを分散できます。セット商品の在庫連動も可能。 | https://cross-mall.jp/ |
| TEMPOSTAR | 安定稼働に定評があり、個別カスタマイズにも柔軟。カスタマーサポートも丁寧。 | https://commerce-star.com/ |
これらのツールはデジタルデータのやり取りに特化しているため、EC間の在庫連動には非常に強力です。しかし、販路が「画面の外(リアルな場)」へ広がった瞬間に、状況は一変します。
要注意!落とし穴は「EC+アナログ販売」
ネットショップだけでなく、「店頭での対面販売」や「電話・FAXによる業者への卸売り」といったアナログな販路を一つでも持っている場合、デジタル特化型のツールでは解決できない「落とし穴」になります。
なぜアナログ販売が入ると大変なのか?
- タイムラグの致命傷:店頭で売れた瞬間、その情報はシステムに届きません。店員が手入力するまでのわずかな間にネットで注文が入れば、即「売り越し」が発生します。
- 現場の入力漏れ:接客や電話対応で忙しいスタッフにとって、複雑なEC管理画面の操作はハードルが高く、更新が後回しになりがちです。
- 単位と処理の不一致:卸売り業者との取り引きで生じる、卸売りの「ケース単位」や、サンプルの「無償出荷」、注文確定前の「取り置き」など、アナログ特有の動きを一般的なECツールは想定していません。
【事例】ECとアナログ販売の在庫一元化を実現
アナログな動きが在庫管理を複雑化させていたケースを紹介します。
ECと「電話・FAXによる卸売り」を並行していた事業者様の事例です。この事業者様では、卸売りの出荷分が即座にEC側に反映されず、常に在庫のズレを人の手で修正していました。
そこで、弊社の在庫管理システムを導入。現場スタッフがスマホやタブレットで迷わず使える「アナログ現場に特化した在庫一元化」により、在庫のズレは解消し、正確な在庫把握による経営判断が可能になりました。
弊社のサービスを使って実現した具体的な成功ストーリーは、以下のページでご覧いただけます。
まとめ
ECの成長スピードを加速させるには、バックヤードの安定が不可欠です。もしあなたが「一般的なツールを検討したが、自社のアナログな業務フローには合わなかった」「ネットショップだけでなく、店頭や卸売りの在庫もまとめて管理したい」と感じているなら、私たちの出番です。
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