
博報堂生活総合研究所が、現代の生活者における「感情」に関する意識や価値観を把握するため、20歳から69歳までの生活者3,914人を対象に調査を実施しました。
調査の結果、自分の感情を素直に出せる場が減っていると感じる生活者が63.8%に上り、さらに喜びなどのポジティブな感情でさえも「浮かれ過ぎないよう落ち着かせる」人が64.1%に達することが明らかになりました。
この記事の目次
感情表現の場が減少、ポジティブな感情すら抑制
社会全体において多様性への理解が進展し、他者への配慮がマナーとして浸透しつつある現代において、「アンガーマネジメント」や「感情管理」といった感情に関するテーマへの注目度が高まっています。加えて、SNSやチャットツールといったデジタルコミュニケーションの普及により、他者の感情を理解することや、自分の感情を誤解なく相手に伝えることが以前と比べて難しくなってきています。こうした背景を受けて、博報堂生活総合研究所では生活者の感情に関する意識や価値観を調査したとのことです。
感情に関する変化の実感として、以前と比較して「自分の素直な感情や気持ちを素直に出せる場」が「減っている」と感じている生活者は63.8%と、6割を超える結果となりました。また、「良いことがあった時、浮かれすぎないよう感情を落ち着かせることがある」という回答も64.1%と6割を超えています。これらの結果から、以前よりも自分の素直な感情を表現できる場が減少しているだけでなく、喜びといったポジティブな感情であっても出しすぎないように自制している生活者が多数存在することがわかります。
仕事だけでなくプライベートでも感情を抑制
自分の感情を表に出さず抑えている場面については、「仕事の時」が83.2%で最も多い結果となりました。続いて「友人と一緒の時」が67.7%、「子どもと一緒の時」が63.2%となっており、いずれも6割を超えています。さらに、「親と一緒の時」が55.8%、「配偶者・パートナーと一緒の時」が55.3%と過半数を占めています。
他者への配慮がマナーとして求められる現代社会では、仕事の場面はもちろんのこと、プライベートにおいて親しい人たちに対しても自分の感情を抑える生活者が多く存在していることがうかがえます。また、「インターネットやSNSを見ている時」においても47.8%と半数近くの人が感情を抑えていることが判明しました。

感情を抑える一方で、素直な感情表現への憧れも
感情に関する意識の実態について、「感情や気持ちを素直に出せる人は素敵だと思う」が72.0%、「感情や気持ちを出さないよう抑えることは疲れる」が66.5%と、いずれも高いスコアを記録しています。自ら感情を抑えるという選択をしている一方で、感情を素直に表現できることへの憧れを持っていたり、感情を抑えることに疲労を感じたりする、そうした相反する意識を併せ持つ生活者が多く存在することがわかります。

実態と欲求のギャップ、「揺さぶられたくない」が最大
感情に関する意識の実態と欲求の差に注目すると、差が最も大きかったのは「感情や気持ちが揺れ動きにくい方だ(37.6%)」という実態に対して、「自分の気持ちを揺さぶられたくない(70.1%)」という欲求で、その差は32.6ポイントでした。感情を表に出さないようにするためには、そもそも感情を揺さぶられることなく穏やかな状態を保ちたいという心理のあらわれかもしれません。
2番目に差が大きかったのは、「自分の感情や気持ちを出す時、その場に合った適切な表現ができている(55.1%)」と「自分の感情や気持ちを出す時、その場に合った適切な表現ができるようになりたい(79.1%)」の24.0ポイント差でした。3番目に差が大きかったのは「自分の感情にきちんと向き合えている(57.4%)」と「自分の感情や気持ちにきちんと向き合いたい(78.4%)」の21.0ポイントでした。
感情を表現する際には他者への配慮も含めて適切な表現を使いたい、そして普段は感情を表に出さないようにしている分、自分の中では感情の解像度を高めて向き合いたいという欲求の高まりのあらわれと考えられます。

※調査では小数第2位まで集計していますが、本稿は小数第1位まで(小数第2位を四捨五入)を表示しているため、点数差は見た目の数値と異なる場合があります。
現代の願望ランキング、「感情を平らに」が上位に
「失敗したくない」「タイパよくしたい」など、現代ならではの願望の所持率をランキング形式で見てみると、1位は「失敗したくない願望(76.9%)」、2位は「正しい人でいたい願望(75.4%)」でした。3位には「感情を平らにしたい願望(73.1%)」がランクインしており、5位の「タイパよくしたい(70.3%)」を上回る結果となりました。感情を抑えやすくするために、感情の揺れを最小限にして穏やかな状態を保ちたいという欲求のあらわれと考えられます。
年代別では、60代を除く全ての年代で「失敗したくない願望」が1位となりました。2位については、20代が「正しい人でいたい願望(75.4%)」、30代が「自分らしくいたい願望(73.7%)」、40代が「感情を平らにしたい願望(75.2%)」、50代が「正しい人でいたい願望(77.1%)」、60代が「失敗したくない願望(75.3%)」と、年代ごとに特徴が出ています。また20代から40代では「タイパよくしたい願望」が、50代から60代では「頼りたくない願望」がランクインしており、年代によって所持する願望の種類が異なっていることが明らかになりました。

現代ならではの願望の詳細
生活者研究の中で抽出した「現代ならではの願望」から、代表的なものを調査項目として設定されています。
- [失敗したくない願望] 失敗せず正解にたどり着きたい、場にそぐわない言動をしたくない
- [正しい人でいたい願望] 善悪を正しく判断でき、みんなから受け入れられる人でいたい
- [感情を平らにしたい願望] 感情を波立たせず、できるだけ平穏に過ごしたい
- [自分らしくいたい願望] 人と違う自分でありたい、個性を発揮したい
- [タイパよくしたい願望] 何事も効率的に済ませたい、無駄をなくしたい
- [頼りたくない願望] 困ったことがあっても、他人に迷惑をかけず自分で解決したい
- [内輪でいたい願望] 仲間や気が合う人以外の余計なかかわりを避けたい
- [成長したい願望] いつでも前より良い自分になりたい、自分の糧になるものを得たい
- [平均でいたい願望] 優秀なのも劣っているのも嫌。目立たない平均的なところにいたい
- [努力したくない願望] 一生懸命頑張らなくても、自分のレベルでできることだけやりたい
- [承認されたい願望] 人から認められる自分でありたい
- [チートしたい願望] 楽して成功したい、自分に圧倒的有利な状況や分野で活躍したい
- [遅れたくない願望] 時代に取り残されないよう、常に情報をアップデートしたい
- [典型に乗りたい願望] 就職、結婚、出産など、典型的なライフステージを歩んでおきたい
調査概要
今回の「感情に関する意識調査」の概要は以下の通りです。
調査地域:全国
調査手法:インターネット調査
調査対象:20~69歳の男女 3,914人
調査時期:2025年10月17日~10月21日
企画分析:博報堂生活総合研究所
実査集計:QO株式会社

出典元:株式会社博報堂 博報堂生活総合研究所 プレスリリース












