PR TIMES、2025年プレスリリース審査レポートを発表 - 最上級表現の根拠不足が審査連絡の31.2%で最多に

株式会社PR TIMESが2025年12月10日(水)、同社が運営するプレスリリース配信サービス「PR TIMES」において、2025年1月1日~10月31日の10カ月間に配信された約38万件のプレスリリースに対する審査結果のレポートを発表しました。この報告によると、最も多かった審査連絡は「最上級表現の根拠不足」で全体の31.2%を占め、また大阪・関西万博関連では「アンブッシュ・マーケティング」に抵触するリスクのある発信が前年比6倍に増加するなど、2025年特有の傾向が明らかになっています。

株式会社PR TIMESが公開したこのレポートでは、同社の「PR TIMESコンテンツ基準」に基づいた審査連絡(配信されたプレスリリースに対して編集の相談や事実確認を行うこと)の内容と傾向について詳細な分析が行われています。

「最上級表現の根拠不足」が全体の31.2%で最多、夏季に増加傾向

2025年1月~10月に「PR TIMESコンテンツ基準」に則して審査連絡が行われたプレスリリースの中で、最も多かったのは根拠なく「No.1」や「業界初」といった最上級表現を使用する「最上級表現の根拠不足」で、全体の31.2%を占めています。次いで多かったのは、プレスリリースとして新情報の記載が読み取れない「新規性の不足」に関する審査連絡で19.2%でした。

昨年は「新規性の不足」が最多で、次いで「最上級表現の根拠不足」という順序でしたが、2025年はこの順位が逆転しています。PR TIMESによれば、この変化の要因として、2025年6月1日から改正労働安全衛生規則が施行され、職場における熱中症対策が義務付けられたことが背景にあると分析されています。これにより夏季のニーズに合わせた商品・サービスに関する企業からの発信が活発化したことが関連していると考えられています。

夏季に「最上級表現の根拠不足」が突出して増加

月別の集計によると、「最上級表現の根拠不足」に該当したプレスリリースの14.0%にあたる149件が7月に発表されたもので、6月が133件、8月が111件と夏季に集中して月平均106件を上回る傾向が見られました。猛暑や夏休みといった季節の商機に合わせた熱中症対策グッズ、夏季限定のスイーツ、プールなどの大型アクティビティといった商品・イベントで「全国初」「業界初」などの最上級表現を使った集客目的の情報発信が増加したことが背景にあるとのことです。

PR TIMESでは、「最上級表現の根拠不足」について、「No.1」や「業界初」といった広告表示に対する消費者庁の摘発が相次ぐ社会情勢を踏まえて2022年6月に最上級表現に関する基準を新設しています。メディアや生活者が安心して情報を活用できるようにするとともに、利用企業が摘発される事態を回避するため、「日本初」や「最安値」などの最上級表現を使用する際には客観的根拠の併記を必須としているとのことです。

根拠として認められるのは、試験・調査による客観的結果(自社調べの場合は、調査である旨、調査年月、調査範囲の3点が必要)か、専門家、専門家団体・専門機関の見解または学術文のいずれかとなっています。

万博イヤーで「アンブッシュ・マーケティング」リスクのある発信が前年比6倍に

「アンブッシュ・マーケティング」とは、世界的な大会や著名なイベントについて、公式スポンサーではない企業があたかも公式スポンサーやライセンシーであるかのように生活者に誤認させ、物販や集客を行うことを指します。2025年にこの基準で審査連絡の対象となったプレスリリースは全体で36件に上り、そのうち34件が大阪・関西万博の名称を用いたものでした。

2024年の同様の事例は6件(全てフランスのパリで開催された国際的なスポーツイベント関連)だったことから、2025年は前年比6倍の増加となっています。月別集計では4月の21件が最多で、4月に開幕した大阪・関西万博の開催月に合わせた情報発信において「大阪・関西万博」の名称を用いたプレスリリースが増加傾向にありました。

自国開催のイベントということもあり、インバウンド需要を見据えた関西エリアの飲食店や宿泊施設の関連キャンペーン実施など、企業の情報発信が活発になった様子が伺えます。PR TIMESでは、このような「アンブッシュ・マーケティング」に該当するリスクのある情報は、正当な権利を持つスポンサーの権利を侵害する行為として、イベント主催者から厳しく制限されていることから、イベント関連法規や不正競争防止法の観点から審査連絡の対象としているとのことです。

2025年は全体の0.9%のプレスリリースに審査連絡、昨年より減少傾向

PR TIMESでは、プレスリリースを発表する企業、情報源とするメディア、閲覧する生活者が安心して利用できるよう、基準に即した企業の利用登録とプレスリリース内容の審査基準を設けており、発信されたプレスリリースは審査を担う専任チームが全件目視で確認しているとのことです。

2025年1月~10月に利用企業が発表したプレスリリース計38万2296件のうち、0.9%にあたる3414件のプレスリリースに対して基準に即した審査連絡が行われました。昨年は4032件(1.2%)に審査連絡があり、全体として減少傾向にあります。

一方で、審査連絡の項目の内訳には変化が見られ、「時節に合わせた既存の取り組みの紹介」については2024年の56件から2025年は117件と約2倍に増加しています。月別分析では、バレンタイン(1月)、GW(4月・5月)、ハロウィン(10月)といった特定イベントや、梅雨・猛暑(6月・7月)といった季節のニーズに合わせて新規公開情報を伴わない既存情報を発信するケースが増えています。

PR TIMESでは、プレスリリースは企業の事業活動における新たな取り組みや成果を伝える報道資料と位置づけ、新規情報を伴わない形で時節・時流のニーズに合わせた既存情報のお知らせには制限を設けているとのことです。

その他の項目では、一度開催告知したイベント・キャンペーンなどの情報を再度告知する「配信済み内容の再告知」が2024年の430件から2025年の526件に、主な発信情報としてメディア掲載情報を告知する「メディア掲載情報」が2024年の268件から2025年の299件に、それぞれ増加しています。

審査連絡の対象となったプレスリリースの多くは発信元企業による追記や表現の変更により掲載継続となっていますが、法令抵触リスクがある内容や成年向け商品に関する内容など、生活者に重大な影響を与えかねないプレスリリースは、審査連絡のプロセスを経ずに運営者判断で即時取り下げが行われる場合もあるとのことです。2025年に即時取り下げとなったプレスリリースは11件で、審査連絡対象の0.3%でした。

発表後に審査を行うPR TIMESのプロセスと今後の取り組み

PR TIMESは、サービス開始以来一貫して企業の広報発表タイミングを優先し、利用企業が即時または時刻指定で新情報を発表できる仕様を採用しています。このため発表内容の審査は発表後速やかに行う体制を取っているとのことです(企業登録審査を通過した会員企業が随時発表可能)。

同社では社会的な情報インフラとしての倫理観から、メディア関係者が報道資料として安心して活用でき、生活者にとって信頼性の高い情報が集まるプラットフォーム運営を目指しており、審査を重要な工程と位置づけています。ただし、発表前審査を行うと適切ではない発表を防ぎやすくなる一方で、多くの発表が遅れてしまう可能性があります。

広報・PRにおいて発表者が自ら開示タイミングを選べることは非常に大切であるという考えから、即時発表機能を維持し、発表後速やかに審査するという順序は今後も変更しない方針だということです。不適切な発表内容を発見した場合には、速やかに内容訂正や削除などの対処を行うとともに、内容や結果の重さ、再違反の可能性などを考慮してサービス利用停止などの措置を取ることがあるとしています。

今後のコンテンツ基準アップデートについて

2024年12月の前回レポート発表以降、PR TIMESではプレスリリースのコンテンツ審査のための専任チームを組織しました。現在は審査連絡対象となったプレスリリースの発信元企業に対し、事業内容や配信されたプレスリリースの情報をもとに、どのような内容であればプレスリリースとして配信できるかをご案内し、編集を依頼しているとのことです。

また今後の取り組みとして、PR TIMESコンテンツ基準の一部アップデートを計画しています。具体的には、「同一内容の再告知」とみなされる具体的なケースや判断基準を明確にし、お客様が事前に判断できるようにする予定とのことです。

PR TIMESでは広報専任でない方や初めてプレスリリースを発表する方も利用していることから、そうした方々にも安心してプレスリリースを配信でき、メディア関係者も円滑にコンテンツを活用できる環境を審査対応を通じて実現することを目指しています。

重要な審査基準の改訂やアンブッシュ・マーケティングを含め、時節やトレンドに関連した情報発信で特に注意が必要な事項については、解説記事の作成やセミナーの開催、個別案内などを通じて広く周知に努めていく方針だとしています。

株式会社PR TIMESについて

PR TIMESは「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」をミッションに掲げ、行動者のポジティブな情報がニュースの中心となり、個人を勇気づけ前向きにする社会の実現を目指しています。同社のプレスリリース配信サービス「PR TIMES」の利用企業社数は11万6000社を超え、国内上場企業の63%以上が利用しています。メディア記者の会員登録は2万8000人を超え、月間アクセス数は約9000万PV、プレスリリース件数は月間4万2000件超、累計で200万件を超えているとのことです(2025年8月時点)。

出典元:株式会社PR TIMES プレスリリース

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