
株式会社電通デジタル(本社:東京都港区 代表取締役社長執行役員:瀧本 恒)は、生活者の購買行動に関する「EC・店頭をまたぐ購買行動実態調査2025」を実施したことを発表しました。この調査は2022年から継続して行われており、今回で4回目となります。
同調査では、主要商品(13カテゴリー29商品)を対象に、認知から購買後までの各段階で生活者がどのようなチャネルに接触し、どのような行動をとっているかを8,700名へのアンケートを通して分析しています。今回は調査結果の一部が公開されました。
この記事の目次
調査の背景と概要
生活者の価値観が多様化する中で、ECと店頭を横断する購買体験はますます複雑化しています。この変化を捉えるために実施された本調査は、主要商品カテゴリーごとに購買プロセスの各段階におけるメディア接触や決済手段など、購買行動のデジタル化に関する詳細なデータを収集しています。生活者が購買時に重視する要素や意思決定プロセスを可視化することを目的としているとのことです。
調査から見える主な傾向
2022年の調査開始以降、一貫して見られる傾向として、購買プロセス(認知・比較検討・購入)の各段階においてデジタル接点の活用が増加し続けているということです。
2025年の調査結果では、引き続きリスクヘッジ購買およびスムーズな購買行動へのシフトが見られる一方、購買における「検討」の捉え方に変化の兆しも現れているようです。
特筆すべき点として、口コミの参照数が増加しているにもかかわらず、生活者自身はこの行動を「検討せずに購入した」と認識する傾向があることが判明しました。これは情報収集が無意識化・ルーティン化され、従来の「検討」という概念で捉えにくくなっている可能性を示唆しています。
また、ライブコマースやメタバースといった次世代技術への関心も高まりつつあり、AIサービスについては「必要最低限の情報を手軽に得たい」というニーズが明確になっていることがわかりました。
主な調査結果
着実に進むオンライン化
購買体験がECと店頭をまたいで複雑化する状況下で、生活者の購買行動は引き続きデジタルシフトの傾向を示しています。2022年から2025年にかけて、認知フェーズでのオンライン利用が4%増加し、比較検討フェーズでは6.4%増加、購入フェーズでは3%増加するなど、購買プロセス全体でオンライン化が着実に進行しているとのことです。
企業対応の進化と生活者ニーズの変化
本調査結果から、購入先企業からのフォローやサポートに対する生活者のニーズは依然として高い傾向にあることが明らかになっています。
2023年から2025年にかけて、「問い合わせ対応」に関する生活者のニーズと実際の企業対応とのギャップは徐々に縮小しているものの、ギャップスコアは2023年が-30.8pt、2024年が-26.6pt、2025年が-21.3ptと、他の項目と比較して依然高い水準にあります。この結果は、企業のサポート体制のさらなる強化が求められていることを示しているとのことです。
一方、購入前後の案内については、企業側から提供されている対応が生活者のニーズを上回っており、一定の成果が見られる領域となっています。

また、「問い合わせ対応」項目の分析からは、13カテゴリー中12カテゴリーにおいて、「返品・交換」に関するニーズが最も多いことが判明しています。

リスクヘッジ購買の傾向が継続
生活者の購買行動においては、前年に引き続き安全性や信頼性を重視する傾向が継続しています。今年はさらに、クーポンやポイントなどの経済的メリットを積極活用する動きが強まっており、安心・安全と経済性の両面から購買リスクを軽減しようとする「リスクヘッジ購買」の傾向がより顕著になっていると報告されています。

特に今年は、口コミに関する新たなデータが収集され、生活者が複数の情報源で口コミを確認する傾向が明らかになりました。平均して1.5カ所でレビューや口コミを参照しており、高価格帯が含まれる家電やインテリアに関しては平均2カ所以上のレビューや口コミを確認しているとのことです。これは「失敗したくない」「後悔したくない」という心理が背景にあると考えられます。口コミの確認行動が加わることで、情報収集がより多面的かつ精緻になり、リスクヘッジ購買の傾向をさらに強める要因となっています。

「検討」の捉え方に変化の兆し
今回の調査では、コロナ禍以降、従来の比較・検討プロセスにおいて「検討せずに購入した」と回答する生活者が増加していることが明らかになりました。

特にダイエット・健康および美容・コスメカテゴリーでこの傾向が顕著に見られますが、いずれも他者レビューの結果が購入行動と結びついているという共通点があるとのことです。


レビュー・口コミは一般的に検討時に利用される要素ですが、「検討せずに購入した」という回答傾向とは矛盾しています。このことから、生活者にとっての「検討」の捉え方が変化していることがうかがえます。背景には、SNSや動画コンテンツなどで非能動的に触れる傾向が高まっているレビュー・口コミが、従来の多角的な情報収集とは異なるため、生活者が「検討」として認識していない可能性があると分析されています。
今回の調査で示された「検討(を意識)せずに購入」の増加は、従来の購買モデルでは捉えきれない生活者購買行動の変化の兆候と考えられています。
次世代コマース・メタバース空間・AIに対する関心
昨年と比較して、ライブコマースおよびメタバースにおける「認知・興味・体験」の割合が全体的に増加しているとのことです。特にライブコマースでは、各指標において前年比で大幅な伸びが見られ、より多くの生活者が関心を寄せていることがわかります。

AIサービスに対しても好意的な印象や興味を持つ生活者が一定数存在しているとのことです。2025年5月の調査時点では利用経験は限定的ですが、興味はあっても利用に踏み切れていない生活者が多いことが明らかになりました。今後、サービスの認知度向上や体験機会の拡充により、利用が広がる余地があると考えられています。

また、生活者がAIに求める情報の具体性については、商品の基本的な情報を見やすく整理して提示されることを望んでいることがわかりました。専門的な分析や深い情報よりも、手軽で必要最低限の情報提供を求める姿勢が見られます。

なお、今回の調査結果は現時点での生活者のAIに対する意識を示すものであり、今後AI技術の進化や接触機会の増加、社会的な一般化が進むにつれて、生活者の評価や期待も大きく変化していくことが予想されます。電通デジタルでは、こうした変化を継続的に注視し、今後のマーケティング戦略やサービス設計に活かしていくとしています。
調査概要
タイトル:「EC・店頭をまたぐ購買行動実態調査2025」
調査手法:インターネット調査
調査時期:2025年5月22日~28日
調査エリア:全国
調査対象:20〜69歳、10,000名(スクリーニング調査)8,700名(本調査)
調査主体:株式会社電通デジタル
商品一覧:
下記、主要13カテゴリーに含まれる29商品
ファッション・インナー・小物/美容・コスメ/食品・スイーツ/ドリンク(お酒以外)/お酒/日用雑貨/ダイエット・健康/医薬品・コンタクトレンズ/ギフト/ペット用品/電化製品/インテリア/キッズ・ベビー・おもちゃ
主な調査項目:
実態把握
・認知経路(購入品目の情報接点)
・情報収集(検討場所/最も役に立ったところ/最も役に立った検討場所の選定理由)
・比較検討(比較検討時の行動)
・購入時の行動(購入意欲を高める要素)
・オンライン(EC)とオフライン(店頭)の使い分け(購入商品の購入場所と選定理由)
・企業の公式サイトとモールECの使い分け(使い分けの把握と選定理由/主要ECサイトの利用理由)
・継続購買後対応(嬉しかった対応/あったら嬉しいもの)
・参考にするレビュー・口コミの掲載場所/重視する項目
決済実態把握
・流通別決済方法
AI活用実態把握
・AI活用需要度
・AI活用サービスへの関心(好意的なもの/利用意向/利用経験)
新しいショッピング形態接触状況
・認知/興味/体験経験/購買経験
その他
・購買に関する生活者の意識
・商品カテゴリーごとの最大支出金額
電通デジタルについて
電通デジタルは、国内最大規模の総合デジタルファームです。「人の心を動かし、価値を創造し、世界のあり方を変える。」をパーパスに掲げ、生活者に寄り添うクリエイティビティとテクノロジーを統合的に活用することで、あらゆるトランスフォーメーションを実現しています。クライアントの事業成長パートナーとして、共に新たな価値を創造することで、経済そして社会の「変革と成長」を目指しているとのことです。
出典元:株式会社電通デジタル プレスリリース











