ヤマト運輸株式会社は2025年10月より、同社グループの貨物専用機(フレイター)を活用した活魚のスピード輸送サービスを開始したことが発表されました。独自開発したクールコンテナの活用により、獲れたての活魚を小ロットで最短翌日に首都圏の市場や飲食店などへ届けることが可能になります。

このサービスでは、長崎県対馬市で水揚げされた活魚を、深夜の貨物専用機で輸送し、翌日には東京都内の飲食店などに生きたまま届けられるようになりました。これにより、遠隔地の新鮮な活魚を小ロットで効率的に輸送する新たな物流手段が実現しています。

長崎県対馬市から東京都内へ - 活魚輸送の実例

現在実施されている輸送例では、長崎県対馬市の水産事業者「株式会社ダイケー」から東京都千代田区の飲食店へ、穴子・クエ・アカハタ・キジハタ・オコゼなどを生きたまま輸送しているとのことです。北九州空港から羽田空港へ、深夜のフレイター定期便を活用することで、対馬で夕方に集荷した活魚を翌朝には東京都内の店舗まで生きた状態で届けることが実現されました。

これまで株式会社ダイケーでは活魚の小ロット輸送が難しい状況でしたが、このサービスによって、少量でも効率的な輸送が可能になったということです。

深夜の貨物専用機を活用した活魚の輸送フロー

利用者からの評価

株式会社ダイケーからは「ヤマト運輸での活魚輸送は流通現場に大きな変化をもたらす画期的な出来事です。従来は大量輸送でなければコスト面で成り立たず、新鮮な天然活魚のルートが九州からは途絶えていましたが、温度管理を徹底した小ロット活魚輸送の仕組みによって、生産者・市場・飲食店だけでなく、個人や小規模事業者にも新しいチャンスが広がります。この取り組みは既存のお客さまだけでなく新規取引先の開拓につながり、海外市場も含めた新たな需要を生み出す可能性があります」とのコメントが寄せられています。

また、都内寿司店からは「市場に来る前の産地でいい魚が選べます。対馬市の穴子以外でも生きたクエなどを直接仕入れることができるのが魅力です。寿司は基本、素材の料理なので、素材の品質が良い状態でないと美味しくなりません。例えば、鮮度の良い脂の乗ったクエは、3日〜8日間ほど熟成してからお客さまに提供していますが、漁から時間が経過した魚では、同じ仕込みをしても十分な美味しさを引き出せないのです。出荷した翌日に活魚が届くのは、飲食店にとって非常に価値があることです」との声が届いているそうです。

貨物専用機を活用した活魚輸送の特徴

このサービスでは、ヤマト運輸が毎日運航する貨物専用機の定期便を活用することで、安定した輸送と小ロットからの発送を可能にしています。魚の種類や外気温の状況に合わせて、常温輸送と保冷輸送から選択できる点も特徴だと説明されています。

1. 常温輸送:活魚を入れた専用の発泡スチロール箱を水漏れを防ぐ防水パンに入れて輸送します。

2. 保冷輸送:ヤマト運輸が独自に開発したクールコンテナを活用することで、季節や外気温に関わらず、安定した温度で輸送することができるとのことです。

クールコンテナは上記の他にも数種類のサイズがあり、お客さまの荷量やサイズに合わせて選択可能だということです(特許・意匠出願中)。

売主と購入者それぞれのメリット

売主のメリット:

  • 輸送時間の短縮による商品価値の向上
  • 新たな販路の拡大・需要創出

鮮度の高い活魚を生きたまま翌日に首都圏の市場や飲食店へ提供できるようになることで、商品の価値向上や販路拡大につながるとされています。

購入者のメリット:

  • 鮮度の高い活魚の入手
  • 顧客体験の向上

これまで入手が難しかった遠方地域の鮮度の高い活魚を使った新たな料理を提供できるようになり、来店者に「ここだけでしか食べられない」メニューを提供することが可能になるとのことです。

サービス開始の背景と目的

海外からの観光客増加により、東京などの消費地では鮮度の高い活魚への需要が高まっています。現在、活魚の輸送は主に陸上トラックで行われていますが、多頻度小ロットでの輸送が難しいことや、トラックドライバー不足により、長距離輸送を安定的に継続することが課題となっていたといいます。

ヤマト運輸では、貨物専用機を活用した活魚輸送を通して、地方における漁業の発展や地域活性化、新たな販路拡大や需要創出に貢献していくことを目指しているそうです。

活魚のスピード輸送サービス利用について

対象

法人のお客さま

料金

数量などの諸条件に応じて、お客さまごとに個別設定となります。

輸送区間

ヤマトグループのフレイターの輸送区間
就航地:新千歳空港・成田空港・羽田空港・北九州空港・那覇空港
各空港から最終納品先はチャーター便で配送します。

このサービスは法人向けとなっており、個別の条件に応じた料金設定となります。ヤマトグループの貨物専用機就航ルート(新千歳・成田・羽田・北九州・那覇の各空港間)を利用したサービスで、各空港から最終納品先まではチャーター便で配送する仕組みとなっています。

活魚の輸送は水産業界において常に課題となってきた分野ですが、ヤマト運輸の貨物専用機と独自開発のクールコンテナを組み合わせたこのサービスにより、これまで難しかった地方の新鮮な海産物を都市部へ届ける新たな流通経路が確立されつつあります。今後、同様のサービスが他の地域にも広がることで、地方の水産業活性化や食文化の多様化に寄与することが期待されています。

出典元: ヤマト運輸株式会社

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