Z世代の商業施設利用実態調査：ポップアップストアが長時間滞在を促進、7割以上が月1回以上来館

2025年10月28日 2025年10月28日

コマースピック編集部　プレス配信チーム

株式会社カウンターワークス（本社：東京都港区、代表取締役CEO：三瓶直樹）と早稲田大学ショッピングモール研究会が、1都3県在住の18歳から24歳までの497名を対象に「Z世代の商業施設に関する実態調査」を共同実施したことが発表されました。この調査では、Z世代の商業施設における来館動機や情報接点、体験上の摩擦点を明らかにし、特にポップアップストアがZ世代の行動に与える影響について検証が行われています。

この記事の目次

1 調査結果サマリー
2 「月1回以上」の来館が7割超、"短時間・目的達成型"が主流
3 "推し×コラボ×期間限定"が来館の決定打に
4 "同伴×共有志向"が示す回遊ポテンシャル
5 「快適さ」と「共感」がZ世代の評価軸
6 解説コメント
- 6.1 株式会社カウンターワークス　CEO室　中原祐一郎氏
- 6.2 早稲田大学ショッピングモール研究会　代表　坂部匠音氏
7 調査概要
8 カウンターワークスについて

調査結果サマリー

Z世代の来館頻度は月1回以上が7割を超え、平均滞在時間は「1時間前後」が最多となり、"短時間・目的達成型"の効率的な行動パターンが主流となっていることがわかりました。
来館目的としては、従来の買い物や飲食を超えて「ポップアップストア」の存在が長時間滞在を促す重要な要素となっていることが明らかになっています。
来館意欲を高める要因として「施設の雰囲気や内装が心地よい」（42.0％）が最多となりました。また、「推しイベント・コラボ企画」、「期間限定のイベント・ショップ」がともに2割を占め、"今しか体験できない特別感"が来館動機に大きく寄与しているようです。
同伴での来館が全体の6割を超え、SNS投稿経験も一定数（41.0％）存在することから、誰かと共有したくなる体験が来館行動を後押ししていることが明らかになっています。
施設に増えてほしい機能としては「休憩・作業スペース」、「モバイルオーダー」のほか、「SNS映えスポット」も挙げられ、快適性と共感性を重視する傾向が見られます。

「月1回以上」の来館が7割超、"短時間・目的達成型"が主流

調査によると、Z世代の商業施設への来館頻度は「月2〜3回」が25.8％と最も高い割合を示しています。また、「月1回以上」（"週1回以上"、"月2〜3回"、"月1回程度"の合計）となると74.1％にも達することが明らかになっています。平均滞在時間については「1時間前後」が44.5％で最多となっており、Z世代は"長時間滞在よりも効率"を重視し、必要な目的を短時間で済ませる行動傾向が顕著に表れているとのことです。

また、Z世代がよく利用する商業施設のタイプとしては、「郊外型ショッピングモール」や「駅直結の商業施設」が中心となっており、日常の買い物から休日のレジャーまで、様々なシーンに応じて施設を使い分ける傾向が見られることがわかりました。

さらに施設種別ごとの平均滞在時間を分析すると、「商店街」では短時間利用（"30分未満"、"1時間前後"の合計）が58.5％と最も高く、"サクッと立ち寄る"利用スタイルが中心となっていることが判明しています。一方、「アウトレットモール」では"2〜3時間"の滞在が相対的に高い割合を示しており、滞在を楽しむ目的地型の利用傾向が見られるとのことです。

来館目的別に平均滞在時間を分析した結果、「ポップアップストア・イベント・催事」を目的とした来館は長時間滞在の割合が全体平均と比較しても相対的に高く（"2〜3時間"、"半日以上"の合計）、体験を軸に"ゆっくり過ごす"傾向が明確に表れていることが示されています。一方、「買い物」は目的の幅が広いため、短時間での指名買いと長時間の買い回りの双方が混在する"二極型"の滞在パターンを示していることが明らかになりました。

"推し×コラボ×期間限定"が来館の決定打に

調査では来館意欲を高める要素についても質問が行われました。その結果、「施設の雰囲気や内装が心地よい」（42.0％）が最も高い割合を示し、「友人や恋人と一緒に楽しめる」（33.8％）、「ここだけで購入できる商品・ブランドがある」（30.8％）がTOP3となりました。加えて、「推しイベントやコラボ企画がある」（21.0％）、「期間限定で開催されるイベント・ショップがある」（20.8％）といった、"推し・コラボ・期間限定"の要素も2割前後を占める重要な来館動機となっていることが報告されています。

また、「限定イベントやポップアップがあれば、普段より遠い商業施設にも行くと思う」という質問に対しては、約7割（"そう思う"と"やや思う"の合計）が肯定的な回答を示しており、Z世代にとってポップアップイベントが"行動距離を伸ばす誘因"としても機能していることが明らかになっています。

"同伴×共有志向"が示す回遊ポテンシャル

商業施設への来館スタイルについては、「友人」や「恋人」、「家族」など誰かと一緒に訪れる同伴来館が66.3％を占め、単独来館の33.5％を大きく上回っていることが判明しました。

また、来館後のSNS投稿状況については「投稿経験あり（"よくある"、"たまにある"の合計）」の層が41.0％と一定の規模で存在していることが報告されています。これは、商業施設での体験が共有したくなる価値を生み出していることを示唆しています。このような傾向は、ポップアップイベントなどの企画と連動させることで、同伴来館の促進や館内回遊の設計に活用できる可能性があることを示しているとのことです。

「快適さ」と「共感」がZ世代の評価軸

調査では商業施設に増えてほしい機能・サービスについても質問が行われました。その結果、「休憩・作業スペース」（54.0％）が最も高い割合を示し、次いで「キャッシュレス対応」（43.5％）、「スマホで注文・受取ができるモバイルオーダー機能」（30.8％）が続いたことがわかります。また、「SNS映えスポット」（16.0％）や「服のリペア・リユースなどサステナブルな取り組み」（14.8％）なども一定の支持を集めており、利便性だけでなく価値観や自己表現への共感を重視する傾向も明らかになりました。Z世代は効率性と快適性を基本としながらも、自分らしさを感じられる体験を求めていることがうかがえます。

解説コメント

株式会社カウンターワークス　CEO室　中原祐一郎氏

Z世代の来館行動を理解する上で、UGC（ユーザー生成コンテンツ）は体験の中心的な推進力となっています。Z世代にとって"訪れること"と"発信すること"は地続きであり、SNS投稿を通じて体験が拡張し、他者の投稿が次の来館動機を生み出す循環が形成されています。特にポップアップやコラボイベントは、このUGCの起点として機能し、短時間・目的達成型の行動の中でも「共有したくなる瞬間」を創出していると同氏は述べています。

施設運営者に求められるのは、UGCが自然に生まれる環境設計、撮影したくなる空間デザインやタグづけしやすい導線、そしてスマートフォンを軸に行動する世代が快適に滞在できる充電・休憩スペースなどの基盤整備だとしています。

Z世代にとってリアルな場は、デジタル上で意味づけられる"発信可能な場所"です。UGCを前提とした空間づくりこそが、リアルとデジタルを融合させ、次世代の施設価値を高める鍵になると中原氏は考えを述べています。

早稲田大学ショッピングモール研究会　代表　坂部匠音氏

調査結果から、Z世代は短時間の滞在が主流になっているなど、目的達成を重視した「効率重視」の行動志向を示していることがわかると坂部氏は指摘しています。その反面、来館意欲を高める要素として「体験」や「共感」につながるものが上位を占めており、商業施設へ足を運ぶ理由としては利便性よりもむしろ「体験価値」に重きをおいていることが読み取れるとのことです。一見相反する結果にも思えますが、Z世代が"非日常"の「体験価値」に惹かれるのは、効率を重視した日常に疲れていることの裏返しなのかもしれないと同氏は分析しています。

とりわけ、ポップアップストア・イベント・催事といった"今しかない"体験を目的に来館した人は、他の目的と比べても滞在時間が長い傾向にあることが報告されています。"非日常"を求めて来館したなら、買い物や飲食などのほかの消費行動も含めて「体験価値」として捉えて楽しもう、といった消費者心理が想定できるとのことです。このような調査結果から、Z世代にとって商業施設は単なる消費の場というよりも、むしろ消費も含めた「体験の場」になっていると坂部氏は述べています。

他方、この1年間で商業施設に「一度も行っていない」層が2割近くにのぼることも、直視しなければならない現実だと指摘しています。Z世代は、消費の選択肢が"無限"にあるといえるほど、お金や時間の使い方が多様化しています。そんな中で、どうしたら商業施設を選んでもらえるのか。イベントやポップアップなど"ここでしか得られない"「体験価値」を提供していくこと、そして何より商業施設"自体"の魅力をもっと伝えていくことが、今後はより重要になっていくのではないかと坂部氏は考えを述べています。