
株式会社博報堂(本社:東京都港区、代表取締役社長:名倉健司)は、近年注目が高まっている「訪日外国人のインバウンド消費」に焦点を当て、インバウンドビジネスの機会を捉え企業の売上拡大に貢献することを目的として「博報堂クロスバウンド・ビジネス・ラボ」を設立しました。
同ラボでは、訪日外客数の多い5カ国(中国・韓国・アメリカ・タイ・インド)を対象に「訪日外国人のモノ消費」に関する調査を実施しています。この調査結果から各国別のインバウンド戦略に役立つ購買実態や、インバウンド消費を各国国内での消費(アウトバウンド)へと繋げるためのヒントが明らかになっています。

この記事の目次
調査結果サマリー
日本旅行中に購入したもの:国別に異なる購買傾向
5カ国全体の調査結果では、日本旅行中に購入したものとして「お菓子」(49.8%)、「化粧品・美容用品」(46.2%)、「食品」(42.9%)が上位を占め、約半数の訪日客がこれらの商品を購入していることが明らかになっています。続いて「グッズ(アイドル・アニメ・キャラクター等)」(30.8%)、「お酒」(30.6%)となっています。
国別に見ると、それぞれ特徴的な購買傾向が確認できました。中国からの訪日客は「化粧品・美容用品」(44.6%)の購入率が高く、続いて「グッズ」(37.2%)、「洋服」(32.6%)となっています。グッズや洋服は全体平均と比較しても高い一方、お菓子(29.5%)の購入率は他国と比較して低い結果となっています。
韓国からの訪日客は「お菓子」(66.7%)、「食品」(54.3%)、「化粧品・美容用品」(53.4%)の購入率が高く、「お酒」(41.9%)、「薬」(36.8%)が続きます。これらはいずれも全体平均を上回っており、韓国訪日客の特性を示しています。一方で、他国では上位にある「洋服」(10.9%)は全体平均と比較して低い結果でした。
アメリカからの訪日客は「洋服」(48.4%)、「食品」(45.7%)、「お菓子」(43.0%)が上位を占めています。洋服と合わせて「パーソナルケア商品」(29.5%)、「伝統工芸品」(29.1%)が全体平均よりも高い傾向が見られました。一方で「薬」(12.0%)や「化粧品・美容用品」(31.4%)は低い傾向にあります。
タイからの訪日客は「お菓子」(59.7%)、「洋服」(48.1%)、「化粧品・美容用品」(37.2%)が上位かつ全体平均よりも高くなっています。
インドからの訪日客は「洋服」(55.0%)、「食品」(51.2%)、「お菓子」(49.6%)が上位を占めています。洋服と共に、「ジュエリー・アクセサリー」(41.1%)、「伝統工芸品」(35.3%)、「パーソナルケア商品」(32.9%)が全体平均よりも突出して高く、特徴的な購買行動が見られました。
この結果から、各国のインバウンド顧客の購買商品カテゴリーには明確な違いがあり、効果的なマーケティング戦略を立てるためにはその特性を十分に理解することが重要であることが示されています。
商品購入決定のタイミング:3つの商品タイプの存在
調査結果によると、商品カテゴリーによって購入を決定するタイミングに違いがあることが分かりました。大きく分けて以下の3つのタイプに分類できます。
1つ目は「ブランド指名型商品」です。「化粧品・美容用品」や「薬」は、「旅行する前から具体的に買うブランド・商品を決めていた」という回答が最も多く(化粧品・美容用品48.1%、薬40.0%)、旅行前から購入する商品・ブランドを確定しているインバウンド顧客が多いことがわかりました。これらの商品カテゴリーでは、旅行前の情報接触が重要であり、訪日前からピンポイントで購買商品を決定している傾向があります。
2つ目は「カテゴリー指名型商品」です。「家電・電子製品」、「洋服」、「ジュエリー・アクセサリー」では、「旅行する前からこのカテゴリーの物は買うとは決めていた(ブランド・商品は決めていなかった)」という回答が高い割合を示しています(家電・電子製品35.9%、洋服37.6%、ジュエリー・アクセサリー35.6%)。これらは旅行前に購入カテゴリーを決めて訪日するものの、具体的な商品やブランドは現地で決定する傾向があります。特に洋服やジュエリー・アクセサリーは「旅行の途中(店頭で見つける前)で買うと決めた」という回答も多く(洋服33.0%、ジュエリー・アクセサリー34.3%)、旅行中の情報接触も重要であることがうかがえます。
3つ目は「出会い型商品」です。「食品」や「お菓子」は旅行前から検討する顧客もいますが、「店頭で見て、その場で購入を決めた」という回答が最も多い結果となりました(食品33.3%、お菓子36.3%)。これらの商品カテゴリーでは、旅行中のコミュニケーション活動が旅行前と同等に重要であると考えられます。

これらの「ブランド指名型商品」「カテゴリー指名型商品」「出会い型商品」という特性を理解し、それぞれに合わせたコミュニケーション設計を行うことが、インバウンド消費を効果的に取り込むために重要であると考えられます。
次回来日時に購入したいもの:新たな商機
今回の調査では、今回の訪日では購入しなかったが次回来日時に購入したいと考えている商品についても調査が行われました。5カ国全体では、「ジュエリー・アクセサリー」(18.1%)、「バッグ」(17.5%)、「伝統工芸品」(16.4%)、「健康食品」(16.1%)、「雑貨」(14.2%)などが高い関心を集めており、次回訪日時の新たな商機が期待できる結果となっています。
国別に見ると、中国からの訪日客は「伝統工芸品」(19.4%)、「ジュエリー・アクセサリー」(19.0%)、「家電・電子製品」(17.4%)に関心を示しています。韓国からの訪日客は「バッグ」(17.4%)、「ジュエリー・アクセサリー」(17.4%)、「健康食品」(15.9%)を希望しています。アメリカからの訪日客は「インテリア家具」(23.3%)、「バッグ」(22.1%)、「ヘルスケア・フィットネス用品」(19.8%)に、タイからの訪日客は「バッグ」(21.7%)、「家電・電子製品」(19.4%)、「伝統工芸品」(19.0%)に、インドからの訪日客は「スポーツアウトドア用品」(24.0%)、「インテリア家具」(23.6%)、「ヘルスケア・フィットネス用品」(22.5%)に高い関心を示しています。
これらの結果から、前回日本で購入したものとは異なる新たなカテゴリーにも関心が高まっていることがわかり、次回訪日時のマーケティング戦略に活かせる重要な知見となっています。

帰国後も継続購入したい商品とその理由
インバウンド消費をアウトバウンドへと繋げる視点から、帰国後も継続購入したいと考える商品についても調査が行われました。5カ国全体では、「お菓子」(35.5%)、「化粧品・美容用品」(30.1%)、「食品」(27.9%)、「グッズ(アイドル・アニメ・キャラクター等)」(22.6%)、「お酒」(21.4%)が上位を占めました。この結果は、日本で購入して終わりではなく、訪日客の自国帰国後の継続的な購買につながる大きな機会が存在することを示しています。
国別にも特徴があり、中国からの訪日客は「化粧品・美容用品」(39.1%)、「グッズ」(29.1%)、「洋服」(24.8%)、韓国からの訪日客は「お菓子」(46.5%)、「食品」(31.4%)、「お酒」(27.1%)、アメリカからの訪日客は「洋服」(36.8%)、「お菓子」(35.7%)、「食品」(34.9%)、タイからの訪日客は「お菓子」(53.5%)、「洋服」(38.0%)、「化粧品・美容用品」(31.4%)、インドからの訪日客は「洋服」(46.9%)、「食品」(39.9%)、「化粧品・美容用品」(36.4%)を継続購入したいと考えています。
継続購入したい理由については、「化粧品・美容用品」「お菓子」「食品」では品質およびコストパフォーマンスの高さが評価されています。特に「化粧品・美容用品」ではブランドへの信頼度が、「お菓子」「食品」では周囲の反応の良さが継続購入の理由として挙げられています。


調査概要
本調査は「5カ国インバウンド顧客購買意識調査」として、以下の内容で実施されました。
・調査手法:インターネットリサーチ
・調査地域:5カ国(中国・韓国・アメリカ・タイ・インド)
・実施期間:
中国:2025年3/14-3/24および6/25-6/30
韓国:2025年3/14-3/24
アメリカ:2025年3/14-3/24
タイ:2025年3/17-3/25
インド:2025年3/18-3/26
・調査対象:男女20歳以上かつ1年以内に日本に旅行経験があると回答した人
・回答数:各国258人(性年齢での割り付けなし)
・ウェイトバック方法:全体(5カ国)は2024年度訪日客国別人口(JNTO)を用いてインバウンド顧客数に合わせてウェイトバック
・調査主体:博報堂クロスバウンド・ビジネス・ラボ
・調査委託先:QO株式会社 ※中国での調査実施は、涉外調査許可を保有する調査パネルを活用
出典元: 株式会社博報堂 プレスリリース