Z世代のファッション消費行動調査:「ナラティブ消費」で服を選ぶ新世代の実態が明らかに

「季節の変化に合わせて?」「セールだったから?」——いいえ、Z世代は異なる理由で服を選んでいるようです。株式会社ザ・ゴールが、全国の20〜50代の500人を対象としたファッション購買に関する意識調査を実施したことを発表しました。その結果によると、Z世代の服選びは従来とは大きく異なる基準にシフトしている実態が明らかになっています。

この調査では、世代別のファッション購買動機や重視点などを詳細に分析し、季節感や価格ではない「新しい選び方」を浮き彫りにしています。Z世代向けのマーケティングや商品強化を検討している企業にとって、貴重な洞察となりそうです。

Z世代は「ハートで」服を買う

同社の調査ではまず「ファッション用品を買いたくなるきっかけは?」という設問で、各世代のファッション購買動機を比較しています。下記のデータでは全世代の上位5項目と、30~50代と比較してZ世代(20代)で特に高い回答5項目が示されています。

全世代のファッション購買動機(複数回答)
<data1-1>全世代のファッション購買動機(複数回答)
Z世代で高いファッション購買動機(複数回答)
<data1-2>Z世代で高いファッション購買動機(複数回答)

この結果から見えてくるのは、Z世代が「自分へのご褒美」「お金が手に入った」「インフルエンサーの投稿」「ストレス解消」といった内発的な動機でファッションを購入する傾向が強い点です。一方で、「服が古くなった」「季節に合わせて」「セールや割引」といった外発的な動機は他世代より低い傾向にあります。

すでにクローゼットが充実している30~50代が外的な必要性に応じて購入する傾向があるのに対し、Z世代はファッションを「自分らしさの表現」や「感情の解放」として捉え、より内面的な欲求に基づいて購買行動を行っていることが読み取れます。

Z世代の衝動買いは「スマホ」から

次に「ファッション用品をどれくらい衝動買いしたか?」という設問から、購買場所ごとの衝動買い率が分析されています。下記のデータでは「オフライン(ショッピングモール等)」と「オンライン(通販サイト等)」に分類し、Z世代(20代)と30~50代の衝動買い率が比較されています。

ファッション衝動買い率(5段階評価Top2)
<data2>ファッション衝動買い率 (5段階評価Top2)

先に見たようにZ世代は感情で購買する傾向が強いためか、衝動買い率が30~50代より高くなっています。現物と一期一会のオフラインでの衝動買いが強い傾向は見られますが、注目すべきはZ世代のオンラインでの衝動買いが18.3%とオフラインに匹敵する高さを示している点です。

SNSやECサイトに日常的に親しんでいるZ世代にとって、オンラインでの衝動買いはまさに「感情の即反映」と言えるでしょう。時間や場所に縛られない購買環境が、感情的な即決をより自然に後押ししている状況がうかがえます。

Z世代が「褒められたい人」は誰?

ではZ世代は、自分の気持ちに正直で、周囲の目は気にしないのでしょうか?同社の調査では「ファッションで意識する存在は?」という設問から、各世代の意識対象を明らかにしています。下記のデータでは、年代ごとの意識先がランキング形式で示されています。

ファッション意識対象(複数回答)
<data3>ファッション意識対象 (複数回答)

この結果を見ると、年代が上がるにつれて「街中ですれ違う他人」のランキングが上昇し、40代以上では1位になっています。一方でZ世代の「他人」へのランキングは低く、20代前半では「推し」が堂々の3位という結果が出ています。

30〜50代が不特定多数の目を意識した「装い」を選ぶ傾向があるのに対し、Z世代は「友人」「恋人」「推し」など、「価値観でつながる誰か」との関係性の中で、ファッションを「自分の世界を共有する手段」として捉えていることが見て取れます。

Z世代が愛する「ブランド物語」

最後に「ファッションで重視することは?」という設問で、各世代のファッション重視点が比較されています。下記のデータでは全世代の上位5項目と、30~50代と比較してZ世代(20代)で特に高い回答5項目が示されています。

全世代のファッション重視点(複数回答)
<data4-1>全世代のファッション重視点(複数回答)
Z世代で高いファッション重視点(複数回答)
<data4-2>Z世代で高いファッション重視点(複数回答)

全世代では「価格・コスパ」「サイズ」「着回し」「素材」などの商品機能に関する項目が上位を占める一方、Z世代では「ブランドの信頼感・限定感・人気・世界観」といったブランド関連項目が高い傾向にあることがわかります。

30~50代が実用性を重視する傾向があるのに対し、Z世代はブランドが語る物語や背景に強く共感し、そこに価値を見出していることがうかがえます。Z世代にとってファッションとは、単に「何を着るか」ではなく、「どんなストーリーに自分を重ねるか」を選ぶ行為なのです。

まとめ Z世代は「ナラティブ消費」で服を買う

株式会社ザ・ゴールの調査によると、Z世代のファッション購買行動を詳しく分析していくと、一貫して「自分らしさ」と「意味あるつながり」を求める姿勢が浮かび上がってきます。購買のきっかけが内発的な感情に根ざしていること、意識の対象が価値観を共有する身近な存在に向けられていることなど、これらはすべてZ世代が「服そのもの」ではなく、「ナラティブ=その服を通じ、自分の目線で何を語れるか」に重きを置いていることを示しています。

また、Z世代にとってファッションは単なる装いではなく、「自分の世界観」や「感情」「関係性」を編み込むためのメディアであり、選択の基準は機能性や価格よりも「ブランドが語る物語に共感できるかどうか」が重要になります。つまりZ世代が服を購入するとき、彼らは"モノ"を手にしているのではなく"物語"に参加しているのです。これはまさに「ナラティブ消費」という概念そのものです。

これからのブランドに求められるのは、語られるストーリーを押しつけることではなく、生活者が自ら語りたくなる「余白ある世界観」を提示し、共に物語を紡いでいける関係を構築することではないでしょうか。

調査概要

調査主体 :株式会社ザ・ゴール

調査委託先 :株式会社 電通マクロミルインサイト

調査期間 :2025年5月

調査手法:インターネット調査

調査対象 :全国20-59歳男女

有効回答数 :500サンプル

出典元: 株式会社ザ・ゴール プレスリリース

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