博報堂生活総研調査:4割以上が「授業参観」「就職面接」などのオンライン化を許容、デジタル化による生活意識の変化も明らかに

博報堂生活総合研究所が、全国の15~69歳男女を対象に「生活DX定点」と題した暮らし全般のデジタル化度合いを調査する第2回調査を2025年3月に実施したことが報告されています。調査結果からは、オンラインでも構わないと考える生活シチュエーションの拡大や、デジタル化による生活者の内面変化、様々な分野でデジタル行動比率が微増傾向にあることなどが明らかになっています。

生活DXとは、様々なツールやサービスを活用して生活の各分野をデジタル化していくことを指しています。この調査では、特に「授業参観」「ご祝儀の受け渡し」「退職願」「就職面接」などでオンライン化を許容する傾向が顕著に表れているとのことです。

オンラインでもかまわない生活シチュエーションの広がり

オンラインでもかまわない生活のシチュエーション

「授業参観」「ご祝儀の受け渡し」「退職願」「就職面接」では4割以上が「オンラインでもかまわない」と回答しているとのことです。

特に「就職の面接」などでは、10~20代と全体との意識差が大きく表れていることが特徴的です。

今回の調査では、様々な生活シーンにおけるオンライン化の許容度について興味深い結果が得られたようです。「授業参観」「ご祝儀の受け渡し」「退職届の提出(有職者ベース)」「就職などの面接」については、全体の4割以上の回答者が「オンラインでもかまわない」と回答しています。これは、従来対面で行われることが当然とされていた場面でも、デジタル化に対する抵抗感が薄れつつあることを示唆しているといえます。

特に注目すべきは若年層の傾向です。10~20代の回答者では「授業参観」「就職などの面接」で5割を超え、「ご祝儀の受け渡し」「退職願の提出(有職者ベース)」もほぼ5割に達しているとのことです。これは、デジタルネイティブ世代のオンライン化への高い受容性を表しているといえるでしょう。

また、10~20代の特徴として、「就職などの面接」では全体より12.2ポイント高く、「仕事上の謝罪(有職者ベース)」では9.9ポイント高く、「学校の授業」では9.4ポイント高いなど、全体と比較して多くの項目でオンライン化への抵抗感が低い様子がうかがえます。これらの数値からは、若年層を中心にオンライン化が進む可能性が高いことが示唆されています。

一方で、「結婚のプロポーズ」「デート」など恋愛に関連するシチュエーションについては、オンラインでもかまわないと考える人は全世代を通じてまだ少数派となっているようです。感情的な繋がりや特別な体験を重視する場面では、依然として対面での交流が重視される傾向にあることがわかります。

デジタル化による内面の変化

デジタル化による内面の変化

「情報感度が上がった」「趣味や興味が増えた」などの恩恵がある一方、「ストレスが増えた」と感じる人も多く、自己肯定感や人間関係、健康については評価が二分される結果となっているようです。

デジタル化が人々の内面にもたらす変化についても興味深い結果が示されています。「情報の感度が上がった」「新しい趣味や興味が増えた」「時間の使い方が上手くなった」と回答した人がいずれも3割を超えており、生活の中でポジティブな恩恵やスキル向上を実感している人が多いことが明らかになっています。デジタルツールやサービスの活用によって、情報収集の幅が広がり、新たな趣味や関心事を見つけやすくなっていることが背景にあると考えられます。

しかし一方で、デジタル化の影響は人によって大きく異なる側面も浮かび上がっています。「自己肯定感が高まった/低くなった」「人間関係が広がった/狭くなった」といった項目の差分は3ポイント以下と僅差であり、デジタル化による影響の現れ方が個人によって異なっていることがわかります。これは、デジタルツールの使い方や個人の特性によって、同じデジタル化でも異なる影響を受けることを示唆しています。

また、「ストレスが増えた」という回答は「ストレスが減った」という回答を5.8ポイント上回っており、デジタル化がもたらす生活変化に負担を感じている側面も無視できないようです。常に接続された状態でいることによる疲労感や、新しいデジタルツールへの適応ストレスなどが影響していると考えられます。

デジタル化による内面の変化グラフ

このような調査結果からは、デジタル化が単純に良い・悪いという二元論で捉えられるものではなく、様々な側面で多様な影響をもたらしていることが示唆されています。情報感度の向上や趣味の拡大といったポジティブな面がある一方で、ストレスの増加や人間関係への複雑な影響など、社会全体として向き合うべき課題も明らかになっているといえます。

第2回「生活DX定点」調査概要

調査目的:生活のあらゆる分野をデジタル化するツールやサービスが登場する中、各分野のデジタル/アナログ比率は現状でどの程度か、デジタル化でどのような意識変化があったかなどを回答してもらうものです。

聴取している生活の分野について:生活全体の網羅的な聴取を目指し、生活総研の時系列調査「生活定点」で聴取している分野をベースにしつつ、近年デジタル化が進んでいる分野を加え設定しています。

調査地域:全国

調査対象:15~69歳男女

対象者割付:全国8エリアの人口構成比 ※エリア×性年代の人口構成比にあわせて割付(国勢調査2020)

調査人数:合計5,000人

調査方法:インターネット調査

調査時期:2025年3月3日~3月5日(第1回:2024年3月22日~3月25日)

調査機関:QO株式会社

今回の調査は、生活のデジタル化度合いを定点観測するもので、前回2024年3月に続く第2回目となっています。調査対象は全国の15~69歳の男女5,000人で、国勢調査2020に基づき全国8エリアの人口構成比に合わせて回答者を割り付けているとのことです。これにより、日本全体の傾向を適切に反映した結果が得られていると考えられます。

調査で聴取している生活分野は、博報堂生活総合研究所の時系列調査「生活定点」をベースにしつつ、近年デジタル化が進んでいる分野を加えて設定されています。これにより、生活全般にわたるデジタル化の実態を網羅的に把握することを目指しているようです。

この調査結果からは、日本社会におけるデジタル化の進展状況や、それに伴う人々の意識・行動変化が明らかになっています。特に注目すべきは、従来対面でのやり取りが当然と考えられていた場面でもオンライン化が許容される傾向が強まっていることや、デジタル化による恩恵とストレスの両面が存在することです。

また、世代間の意識差も明確に表れており、若年層を中心にオンライン化への抵抗感が低くなっていることから、今後さらにデジタル化が進展する可能性が示唆されています。一方で、恋愛関連のシチュエーションでは依然として対面が重視される傾向にあり、生活の全てがデジタル化されるわけではないことも示されています。

生活のデジタル化が加速する中、このような定点観測調査は社会変化を捉える上で重要な意義を持っています。今後も継続的に調査が行われることで、日本社会のデジタル化の進展と人々の意識変化を長期的に追跡することが可能になるでしょう。

なお、博報堂生活総合研究所によれば、詳細な調査内容についてはPDFで閲覧可能とのことです。生活のデジタル化に関心のある方や、ビジネスへの活用を検討している方は、詳細資料を参照されることをお勧めします。

出典元:株式会社博報堂 プレスリリース

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