
公益財団法人流通経済研究所(東京都千代田区、代表:青山繁弘氏)が、製配販の共同研究プロジェクト「ISMショッパー研究プロジェクト」の一環として継続的に実施している「ショッパーマインド定点調査」の2025年4月調査の結果を発表しました。調査ではショッパー暮らし向き指数の大幅な低下と、米の価格高騰による食生活の変化が明らかになっています。
この記事の目次
調査の概要
このショッパーマインド定点調査は、流通経済研究所が2019年から3ヶ月ごとに消費者の購買動向や生活意識を把握するために実施しているものです。今回公表された調査結果では、「ショッパー暮らし向きD.I.」と「米の価格高騰が食生活や買い物に与えた影響」について特に注目すべき変化が見られています。
調査名称 |
ショッパーマインド定点調査(2025年4月調査) |
調査期間 |
2025年4月25日~4月29日 |
調査対象 |
20代から70代までの男女(10歳刻み各年代・性別200人ずつ) |
サンプル数 |
2,400人 |
※調査協力:株式会社マーケティングアプリケーションズ
調査結果の主なポイント
ショッパー暮らし向きD.I.が過去最低水準に
「ショッパー暮らし向きD.I.」とは、消費者の暮らし向きについて3か月前と比較して5段階で評価し、「よくなった」「ややよくなった」と回答した割合から「やや悪くなった」「悪くなった」と回答した割合を差し引いて算出される指標です。
今回の調査では、このD.I.値が-35.2という数値を記録しました。これは2023年1月から2025年1月までの間、-20から-10.3の間で推移していた数値から大幅に悪化したことを示しています。
背景には、米をはじめとする食料品の相次ぐ値上げがある一方で、賃金の上昇が追いついていないという経済状況があります。さらに、米国の関税政策などによる先行きの不透明感も影響し、消費者の心理的な不安が強まっていると考えられます。消費と購買を活性化させるための何らかの対策が必要な状況となっています。
米価格高騰が食生活と買い物行動に影響
調査によりますと、米の価格高騰への対応として、全体の67.8%が食生活や買い物行動に何らかの変化があったと回答しています。これは消費者の約7割が米価格の上昇に対して具体的な行動変容を起こしていることを示しています。

米価格高騰による食生活の具体的変化
「自宅で食べる機会が増えた」食品については、「うどん・そば」が22.2%で最も高い割合を示しました。続いて「パン」が21.2%、「パスタ」が17.4%となっています。これらの結果から、消費者が米の代替として主に麺類やパンを選択していることが明らかになりました。このデータからは、消費者が家計防衛のために食生活を変化させている様子が見て取れます。

米価格高騰による買い物行動の変化
米の価格高騰は消費者の買い物行動にも大きな影響を与えています。以下のグラフは、具体的にどのような買い物行動の変化が生じたかを示しています。

ISM・ショッパー研究プロジェクトについて
「ISM・ショッパー研究プロジェクト」は、製造業者(メーカー)、卸売業者、小売業者が参加するSMD共同研究機構の中核として、消費者の購買行動に関する基礎的な調査を継続的に実施している研究プロジェクトです。主に購買行動調査(ISM基礎指標調査)と買物意識調査(ショッパー・マインド定点調査)の2つの領域を中心に研究を進めています。
このプロジェクトでは、消費者の行動と意識を深く理解し、それに基づいた効果的な売場づくり(ISM)の研究と消費者対応の研究を行っています。得られた研究成果は、消費者の購買行動パターンを踏まえたマーチャンダイジング(MD)や販売促進の提案、消費者の変化に対応したMDや販促の提案、各商品カテゴリーの特性を考慮したMDや販促の提案、さらには業態の特徴を活かしたMDや販促の提案など、多岐にわたる実務に活用することができます。
なお、「製配販」とは、製(メーカー)、配(卸売業者)、販(小売業者)の3つの業態を指す言葉です。特に消費財の流通において、この3者が連携して物流やサプライチェーンの改善を図ることを目的としています。
「ISM・ショッパー研究プロジェクト」の詳細については、流通経済研究所の公式サイトでご確認いただけます。
公益財団法人 流通経済研究所について

公益財団法人流通経済研究所は、流通・マーケティング分野を専門とする研究機関(シンクタンク)です。設立以来、流通・マーケティング分野において社会に広く貢献することを使命として、さまざまな研究調査活動を展開しています。消費者行動の分析や流通構造の研究など、幅広い領域で調査研究を行っています。
出典元: 公益財団法人流通経済研究所