
欧州最大級の経営戦略コンサルティングファームであるローランド・ベルガーが、消費者理解における7つの常識を検証し、現在起こっている現象と今後起きうる変化、そして企業に求められる戦略的アクションまでを詳細に分析したレポート「知られざる消費者の新たな真実」を発表しました。
このレポートでは、情報優位となった消費者の購買行動の変化と、情報過多による疲弊という二面性が明らかになっています。また、従来のマーケティング手法の課題も浮き彫りになり、新たな時代に即した「超速マーケティング」の必要性が示されています。

この記事の目次
消費者の情報優位が生み出す新たな現実
インターネットの普及により、現代の消費者はあらゆる情報を瞬時に入手できるようになりました。これにより、消費者と企業の情報格差は逆転し、消費者が「情報優位」の立場に立つようになっています。ローランド・ベルガーが実施した分析によると、この情報優位性は消費者行動に二つの大きな影響をもたらしていることが判明しました。
一つ目は、消費者が情報を武器に購買行動そのものを変化させている点です。より多くの情報を基に賢明な選択をするようになった消費者は、企業のマーケティング施策に対してより批判的な目を向けるようになっています。
二つ目は、情報過多による疲弊です。あふれる情報の中で選択を迫られる消費者は、心理的負担を感じ、情報や刺激を和らげるニーズが高まっています。この「情報からの逃避」という傾向も、現代消費社会の重要な特徴となっています。
従来のマーケティング手法における課題
このような消費者の変化に対して、従来のマーケティング手法では対応が難しくなっていることも明らかになりました。特に「セグメンテーション」や「ペルソナ」といった従来型の消費者分析手法では、多様化・複雑化する消費者の実像を正確に捉えることが困難になっています。
さらに懸念すべき点として、企業の販促やマーケティング活動の効果が低減しているだけでなく、場合によっては逆効果を生むケースも報告されています。このことは、企業が新たなマーケティングアプローチを模索する必要性を示しています。
ローランド・ベルガーのパートナーで、食産業・小売り・流通業界に精通する松本渉氏は、この状況について次のように述べています。
「セグメンテーションやペルソナは、実は消費者の実像を捉えきれません。特定のターゲット像を作り上げることには限界があり、『Try&Error』を高速で回し、消費者にあえて『受け身』で対応する『超速マーケティング』を身に着けるべき時代に入りました。その時、動的かつ多面相化する消費者に"超速"で対応していくためには、各部署でやっていては非効率です。経営トップ主導の一元的・機動的な組織の下、インプットとアウトプットを"超速"で回すとができる組織への変革が求められています。」
消費者の7つの真実と将来の変化予測
ローランド・ベルガーは、消費者の未来を解明するため、7つの重要な真実と、それに基づく将来の変化予測を提示しています。これらの洞察は、企業が今後のマーケティング戦略を構築する上で重要な指針となるでしょう。
1.消費者の無責任な要求が企業を疲弊させる
情報優位に立った消費者は、企業に対してより高度で複雑な要求を突きつけるようになっています。この傾向は今後さらに強まり、企業側の対応負担が増していくことが予想されます。企業は効率的かつ効果的に消費者要求に応える仕組みを構築する必要があります。
2."偶然"と"共感"でモノを買う
計画的な購買行動が減少し、「思いがけない発見」や「感情的な共感」による購買が増加しています。このような予測不能な消費行動に対応するためには、従来の計画型マーケティングから柔軟で即応性の高いアプローチへの転換が求められています。
3.逃れられないルッキズムがコンプレックス消費を加速させる
外見至上主義(ルッキズム)の影響により、自身の外見や印象に関するコンプレックスを解消するための消費が拡大しています。美容、ファッション、健康関連などの分野ではこの傾向を踏まえた商品開発やマーケティングが重要になるでしょう。
4.日本の流行は中高年層が支配する
若者中心と思われがちな流行の発信や消費トレンドが、実は経済力を持つ中高年層によって大きく左右されるようになっています。人口構成の変化とともに、この傾向は今後さらに強まることが予想されます。
5.日用消費財ではミーハー化への逆戻りが加速する
一時期個性化・多様化していた日用消費財の選択が、情報過多による選択疲れから再び「みんなが使っているから」という理由での選択に回帰する傾向が見られます。ブランド力や口コミの重要性が再び高まっていくでしょう。
6.消費者のカネが"ホンモノ"の周辺ビジネスに集まる
本物志向の高まりにより、高品質な商品・サービスそのものだけでなく、その「周辺」に位置するビジネス(関連グッズ、体験サービス、コミュニティなど)にも消費者の支出が向かう傾向が強まっています。
7.かつてない五感の酷使を解消するニーズが高まる
デジタル環境での視覚・聴覚への過度な刺激により、五感のバランスを取り戻す商品・サービスへのニーズが高まっています。デジタルデトックスや感覚を研ぎ澄ます体験型サービスなどの需要増加が見込まれます。
これらの消費者の真実を理解し、従来の固定的なマーケティング手法から脱却することが、企業の今後の成長戦略において重要なポイントとなるでしょう。ローランド・ベルガーが提案する「超速マーケティング」は、常に変化する消費者に対して機動的に対応するための新たなアプローチといえます。
最新のレポート「知られざる消費者の新たな事実」の詳細については、ローランド・ベルガーの公式サイトからダウンロードすることができます。
ローランド・ベルガーについて
ローランド・ベルガーは、1967年に設立されたドイツのミュンヘンに本社を置く世界有数の経営戦略コンサルティングファームです。世界50以上の主要都市にてビジネスを展開しており、Entrepreneurship(起業家精神)、Excellence(卓越性)、Empathy(共感)という3つの価値観を原動力としています。
同社は現在および未来の重大な課題に対応するための最高水準の専門知識およびコンサルティングサービスを提供しています。今回発表されたレポートも、変化する消費者像を捉え、企業の戦略転換を支援するための重要な洞察となっています。
情報過多時代における消費者理解と適切なマーケティング戦略の構築は、あらゆる企業にとって避けて通れない課題です。ローランド・ベルガーが提唱する「超速マーケティング」の考え方は、こうした課題に対する一つの解決策として注目に値するでしょう。
出典元: ローランド・ベルガー プレスリリース