キユーピー株式会社は、20~59歳の単身者1,500人を対象にした最新の「えがおの食生活研究」調査結果を発表しています。この調査は1989年から続く「食生活総合調査」を発展させたもので、今回はコロナ禍を経て明らかになった単身者の食生活の変化に焦点を当てているとのことです。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2030年には「単独世帯(世帯人員が一人)」が全世帯の4割を超え、その後も増加が見込まれています。こうした社会変化を背景に、この調査では単身者の食生活満足度、調理習慣、手作りの概念、食事への意識、調理環境の変化など、様々な視点から分析が行われたことが報告されています。
※1 日本の世帯数の将来推計(全国推計)(令和6(2024)年推計)
【参考】 2022年度「えがおの食生活研究」(単身者)
<調査結果サマリー>
・食生活の満足度は、コロナ禍を経て「内食化」により上昇した状態が維持されており、特に20代男性で高い傾向が見られています。
・単身者の手作り料理において、男女比が逆転。30代男性が増加し、40代女性が減少しており、自炊への関心や社会変化が背景にあるとみられます。
・「手作りの概念」に変化があり、生鮮食材を使った手作りが減少。従来の「手作り」の概念にとらわれない傾向が強まっています。
・食事メニューに対して重視する点が「ひとつもない」人が増加しており、食生活や価値観の多様化とともに、食の位置付けの低下が示唆されています。
・食生活スタイルの変化や簡便化志向を反映し、「調理の概念」そのものが変化しており、「新たな調理スタイル」の兆しが見られます。
この記事の目次
■調査方法の概要
調査手法 :インターネット調査
調査期間 :2024年10月11日(金)~10月15日(火)
調査対象 :20~59歳男女/一人暮らし/日本在住
有効回収数:1,500人(回収ベース)
この調査では、年代別構成比を総務省「令和2年国勢調査」の「単独世帯」の構成比に基づいてサンプル割付を実施しているとのことです。
■調査結果の詳細
①20代男性で食生活満足度が高い。コロナ禍で定着した"内食化"が影響か
この調査によると、2011年の調査開始以降、食生活に「満足している」(「非常に満足している」と「まあ満足している」の合計)と回答した人の割合は、約4割で横ばい傾向にあるとのことです。年代別の分析では、20代の満足度が高い傾向が顕著であり、特に20代男性は44.7%が満足していると回答しています。男女を比較すると、男性の満足度が39.4%で、女性より3.9ポイント高い結果となっています。
この結果の背景には、コロナ禍を経て定着した「内食化」のトレンドがあると考えられています。自宅で手作りした食事をくつろぎながら楽しむというライフスタイルの変化や、食生活に対する意識の変化が反映されていると分析されています。特に若年層を中心に、自宅での食事の質や多様性が向上し、それが満足度の上昇につながっている可能性が高いと報告されています。
②手作りをする単身男性が増加、男女比が逆転。30代男性と40代女性に変化
2019年から2024年の5年間で、手作りをする単身者の男性比率が48.7%から52.6%に上昇し、女性を上回るという注目すべき変化が見られたことが報告されています。特に30代男性は7.9%から14.5%へと6.6ポイント増加しています。一方、40代女性は17.1%から12.7%へと4.4ポイント減少しました。
この変化の背景には、若い男性の自炊への積極的な取り組みや、女性の社会進出、生活スタイルの変化、食の外部化などが要因として考えられています。

③「手作りの概念」が変化。生鮮離れと規範意識からの解放
2019年から2024年にかけて、「手作りの概念」に大きな変化が見られていることが明らかになっています。最も顕著な変化は、生鮮食材を使った調理が58.7%から46.7%へと12ポイント減少したことです。さらに、女性の「手作りの概念」について、コロナ禍以前の2019年と比較して、より柔軟に捉える傾向が見て取れます。特に40代女性では、従来の「食事はなるべく手作りすべき」という規範意識からの変化がうかがえます。
これらの変化は、調理の簡便化や外部化の進行に加え、現代のライフスタイルの変化や時間効率を重視する傾向を反映していると考えられています。食生活に対する価値観そのものが多様化していることが、この結果からも読み取れます。

④食の位置付けが低下。4人に1人が重視点"なし"
食事メニューの重視点について尋ねた設問では、「手間がかからないこと」が23.2%でもっとも高く、次いで「短時間で作れること」「予算内におさまること」と続いています。特筆すべき変化として、重視点が「ひとつもない」と回答した割合が25.1%で、他の項目と比べて最も高い結果となっていることが報告されています。
この結果の背景には、食以外の教養・趣味・娯楽などに時間を割く傾向が強まっていることが考えられています。社会の変化や価値観の多様化に伴い、食の位置付けに対する考え方も大きく変化していることが、このデータから読み取れます。現代の単身者にとって、食事は生活の一部として効率的に済ませるべきものという認識が広がっている可能性があります。

⑤若年層でコンロ離れが加速。20代・30代女性で顕著
自宅にコンロ※2が設置してあるか尋ねた設問では、2022年と比べると、「コンロはない・設置していない」と回答した割合が全体的に増加傾向にあることが分かったと報告されています。性別で見ると、男性より女性の方が高く、特に20代男性および20~30代女性で顕著な増加が見られました。
コンロを設置しない理由についてインタビューしたところ、20代女性(会社員)からは「調理は自分には必要ではない」、20代男性(会社員)からは「電子レンジがあれば良いと思った」という回答が得られたとのことです。これらの回答からは、従来の調理スタイルからの脱却と、より簡便な食生活への志向が垣間見えます。
※2 ここでのコンロとは、ガスコンロ、IHコンロ、電気コンロなどを指します。

≪まとめ ―調査結果から見えてくるもの―≫
今回の「えがおの食生活研究」では、単身者の食生活における重要な変化が明らかになっています。中でも20代男性を中心とした食生活満足度の向上や、30代男性の手作りの増加は、従来の性別による役割意識に変化が生じていることを示しています。
また、「手作りの概念」が柔軟化し、生鮮食材を使わない調理でも手作りと捉える人が増加する傾向が見られました。一方で、食事メニューへの重視点が「ひとつもない」人の割合が最も高くなり、食の位置付けや優先度の変化が示唆されています。特に若年層の女性では、コンロを設置しないという選択が増えており、調理スタイルや価値観がより実用性や効率性を重視したものへと変化している傾向がうかがえます。
これらの調査結果は、現代社会における食生活の多様化と、価値観の変化を如実に表しています。単身世帯の増加や、ライフスタイルの変化に伴い、食に関する考え方や行動パターンも大きく変わりつつあることが分かります。
キユーピーは、この変化する食生活の実態を踏まえ、現代社会における食育を通して、食の大切さに向き合う機会を創出することを目指しているとのことです。今後も継続的に調査・研究を行い、消費者の多様なニーズに応える商品開発やサービス提供に生かしていく方針だと報告されています。
この調査結果は、食品メーカーだけでなく、飲食業界や小売業界、さらには住宅設計や家電メーカーにとっても貴重な示唆を与えるものといえるでしょう。単身者の食生活が多様化し、従来の常識が変わりつつある中で、各企業は新たな視点からの商品開発やサービス提供が求められています。
また、コロナ禍を経て定着した「内食化」のトレンドは、単身者の食生活満足度を向上させる一因となっており、この流れをさらに促進するような取り組みも今後重要になってくるでしょう。食の簡便化と質の両立、多様な食のスタイルに対応した商品やサービスの開発が、これからの課題となります。
さらに、若年層を中心とした「コンロ離れ」や「生鮮離れ」という現象は、今後の住宅設計や家電開発にも影響を与える可能性があります。電子レンジや新たな調理器具の需要が高まる中で、それらに適した食品の開発も求められるでしょう。
キユーピーの「えがおの食生活研究」は、こうした社会変化をいち早く捉え、企業活動に活かすための貴重な取り組みといえます。今後も継続的な調査を通じて、変化する食生活の実態を明らかにし、より豊かな食文化の創造に貢献することが期待されます。
出典元:PR TIMES