
バーチャレクス・コンサルティング株式会社(東京都港区、代表取締役社長:丸山勇人、以下「バーチャレクス」)は、「カスタマーサクセス日本市場動向&実態調査」の結果をまとめた2025年版第八弾を発表しました。
カスタマーサクセスの経営者視点
本調査は、カスタマーサクセスを推進する企業の取締役以上の経営者(n=121)に焦点を当て、「経営者からのカスタマーサクセス」について掘り下げており、投資意向、直面する課題、取り組みの方向性、実感される成果に加え、ビジネスモデルや企業スケールによる違いも分析しています。特に、経営層がカスタマーサクセスを今後の成長戦略にどう位置づけているかも明らかにします。
経営層の投資意向
調査によると、カスタマーサクセスに取り組む企業の経営層の約40%が「予算を増加させる」と回答しています。「大幅に増加する」と「やや増加する」が共に19.8%であり、投資を進める企業が一定数存在します。一方で、最も多かったのは「現状維持」(24.8%)で、従来の体制を維持する企業も多く見られます。
さらに、「やや減少する」(15.7%)や「大幅に削減する」(5.8%)という回答もあり、コスト見直しの動きが見受けられます。また、「専用の予算を設けていない」とする企業も3.3%に上り、カスタマーサクセス体制の未確立が示されています。

サブスクリプション型商材の有無による比較では、サブスクリプション企業がカスタマーサクセスへの投資に積極的であることが判明しました。サブスクリプション企業は約半数が予算増額を計画しているのに対し、非サブスクリプション企業ではその比率が低く、慎重な姿勢が見受けられます。
サブスクリプション企業では、カスタマーサクセスが継続収益を支える重要要素と認識されており、非サブスクリプション企業にはその必要性があまり明確ではないとの背景も考えられます。「大幅に増加する予定」と回答した企業はわずか3.0%で、また「やや増加する」との回答は18.2%に留まっています。投資の増加と減少が等しい割合で現れています。「現状維持」が最多で、安定志向の企業が多いことが分かります。
予算削減(やや削減+大幅削減)の割合は、サブスクリプション企業が20.5%、非サブスクリプション企業が24.3%で、非サブスクリプション企業が若干高い結果となっており、投資に対する慎重さが伺えます。また、「カスタマーサクセス専用予算を設けていない」企業は、サブスクリプション企業で2.3%、非サブスクリプション企業で6.1%と、明確な差異が存在します。

次に、従業員数による視点で、小規模企業(99人以下)では、「大幅に増加する予定」と「やや増加する予定」が合わせて約3割強であり、一定の投資意欲が見られますが、「現状維持」や「専用予算を設けていない」といった姿勢も混在しています。
100人から999人の中規模企業では、「やや増加」(25.7%)と「大幅に増加」(17.1%)が共に4割を超え、より積極的な投資意向が伺えますが、「やや減額」(20.0%)も多いため、投資状況が二極化しています。
対して、1,000人から4,999人の大企業では、「現状維持」が44.4%で最も多く、投資を控えつつもカスタマーサクセスに取り組む慎重さが目立ちます。
一方、5,000人から9,999人の超大企業では、「大幅に増加する予定」との回答が41.7%に達し、より積極的に投資を拡大する企業が多いことが分かります。

最後に、カスタマーサクセスへの取り組み期間に関する分析が行われました。取り組み開始から1年未満の企業では、「大幅に増額」や「やや増額」がそれぞれ19.0%となり、約4割が予算を増加させる意向があることが判明しました。しかし、「やや減額」や「大幅削減」といった意見もあり、方向性が定められていない状況が見て取れます。
1年以上2年未満の企業では、過半数が増額を計画しており、「未定」や「専用予算なし」の回答が見られず、投資方針が明確であることが際立ちます。
2年以上4年未満の企業では、「やや増額」と「現状維持」が同率となり、堅実な姿勢が伺える一方、「大幅に増額」の割合は約1割に留まります。
4年以上継続してカスタマーサクセスに取り組む企業では、「大幅に増加する」との意向が32.4%で非常に高いですが、「現状維持」や「減額」といった意見も存在し、投資拡大と見直しの両方が見られます。

カスタマーサクセスの課題
調査の中で、カスタマーサクセスを推進する経営層の抱える課題についても分析が行われました。「特に問題がない」との回答が62.8%を占め、多くの企業が一定の運用体制を確立し、カスタマーサクセスを順調に推進できていると捉えられます。しかし、約4割の経営層は何らかの課題を抱えており、その克服がさらなる拡充のカギであることが示されました。
主要な課題には「経営者や上層部の理解を得られない」(13.2%)が上位に挙がっており、カスタマーサクセスを推進する立場の経営層自身がこの課題を指摘している点が興味深いです。これは組織内での意思決定の過程における課題や、経営戦略への位置づけやデータの不足が障害となっていることを示唆しています。
また、「進めている方向が正しいか分からない」(6.6%)、また「相談相手がいない」(5.0%)という具体的な戦略に対する疑念も見られ、「効果測定の方法がわからない」(4.1%)や「ROIが測りにくい」(4.1%)といった問題点が、経営層の意思決定を難しくする要因です。
さらに、ツールやシステム面での問題も見受けられ、「どのツールを選べばよいか分からない」(3.3%)や「データの連携に問題がある」(3.3%)といった意見があり、適切なツール選定と業務システムの統合が進んでいない企業の存在が見受けられます。

経営層のカスタマーサクセス意向
カスタマーサクセスに今後の取り組み意向を尋ねたところ、80.2%が「さらなる強化をしたい」との回答を得られました。「どちらとも言えない」との回答は12.4%、逆に「強化したいとは思わない」との回答が7.4%に留まり、大半の企業がカスタマーサクセスの拡充を重要視していることが示されます。
この結果から、顧客との強固な関係構築や顧客満足度向上を目指す企業の増加が見て取れ、カスタマーサクセスへの投資や体制整備に積極的であることが伺えます。「どちらとも言えない」とした企業も存在しており、投資効果の検証や社内リソースの確保など、取り組みに向けた前段階にいる企業も少なくないことが示されました。全体的に、多くのカスタマーサクセスに取り組む企業は、その重要性を認識しつつさらに強化を目指していることが明らかになりました。

この結果を基にサブスクリプション型商材の有無別で比較すると、サブスクリプション企業の経営層は「強化したい」との意向が顕著であり、サブスクリプション企業の経営層が「強化していきたい」と回答する率は84.1%に対し、非サブスクリプション企業は69.7%となり、約15ポイントの差が見受けられます。「どちらとも言えない」との割合は、サブスクリプション企業が9.1%に対し、非サブスクリプション企業は21.2%と高い値を示しました。
この差は、経営層がビジネスモデルに応じてカスタマーサクセスの重要性に対する認識の違いを示しています。特にサブスクリプション企業では、長期的な安定収益を確保するために、顧客維持や満足度向上に多くの努力を必要としていることが反映されています。
対照的に、非サブスクリプション企業では、継続的な収益モデルがなく、顧客維持が直接売上に影響することは少ないため、経営層として投資の優先順位を判断しにくい場合が見受けられます。
さらに、「これまでのカスタマーサクセスの取り組み効果を実感していますか?」との問いに対し、58.7%が「効果を感じている」との回答をし、経営戦略の一環としてカスタマーサクセスの価値が認識されつつあることが見て取れます。ただし、28.9%が「どちらとも言えない」、12.4%が「効果を感じていない」と回答し、全ての企業が充分な成果を把握しているわけではない状況が示されています。
経営層は顧客との関係強化や売上向上を背景に、カスタマーサクセスへのさらなる投資と体系強化の必要性を感じつつも、効果測定の具体的な指標が整っていない企業も見られ、そのため一部の企業は取り組みの効果を明確に把握できない状況にあります。特に導入初期や基盤がまだ整っていない企業では、投資判断が困難な傾向がみられます。そのため、今後の経営陣には目標や評価基準の明確化、さらに社内リソースの強化を通じて、カスタマーサクセスのメリットをより実感できる体制の構築が求められるでしょう。

調査の結果、カスタマーサクセスを推進する企業の経営層が多く、カスタマーサクセスの効果を体感し、その重要性を理解し、今後の体制強化や予算増額に前向きであることが浮き彫りとなりました。特にサブスクリプション型商材を扱う企業では継続的な収益確保の観点から、カスタマーサクセス強化に高い意欲が見られ、多くの企業が予算を拡大する計画を示しています。しかしながら、非サブスクリプション企業では投資決定に対する慎重さがあり、判断を迷う企業も一定数存在することが分かりました。
さらに、従業員規模別の分析では、大企業ほど積極的な投資意向が現れている一方で、小規模企業では専用予算が整備されていないケースが多く見受けられます。また、カスタマーサクセスの取り組み期間別のデータでは、取り組み開始直後の企業が成果検証の過程で投資意向が二分化する傾向が強くある一方、ある程度の期間にわたって取り組みを行った企業は、戦略的に支出を明確に打ち出しており、長期的に運営する企業においては、大幅な予算増加と共に現行維持または効率的見直しも進められていることが確認できました。これらの結果は、経営層がカスタマーサクセスを企業成長の重要な戦略として認識し、事業展開や顧客関係の強化に向けた取り組みを進める上での貴重な示唆となります。
このように、カスタマーサクセスの投資を拡大し、組織的な推進力を高めるためには、経営層のリーダーシップの下、組織全体の意識改革を進めると共に、運用の仕組みや評価基準を明確にすることが不可欠です。カスタマーサクセスの導入・運用は単なるオペレーションを強化するにとどまらず、業界の成長戦略の一環として確固たる基盤を築くことが必要です。
この結果は、経営層がカスタマーサクセスを企業成長の重要な戦略として捉え、事業の展開や顧客関係の強化に向けた取り組みを進める上での貴重な示唆を提供しています。
出典元:バーチャレクス・コンサルティング株式会社 プレスリリース