
近年、キャッシュレス決済が急速に普及する中、実際に導入した店舗にはどのような変化がもたらされているのでしょうか。
このたび、ステップ・アラウンド株式会社が運営する店舗経営に役立つメディア「OREND(オレンド)」が、新たにキャッシュレス決済を導入したり過去に利用した469名の店舗経営者や従業員を対象としたアンケート調査を実施し、その結果を公表しました。
調査では、27%の回答者が売上の向上を実感し、39%が業務の効率向上を報告しています。また66%の回答者が、店舗においてキャッシュレス決済が半数以上を占めていると答えました。一方で、高い手数料や複雑な運用が課題として浮かび上がっています。
キャッシュレス決済の影響
27%の店舗で売上が向上、変化なしの店舗も多数
キャッシュレス決済を導入した結果、27%の回答者が売上の向上を実感しています。この結果には、以下のような理由が考えられます。
- 多様な決済手段を追加することによる新規顧客の獲得
- 高価格商品の購入促進
- 迅速な決済処理による売上回転率の向上
しかし、67%の回答者が「売上に変化がない」と述べ、6%は「売上が減少した」と報告しています。この結果は以下の要因を反映していると考えられます。
- 顧客層にキャッシュレス決済が必要とされていなかった
- キャッシュレス決済の導入だけでは集客が見込めない
- 手数料の負担が利益を圧迫している
キャッシュレス決済を導入したからといって必ずしも売上が向上するわけではないことがわかります。
「どの顧客層に対してどのように活用するか」が成功を左右する要素となるでしょう。
39%が業務効率を向上させたと実感

業務効率については、キャッシュレス決済によるインパクトが大きいことが示されました。
39%の回答者が「業務効率が向上した」と答え、特にレジ業務や現金管理の負担軽減が主な利点として挙げられています。
現金を取り扱う際の業務には以下のような負担が生じますが、キャッシュレス決済ではこれらの負担を軽減できます。
- お釣りの誤計算リスク
- レジ締め作業時の金額確認の手間
- 銀行への入金手続きや釣銭準備の煩わしさ
さらに、会計時間の短縮によって以下のような副次的な利点も期待されます。
- ピーク時の行列の短縮による顧客満足度の向上
- レジ担当者の負担軽減による人件費の削減に寄与
しかし、6%の回答者が「業務効率が悪化した」とも聞いており、その理由には次のようなものが考えられます。
- 端末の使用に慣れるまでの時間がかかる
- 現金とキャッシュレス決済を併用しているため、業務が複雑になる(完全キャッシュレスの店舗ではない)
- 決済トラブル時の対応に手間がかかる
導入後には効果を最大限に引き出すために、オペレーション設計やスタッフ教育の強化が欠かせないと言えるでしょう。
66%がキャッシュレス決済の割合は半数以上

今回の調査中で、回答者の66%がキャッシュレス決済が半数以上を占めると報告しており、さらに<11%は完全キャッシュレスに移行しているとのことです。この結果から、キャッシュレス決済の主流化が明らかになりました。
キャッシュレス比率が増加している理由として、以下のような点が考えられます。
- モバイル決済の普及が加速している
- 若年層が現金決済を避ける傾向が高まっている
- 完全キャッシュレス運営が業務効率的であるとの認識が広がっている
集客・業務効率化にも寄与

キャッシュレス決済の導入によって、48.6%の人がレジ業務の負担軽減を実感し、39.2%は現金管理の負担が軽くなったと報告しています。
会計時間の短縮は、店舗の回転率を向上させ、特に飲食業界においては混雑緩和や業務効率の改善に寄与しています。また同時に、29.8%が「データ分析が可能になった」と回答し、売上の傾向を視覚化し、販促施策の改善へとつなげています。
さらに、21.5%が新規顧客やリピーターの増加を実感しており、特に若年層や訪日外国人客の取り込みに成功しているとのことです。
キャッシュレス決済の導入現状
クレジットカードとQRコード決済が主流に

店舗におけるキャッシュレス決済の導入状況に関する調査では、84.6%がクレジットカード決済を導入済み、99.6%がQRコード決済を採用しています。
QRコード決済は導入費用が低く、小規模店舗でも扱いやすいため、普及しています。
また、43.0%の店舗が電子マネー、41.2%が交通系ICカードに対応するなど、日常での便利さが増しています。
クレジットカードとQRコード決済の両方を導入することで、多様な顧客ニーズに応えることが可能です。
端末の大半は「据え置き型」

決済端末の形状を見てみると、44.8%が据え置き型を使用しており、次いでセルフレジや自動精算機が33.1%、QRコード決済用端末が32.2%を占めています。
特に飲食業や小売業では、スムーズな決済を促進するために据え置き型が好まれている点がうかがえます。
その一方で、持ち運びできる端末は12.6%に過ぎず、モバイル端末を使用している店舗は依然として少数派のようです。
テーブル会計や移動販売が増える中で、今後は持ち運び型端末の需要が高まる可能性があります。
キャッシュレス導入の要因
顧客の要望が最大の理由

キャッシュレス決済を導入する主な理由については、40.3%の人が「顧客の要望」があるためと回答しています。
近年、現金を持っていない消費者が増える中で、「キャッシュレス決済ができるから来た」という事例が増加しています。
その他にも、現金管理や会計処理を効率化したいという声(29.0%)、レジ業務の負担を軽減したいという意見(24.7%)も寄せられています。
人手不足が問題視される中、業務の効率化を狙った導入が増加していると思われます。
重視されたポイントは「操作の容易さ」と「手数料の安さ」

決済サービス選択時に特に重視された点は、操作の簡便さ(41.0%)や手数料の低さ(36.5%)でした。
これにより、スタッフが直感的に使える操作性や低コストのサービスが求められていることが明らかになりました。
また、対応決済の種類(31.2%)や導入コスト(31.6%)も重要な基準となっています。
店舗の業態や顧客層に合った決済手段を導入することで、運用負担を軽減し、様々な顧客に対応できることが重要です。
情報収集の方法は「比較サイト」と「公式サイト」

キャッシュレス決済を導入するにあたり、情報収集の手法としては28.2%が比較サイトやレビューを利用し、27.3%が公式サイトの情報を参照したと述べています。
特に、手数料や機能を比較するサイトが導入の際の重要な判断材料とされているようです。
さらに、SNSでの口コミ(24.5%)や営業担当・サポート窓口からの情報(18.3%)も参考にされた割合が見られ、公式情報だけでなく、実際の使用者の体験や他店舗の導入事例が重視されている傾向が強く観察されました。
調査結果から浮かび上がった今後の課題

「手数料の高さ」と「使いにくさ」が主な課題
キャッシュレス決済を導入した後の課題として、24.7%が「手数料が高い」と訴えています。
キャッシュレス決済は便利ですが、各決済ごとの手数料が発生するため、利益率が低い店舗では圧迫感があるようです。
また、24.0%が「使いにくさを感じる」と述べており、システムの操作性や接続トラブルに悩む店舗が少なくないことがうかがえます。
特に、複数の決済手段を同時に利用する場合、端末の切り替えや操作ミスが発生しやすく、そのため導入後のサポート体制も重要な要素となります。
「現金との管理が面倒」「入金遅延」も課題に
キャッシュレス決済導入後、22.8%が「現金とキャッシュレスの管理が煩雑」と感じています。
現金とキャッシュレスの売上を別々に管理する必要が生じ、レジ締め作業や会計処理の負担が大きくなることが懸念されています。
さらに、14.3%が「入金サイクルが遅い」との回答を寄せ、特に個人経営の店舗では決済サービスの入金タイミングがずれ、資金繰りに影響を与えるという問題も存在するようです。
サポートの不備やトラブル対策の遅れも問題
「決済端末の不具合や故障を頻繁に経験した」と答えた人は14.3%に達し、トラブルが生じることがあるようです。
「サポートの対応が不十分」と感じている人も11.6%おり、導入後の問題解決や問い合わせのしやすさが重要な要素として浮かび上がっています。
まとめ
今回の調査を通じて、キャッシュレス決済の導入が店舗運営に与える影響や課題が明らかになりました。
売上向上を実感している割合は27%、業務効率の向上を感じたのは39%と、一定数の店舗経営者がキャッシュレス決済の利点を享受していることが示されています。
また、キャッシュレス決済を導入する理由で最も多かったのは「顧客の要望」で、消費者のニーズに応じて対応する店舗が多いことが印象的です。
一方、『手数料負担』や『操作の難しさ』が大きな導入後の課題となり、特に中小企業にとってはコストと利便性の両立が重要な選定要因となるでしょう。
今後、キャッシュレス決済を導入・運用する際には、以下のポイントが重要です。
- 導入前に顧客属性と業態に適した決済方法を選ぶこと
- 手数料や運用コストを事前に比較すること
- サポート体制やトラブル時の対応が容易であることを確認すること
- データ分析を活用し、売上向上や業務改善に役立てること
キャッシュレス決済は単なる支払い手段を超え、店舗運営の効率化や顧客の集客において欠かせない要素となっています。
今後も店舗ごとのニーズに応じた最適な運用方法を模索することが成功へのカギとなるでしょう。
出典元:ステップ・アラウンド株式会社 プレスリリース