
2025年2月の国内経済動向に関する調査結果を株式会社帝国データバンクが発表しました。調査は全国26,815社を対象に実施されました。
この記事の目次
調査結果の要点
- 2025年2月の景気DIは、前月と比べて0.1ポイント減少し、43.5となり、2カ月連続での小幅な悪化が確認されました。物価の上昇や寒波による影響で、個人消費が低迷し、建設業や製造業も不調が続いています。賃上げによる個人消費の回復が期待されるものの、輸出業界への海外リスクが懸念され、全体的には横ばいの傾向が続くとみられます。
- 調査対象の10業界のうち、6業界(サービス業や製造業など)が悪化し、すべての業界のDIは2カ月連続で50を下回っています。地域別には、悪化した地域と改善した地域がそれぞれ4つずつあり、寒波や大雪が各地域および業種に影響を与えました。また、ガソリンや軽油の価格上昇が地域経済に悪影響を及ぼしました。規模別では、「大企業」と「小規模企業」が改善を見せた一方で、「中小企業」は悪化しました。
- [今月のトピックス] 寒波に伴う除雪や暖房関連商品の売上が増加しているという声が寄せられる一方、人的流れの停滞が消費行動に悪影響を及ぼしているとの意見もあります。
2025年2月の動向 : 小幅に悪化
今月の景気DIは前月比0.1ポイント減の43.5と、小幅な悪化を示しています。国内経済は、食品価格をはじめとする物価の上昇や寒波の影響により個人消費が鈍化し、特に建設業や輸出関連の製造業が悪化傾向にあります。
2月には、食品やエネルギー価格の高騰が個人消費に影響を与え、オフシーズンの寒波が観光業や飲食業の不振を招く結果となり、全産業の景気感は2年ぶりに下回りました。ただし、米や鶏卵の価格上昇は農業関連業界にプラスの影響を与え、農業の景況感は向上しました。また、冬物衣料の生産が増加し、アパレル製造業の景況感も3カ月ぶりに改善しています。
今後の見通し : 横ばい傾向が続く

今後、実質賃金が上昇し、それに伴う個人消費の拡大が経済において重要となります。しかし、家計の節約志向や借入金利の上昇、燃料価格の高止まりが景気にはマイナス要因となるでしょう。また、米国の関税政策や中国経済に関する不確実性も残っています。一方、インバウンド需要やIT関連の設備投資は引き続き安定した需要が期待されます。
今後の景気は、訪日観光客による消費が支える一方、コストの上昇や海外リスクが景気の足かせとなり、横ばいが続くと予測されます。
業界別:低調な個人消費や燃料価格上昇の影響で、6業界が悪化
10業界中6業界が悪化し、全業界のDIは2カ月連続で50を下回っています。個人消費の低迷や燃料・原材料価格の上昇、寒波による影響がマイナス材料として作用しましたが、農産物の価格上昇は関連業界にプラスの影響を与えました。

『サービス』(49.0)…前月比0.2ポイント減少。2カ月連続での悪化が確認されています。オフシーズンに伴う「旅館・ホテル」(同2.6ポイント減)は、いまだインバウンド需要が支えているものの、国内旅行需要の減少が影響し、3カ月連続で下落しています。「飲食店」(同1.9ポイント減)は、仕入れ価格や人件費の上昇、悪天候の影響で来客数が減少し、2カ月連続で悪化しています。「人材確保が難しい」との声が寄せられる「人材派遣・紹介」(同3.6ポイント減)は、3カ月ぶりにDIが50を下回りました。
『製造』(39.8)…同0.3ポイント減。3カ月連続の悪化が見られ、7カ月ぶりに30台にまで下降しました。部品メーカーの不振が目立つ「輸送用機械・器具製造」(同3.4ポイント減)は、3カ月連続で悪化し、1年ぶりの低水準です。「機械製造」(同0.8ポイント減)も4カ月連続の下落傾向が続き、自動車や建設機械、工作機械の不振が影響しています。
『運輸・倉庫』(42.5)…前月比0.4ポイント減少し、3カ月連続で悪化しています。ガソリン補助金の縮小によるコスト増や、働き方改革による人件費負担の増大、乗務員不足が悪影響を及ぼしました。旧正月休みの影響で中華圏からの物量も減少しています。観光バスや旅行業界では、インバウンドの増加がオフシーズンの需要を補っています。
『農・林・水産』(46.8)…同1.7ポイント増。2カ月連続で改善しています。「米作農」は6カ月連続で50を上回り、米価の上昇が好材料となっています。他にも、葉物野菜や鶏卵などの価格上昇が農業関連の景況感を押し上げていますが、燃料や飼料の価格上昇が販売価格の値上げを招き、一部では売上減少の意見も見受けられます。
規模別: 「中小企業」が2カ月連続で悪化、燃料価格の上昇が影響
「大企業」と「小規模企業」が改善した一方で、「中小企業」は2カ月連続での悪化が顕著です。これは、燃料価格の高騰や寒波による客足の低下が影響しています。「大企業」と「中小企業」間の格差は5.5ポイントに達し、3カ月連続の拡大となっています。

「大企業」(48.2)…前月比0.1ポイント増。2カ月ぶりに改善が見られました。好調な生成AIに関連する商材の需要が活発で、米や鶏卵の価格上昇が「農・林・水産」にプラスの影響をもたらしています。しかし、不動産業界では建築費や人件費の上昇が影響しています。
「中小企業」(42.7)…同0.1ポイント減。2カ月連続で悪化しており、燃料価格の高騰が重荷となっています。「運輸・倉庫」業種が減少し、寒波や大雪が飲食業や宿泊業に大きな影響を与えています。
「小規模企業」(41.6)…同0.1ポイント増。5カ月ぶりに改善が見られました。インバウンドの増加や自動車向け部品製造がプラスに働きましたが、小売業界では値上げの影響により顧客の買い控えが認められています。
地域別:悪化と改善が4地域ずつ分かれる
『東海』や『中国』など4地域が悪化した一方で、『北陸』など4地域が改善しました。寒波や大雪が地域や業種によって異なる影響を及ぼし、ガソリンや軽油の価格上昇も地域経済に悪影響を与えました。

『東海』(43.5)…前月比0.2ポイント減。3カ月連続の悪化が見られます。地域内4県中3県が悪化し、「岐阜」県が唯一の改善県となりました。原材料や燃料の高騰が「建設」業に大きく影響しています。
『中国』(42.6)…同0.4ポイント減。3カ月連続での悪化が続いており、地域内5県中4県で悪化が見られます。「鳥取」県は9カ月ぶりに30台に落ち込む結果となりました。『建設』業界では新規物件の着工控えが目立っています。
『北陸』(41.0)…同0.5ポイント増の結果となり、5カ月ぶりの改善が見られました。地域内の4県中3県が改善した一方で、「石川」県は4カ月連続で悪化しています。雪による季節需要の影響とインバウンド需要が好材料とされています。
出典元: 株式会社帝国データバンク プレスリリース