
戦略立案からサイト構築・運営、デジタルマーケティング、物流フルフィルメントまで、ECの総合支援を行っている株式会社いつも(以下「いつも」)。そんないつもが、新たなサービスとしてD2C・ECブランドの M&A・成長支援を行う「D2C・ECブランドM&A・成長支援サービス」を開始しました。従来のEC支援とは少し毛色の異なるこのサービスが一体どのようなものなのか、今後どう展開していくのか、同社の社長室 室長 矢追 紘さんに伺いました。
この記事の目次
14年間の知見を基に生まれたEC支援の新たな展開
― M&Aというとこれまでのいつものサービスとは少し異なる印象がありますが、「D2C・ECブランドM&A・成長支援サービス」は、どのような背景のもとに生まれたサービスなのでしょうか?
矢追さん:弊社としては、これまで取り組んできたEC支援と同じ流れのなかに、「D2C・ECブランドM&A・成長支援サービス」があると考えています。このサービスは、一般的にM&Aという言葉から連想されるイメージとは異なるサービスになっています。
弊社は、創業からこれまで約14年間、事業者様のEC事業を一気通貫で支援できるようサービスを展開してきました。ECの戦略・実行を支援するECマーケティングサービス、そしてEC参入から物流までを代行するECマーケットプレイスサービス、さらにそこから派生したのが今回の「D2C・ECブランドM&A・成長支援サービス」です。
いつもとしてはいずれのサービスもEC事業の支援となっており、従来のサービスではカバーできていなかった領域を支援できるのが、今回新たに提供するサービスです。
― 少し前になりますが、2020年12月にいつもが東証マザーズに上場したことも、EC業界で大きな話題になりました。今回の「D2C・ECブランドM&A・成長支援サービス」の開始には、上場の影響もあるのでしょうか?
矢追さん:具体的なサービスとしては形になってはいなかったものの、上場前から、アイデアベースでこういったサービスの話は出ていました。当社では上場後も株主の皆様からの期待が大きく、このサービスを始めた理由の一つには、そういった株主の皆様からの期待に応えるためでもあります。
業界事情を熟知、EC事業者に寄り添った対応ができる強み
― 他社が提供するM&Aサービスと比べたときに、長年EC支援を行ってきたいつもならではの強みは、どのようなところですか?
矢追さん:弊社は、ECに関する豊富な知見があり、ブランドオーナー様に手間やストレスを極力かけずに、D2C・ECブランドの譲渡を進められる体制が強みです。ECにはECならではの商習慣や用語があります。一般的なM&Aでは、そういったところがなかなか理解されないことがありますが、弊社はECの知見が豊富なため、D2C・ECブランドを持つオーナー様にとって相談しやすいのではないかと思います。
また、譲受のサポートにあたるチームと、譲渡後のフォローを含めブランドを育成していくチームを両方有しているのも特徴です。事業の譲渡をしたらそれで関係が終わりではなく、ブランドをどう育てていくかまで責任を持ちます。これも、弊社にECの知見が豊富にあるからこそできることだと思います。
― D2C・ECブランドのM&Aにあたって、どういったことを大切にされていますか?
矢追さん:オーナー様によって譲渡をお考えになる背景は異なるので、ご相談を受けたら、事業譲渡後に何をしたいか、必ずヒアリングしています。たとえば、しばらくゆっくりされたいのか、新しいブランドを立ち上げられたいのか、それによって弊社が提案できることも変わります。また、複数のECプラットフォームがあるなかで、一つのECプラットフォームのアカウントのみ譲渡したいとか、複数のブランドがあるなかで一つのブランドだけ譲渡したいといったケースもあります。個別の要望にも臨機応変に対応しながら、あくまでもオーナー様を支援するというスタンスを大切にしています。
ブランド育成に悩むオーナーを助け、新たなチャンスを提供
―「D2C・ECブランドM&A・成長支援サービス」で特に支援したいと想定されている、EC事業者はありますか?
矢追さん:0→1を生み出したものの1→10にするためのリソースがないEC事業者様を支援していきたいです。最近では、個人でもブランドオーナーとしてOEM商品を作り、Amazonなどで展開する事例が増えています。そういった方々は、「0→1」を作る才能があります。つまり、さまざまなブランドを生み出す才能がある方々です。しかし、魅力的なブランドを生み出せても、「1→10」のように事業を成長させるためには一定の運転資金や人材が必要ですが、ここがボトルネックになるケースも散見されます。これは大きな機会損失です。
弊社がこのようなD2C・ECブランドを譲受することにより、「1→10」のステップは弊社が担当し、資金を提供することでブランドオーナー様には次の新しい事業に取り組んでいただく、という循環を有するエコシステムを作っていきたいと考えています。これは、ブランドオーナー様にとっても弊社にとっても幸せなことですし、長い目で見ればEC市場をさらに成長させ、日本経済に新しい可能性を生み出すことにもなると考えています。

ブランドのM&A可否を判断する3つの軸
― D2C・ECブランドの譲渡の対象可否を判断する具体的な基準はありますか?
矢追さん:サービスの対象となる事業者については、「商品軸」「売上軸」「プラットフォーム軸」の3つの軸があります。
「商品軸」に関しては、コンプライアンス・規制上対応できないものを除き、基本的にオールジャンルに対応しています。まずはご相談いただければと思います。今まで幅広いジャンルのD2C・ECブランドを支援してきた弊社の経験を活かしながら、ご相談内容を踏まえて判断、提案をさせていただきます。
「売上軸」に関しては、年商5,000万円~3億円程度を目安としています。このレンジを外れた場合に絶対に対応できないわけではないのですが、今後売上が伸びていくか否かの見極めの大きな軸が、年商5,000万円以上、月商にして400万円程度になります。弊社としても、D2C・ECブランドをお預かりするからには責任をもって成長させていきたい思いがあり、このレンジが弊社として強みを発揮できる領域といえます。
売上軸に関しては、おそらく、一般的にM&Aといってイメージされる会社や事業の規模よりも、より個人に近い小規模なケースが多くなっています。そのため、そもそもM&Aに必要な書類が揃っていないといったこともありますが、そういった小さなところからサポートさせていただきます。
「ECプラットフォーム軸」に関しても、基本的にオールプラットフォームで対応しています。一部のECプラットフォームに関しては、M&Aを行うとECプラットフォーム側の規約によりNGとなる可能性がありますが、弊社ではそういった場合を除けば、すべてのプラットフォーム・自社サイトが対象のため、ECプラットフォームによる制限は設けていません。自社ECにもさまざまなカートシステムがありますが、そこは、弊社がこれまで培ってきた知見を活用して、カートシステムに関わらず支援することが可能です。
EC事業者、いつも双方が成長できるサービスへ
― 今後、「D2C・ECブランドM&A・成長支援サービス」をどのように成長させていきたいですか?
矢追さん:直近の目標としては、2022年3月までに25ブランドを支援していきたいです。また、中長期的に進めていきたい考えがあり、今後数年の間に200ブランドの支援を行いたい目標もあります。そのために、専任の人員を配置しています。さまざまなブランドオーナー様と対話できることは弊社としても得るものが大きく、今回この記事を読んでいただき、少しでも興味がある場合はお気軽にご相談いただければと思います。
また、弊社はこれまで、ECの支援を一気通貫で行ってきましたが、商品開発・企画といった、戦略以前の川上の工程は未経験でした。今回このサービスを通じて、商品開発・企画の知見を得ることができれば、今後、そういった川上工程の支援サービスも提供できるようになるのではないかと考えています。
将来的にブランドが増えてくれば、別ブランド同士によるクロスセルや、仕入れで第三者とコラボしていくといった展開もできるかもしれません。これから「D2C・ECブランドM&A・成長支援サービス」を提供していく中で試行錯誤していき、支援の幅を広げていきたいと思います。
今後、ご相談を受けるなかで、状況に合わせて展開を考えていきたいので、まずは気軽にご相談いただければと思います。
最後に:M&Aは新たな成長のきっかけ
M&Aや、ブランドを手放すというと、ブランドオーナーにとってどこかネガティブな印象を受けることもあるかもしれません。しかし、今回、いつもが新たに始めたサービスは、お互いがさらに成長するための、まさに「支援」サービスといえるものです。
EC市場が成長するなかで、EC参入は気軽なものとなり、多くの人にブランドオーナーとなるチャンスが広がっています。一方で、今回のお話の中にあったように、事業を大きく成長させようとすると、人材やキャッシュが必要で、決して気軽ではありません。ECの参入ハードルが下がることは、それだけ競合が増えることでもあり、ECの成長ハードルは逆に高くなっているところがあります。
それを今、まさに実感されているEC事業者さん、ブランドオーナーさんも少なくないことでしょう。今回、いつもが始めた「D2C・ECブランドM&A・成長支援サービス」は、ブランドを手放すよりEC運営のプロに預ける側面が強く、ブランドの成長機会を増やすものです。また、EC事業者やブランドオーナーは譲渡により資金を得ることで、自らはまた別の挑戦をすることができます。こういったサービスが登場したことで、EC市場の新たな成長の可能性が広がっていくのではないでしょうか。
「D2C・ECブランドM&A・成長支援サービス」はこちら
https://itsumo365.co.jp/service/brands

株式会社いつも
社長室 室長
矢追 紘(やおい・ひろし)
2003年船井総合研究所入社後、数多くの中小企業へのコンサルティング支援に従事。同社退社後はフィナンシャルアドバイザー業務やベンチャー企業での経営企画室業務を経て、2008年にメディア・キャピタル・パートナーズ株式会社(現ACA株式会社)に入社。その後、2013年に転籍したライジング・ジャパン・エクイティ株式会社での期間も含めると、13年間にわたりプライベート・エクイティ業務に従事。出版社、ゲーム会社、化粧品メーカー、自動車部品メーカー、人材派遣会社など幅広い業種の企業への投資実行及び投資後の経営支援を担当。 2020年にいつも に参画。現在は社長室室長としてM&A業務を統括。 大阪大学経済学部卒。
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