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約半数の消費者が定期的に国外から買い物を
ヨーロッパ最大の決済サービス・プロバイダーであるワールドライン社が欧州6か国(※)で実施した調査によって、物価の高騰が越境EC市場の拡大に拍車をかけていることがわかりました。約半数の消費者が定期的に国外のECサイトで買い物をしているそうです。
ワールドライン社は、「このような消費者行動の背景には、よりお得な価格で商品を購入できる可能性が、国外の市場にはあることだ」と結論づけています。
(※)…ベルギー、フランス、ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリスの6か国
変わりゆく消費者の購買行動
この調査は、消費者の購買行動の変化を示しています。物価の高騰は切迫した問題として表れており、消費者は安価な商品や値引き商品を選んだり、クーポンを使ったりと、日々節制できるよう習慣を見直しているのです。
ワールドライン社の地域事業責任者であるビョルン・ホフマイヤーさんは「消費者はかつないほど価格に敏感になっている」とメッセージを発しました。
越境ECを利用する消費者の購入頻度と決済方法
価格への感度が高まるほど、オンライン上で支出する額が大きくなっていることは、調査対象の6か国に共通していえます。そのうち、特にポルトガル(75%)とオランダ(70%)は、国外のECサイトで買い物をする人の割合が高いです。また、ミレニアル世代とZ世代を中心に、若年層においてこの傾向が顕著となっています。(下図)

消費者の購買行動の変化に伴い、決済方法も変わっています。越境ECで買い物をする消費者が増えることで、国際的で柔軟な決済方法が求められているのです。バンクカード(銀行発行のクレジットカード)は58%と引き続き利用されていますが、デジタルウォレットおよびモバイルアプリが57%と僅差で2位となっており、シェアを大きく伸ばしています。また、BNPL(後払い決済)のような決済方法も人気を集めています。
パーソナライゼーションと新しいテクノロジー
この調査からは、オンラインショッピングを利用する消費者の間でパーソナライゼーションを好む傾向が高まっていることも明らかになっています。より便利な買い物ができるよう、自分に合った商品を提案してくれるサブスクリプションサービスを利用する人が増えているのです。
本調査ではARやチャットを活用したECサイト上のショッピングアシスタント、メタバースショッピング、ボイスコマースなど、ECの未来を形作る新たなテクノロジーについての情報も公開されています。これらのテクノロジーは、購買体験にさまざまな期待をもたらすでしょう。
参考:Expectations of online shoppers: today, tomorrow and beyond - European research report 2023
価格の高騰は日本でも同様に
物価の高騰はヨーロッパに限らず、日本でも起きています。株式会社デジクルの調査によるとスーパーマーケットの値上げに対して、Web上で情報収集をするようになった人が36%いることがわかりました。スーパーマーケットのように店頭購入が基本となる業態であってもこの割合が出ていることから、他のカテゴリーの商品においてはよりWeb上で検索され、価格の安い商品を求める動きが活発になっていることが予測されます。

より安く、より良い商品を購入したいという消費者の動きが活発になるほどに、商品を見てもらえる確率が高くなる一方で、他社商品と比較されやすくなるかと思います。このとき、消費者が商品ページを見て、不足のない説明を施し、安心して買い物ができるかどうかという視点も忘れてはいけません。
いくら消費者が物価の高騰に敏感だからといって、安価な商品であっても「買い物に失敗したくない」気持ちは、商品を手に取ることができないECでの買い物において切っても切り離せない問題です。そのとき、選ばれる理由として、価格以外に、サイト内に消費者が知りたい情報が見やすく網羅されていることもポイントになります。
「消費者が価格に敏感になっているから、利益を削ってでも価格をおさえて選んでもらおう」ということだけを考えてしまうと事業を回すがの苦しくなってしまいます。価格以外の訴求として、買い物をしやすくなるような環境整備をするのも大事なことです。改めて、見直してみてはいかがでしょうか。
※この記事は「Ecommerce News」に掲載されているニュースをもとに翻訳しています。日本のEC事業者の方の参考になればとのことで、Ecommerce News社にご協力いただいております。
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