
この記事の目次
はじめに
ECへの集客課題を持つ物販系企業にとって、データフィード広告(以下、フィード広告)は欠かせない施策のひとつです。
世界で圧倒的なシェアを誇る検索エンジンであるGoogle。広告媒体として、Google 広告の各種キャンペーンを活用している方も多いと思います。その中で昨年より「P-MAX(パフォーマンス最大化)キャンペーン、以下P-MAX」という広告キャンペーンを目にした方も少なくないのではないでしょうか。
現在提供されているGoogle 広告のスマートショッピングキャンペーンとローカルキャンペーンは、2022年7月から順次自動的にP-MAXに統合され、アップデートされていきます。すでにこれらのキャンペーンをお使いの方は自動移行となっても困らないよう心構えが必要です。
初めて聞いたという方も、今後のために本記事を参考におさえておきましょう。
本記事では、フィード広告の自動改善ツールを提供する筆者より、おもに「スマートショッピングキャンペーン」から「P-MAX」への移行を予定しているEC事業者や、新たにP-MAXを開始したいEC事業者に向けて、P-MAXの概要と運用する上での注意点を解説します。
P-MAX キャンペーンとは?
P-MAX キャンペーンとは2021年11月にローンチされた新しいキャンペーンのことです。Googleが所持する膨大なデータ量を使った、最新の機械学習による最適化が行われる広告配信手法となるため、基本的にはEC事業者も実施すべき手法といえます。
P-MAXを開始するにあたって広告運用者がやるべきことは大きく3つです。
- 「販売促進」「見込み客の獲得」「来店数と店舗売上の向上」といった選択項目から、コンバージョン目標として該当するものを選択すること
- 従来のキャンペーンと同様に予算、入札、言語、地域などの各種設定を行うこと
- 複数のテキスト・バナー・動画といった広告アセット(広告コンテンツに利用する素材)を登録すること
P-MAXでは登録された広告アセットをもとに、Googleが保有する検索結果やYouTube、Gmailなどのあらゆる広告枠に最適な広告が自動で作成され、配信されます。入札も自動で行われるので、オペレーションに必要な時間を削減することが可能です。
スマート ショッピング キャンペーンとの大きな違いは配信面の幅広さ

P-MAXは従来のスマートショッピングキャンペーンと基本的な広告配信のロジックは同じと考えて問題ありません。最も大きな違いは、配信面の幅が広がり、Googleが保有するすべての広告枠が対象になることです。
スマートショッピングキャンペーンでもディスプレイ面に自動配信されていましたが、その名の通り基本的にショッピング枠メインで配信されていたと考えられるため、P-MAXではショッピング枠以外への広告配信量も増えると予想されます。
なお、スマートショッピングキャンペーンと同様、実際にどのようなクリエイティブがどの媒体に配信されて何件クリックされたか、といった詳細な数値をレポートで確認することはできません。A/Bテストのように検証して精度を上げていくといった運用も、すべてGoogleに任せることとなります。
P-MAX キャンペーン運用の注意点
運用の注意点として、3点あります。
1.これまで以上にクリエイティブが重要に
2.レポートで確認できる指標が限られるため、改善はクリエイティブ変更が中心に
3.移行は慎重に
次に1点ずつ詳しく解説します。
1. これまで以上にクリエイティブが重要に
前述の通り、スマートショッピングキャンペーンでは、ショッピング枠への広告配信が主であったと考えられます。P-MAXはすべての配信面が対象となるため、これまで以上にショッピング枠以外に配信されても問題ないクリエイティブを準備することが重要です。
画像は最大20種類登録できるので、動画や画像はサイズ違いやトンマナ違い、再生時間違いなど、さまざまなバリエーションを登録するのがおすすめです。こうすることで、機械学習の助けになり、最大の効果を発揮する広告ができます。

(協力:株式会社金虎)
また、動画を設定していないと、登録された画像素材等から自動で生成されて配信される可能性があります。動画も含め、広告アセットは最大限設定しましょう。

2.レポートで確認できる指標が限られるため、改善はクリエイティブ変更が中心に
P-MAX キャンペーンでは、設定したコンバージョン目標に到達するべく、Googleの機会学習に基づき、自動で入札から広告作成・配信までされます。そのため、運用者のオペレーション作業時間を削減することが可能です。
このメリットは逆にいうと、人の手による細かい調整ができないというデメリットにもなります。例えば、「このユーザー属性に配信したい」「この形の広告を配信したい」「この広告の入札額を大きくしたい」といった調整ができません。
※すでに既存のキャンペーンでデータが蓄積されたリストを持っている場合、P-MAXにもリストを設定することで機械学習の助けとなる場合があります。
広告レポートも同様に、詳細なレポートは見ることができません。管理画面上での広告結果も「最良・良・低」といった表示がされ、配信面ごとのトータルの結果は見えますが、「検索語句レポート」や「アセット別の表示回数やクリック数」といった指標は見られない仕様です。そのため、社内外に「なぜその挙動に至ったのか」と尋ねられた際に、説明がしにくい仕様になっています。
このように、P-MAXはGoogleに任せていく仕様であり、詳細な調整や分析ができないため、注意が必要です。
結論として、2022年7月時点ではP-MAX キャンペーンで調整できる主な設定は「広告アセットの入れ替え」「日予算・入札目標の管理」程度となります。
PDCAサイクルを回す際はクリエイティブの結果を見て、成果がでていないアセットの停止と新しいアセットの登録を2週間〜1ヶ月サイクルで繰り返して改善していきましょう。
なお、今後のアップデートで調整できる要素が増えることが予想されるので、動向を見ておく必要があります。
確認できるレポート例
プレースメント レポート
- 広告が配信された場所
- 広告の表示回数
ただし、入札価格やクリック数やコンバージョン数は確認できません。

アセット レポート
- さまざまなアセット間で比較したアセットの成果ランク
同じタイプの他のアセットと比較し、ランク(「低い」「良好」「最高」)が表示されます。なお、ランクを出せるほどデータが十分に揃っていない場合は「保留」となります。

組み合わせレポート
- 各アセットグループで最もパフォーマンスの高いアセットの組み合わせ

3.移行は慎重に
P-MAXは、Googleのすべての広告枠に配信されるキャンペーンであるため、P-MAXとそれ以外のキャンペーンを同時に配信すると、配信ボリュームが減る可能性があります。
すでにスマートショッピングキャンペーンを利用中で併用を検討される場合、P-MAXが優先的に表示されやすくなるため、併用は推奨されていません。とはいえ、実際にP-MAXを配信して見なければどのような広告結果がでるかわからないため、複数あるスマートショッピングキャンペーンを1キャンペーンずつ段階的に切り替えて試してみることをおすすめします。
なお、検索キャンペーンのみ、キーワードが完全一致した場合はP-MAXよりも優先されるため、検索キャンペーンは併用して運用すると良いでしょう。
P-MAXの活用例 ー 約4倍の成果もー
静岡県でかつお節やペットフードを製造・販売する「金虎」では、P-MAXの運用で大幅な成果が出ています。スマートショッピングキャンペーンからP-MAXの運用に切り替え、約2ヵ月間で購入件数を約4倍以上に伸ばしています。
金虎では、弊社の提供するフィード広告支援サービスも導入されていますが、このように+αの外部ツールを合わせて活用するのもフィード広告を多角的な面で改善し売り上げを拡大するには非常に有効です。
P-MAXは配信面やユーザー情報をGoogleが最適化しているのに対し、例えば弊社が提供する「フォーカセル」では、商品単位の配信実績を見て、売れ筋商品に予算を注力するといった運用を自動化しているツールです。事業者側が意図をもって改善するのが難しいP-MAXの効果をさらに拡大することが可能です。
まとめ
現在スマートショッピングキャンペーンを利用している方や、今後P-MAXキャンペーンの導入を検討している方にとっては、本格的に移行の心構えが必要です。
P-MAXはまだまだ新しいキャンペーンであるため、今後もアップデートが繰り返される可能性は十分にあります。情報にアンテナを張りつつ、徐々に移行していきましょう。
▼『フォーカセル』サービスサイト
https://focusell.jp/
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