日本から米中への越境ECは4兆円超 海外直送だけではない市場の実像

米国と中国の消費者による、日本からの越境EC購入額は合計4兆4,087億円。経済産業省が2026年10月に公表した「令和7年度電子商取引に関する市場調査報告書」から、2025年も両国向けの市場が拡大したことがわかりました。
ただし、この市場には、日本のECサイトで受けた注文を海外へ直接発送する取引に加え、現地に置いた在庫や現地の販売者を通じた購入も含まれます。市場規模と販売方法を分けて読み解くと、自社が海外需要を取り込むための選択肢が見えてきます。
中国向けは2兆7,560億円、米国向けは1兆6,527億円
同調査は、日本・米国・中国の3か国間で行われる越境BtoC-ECの購入額を推計しています。日本からの購入に絞ると、中国が2兆7,560億円で前年比4.5%増、米国が1兆6,527億円で同3.4%増でした。
購入する消費者の国 | 日本からの購入額 | 前年比 |
|---|---|---|
中国 | 2兆7,560億円 | 4.5%増 |
米国 | 1兆6,527億円 | 3.4%増 |
2か国合計 | 4兆4,087億円 | — |
2か国合計は公表値を本稿で合算したもので、日本から世界全体への越境EC販売額ではありません。
中国向けは米国向けより市場規模が大きく、伸び率も上回っています。ただし、この表から商品カテゴリー別の売れ行きや、個別企業が獲得できる需要までは判断できません。進出先を検討する際は、市場の大きさに加え、自社サイトへのアクセスや問い合わせ、既存の海外注文などから、自社商品への関心を確かめることが出発点になります。
経産省の越境ECには、現地販売者からの購入も含まれる
報告書が採用するのは「広義の越境EC」です。消費者が居住国の外にある販売者から購入するケースだけでなく、自国にある販売者から外国製品を購入するケースも対象としています。
消費者への商品の届き方を見ると、国外から注文ごとに直接発送する方法と、あらかじめ消費者の居住国の倉庫に置いた商品を届ける方法があります。現地在庫を使う場合も、販売者やECモールが在庫を置く形と、輸出入事業者間の貿易を経て現地に商品が流通する形に分かれます。
つまり、4兆4,087億円の全額が、日本の自社ECサイトやモール店舗からの海外直送で生まれているわけではありません。報告書も、データ上の制約から、販売モデルごとの市場規模を切り分けるのは難しいと説明しています。自社ECでの海外販売を計画する場合、この数字は海外需要の広がりを捉える参考として扱うのが適切です。
海外直送・現地在庫・現地販売者の3つの方法を比較する
報告書の整理を事業者の判断に置き換えると、次のような比較ができます。表の確認事項は、報告書の販売モデルをもとに本稿で整理した実務上の検討項目です。
販売・配送方法 | 商品の流れ | 検討時の確認事項 |
|---|---|---|
日本から直接発送 | 注文後、日本から消費者へ配送 | 国際送料、到着までの日数、返品時の負担 |
現地在庫から発送 | 商品を先に現地倉庫へ送り、注文後に現地配送 | 在庫量、保管・出荷費用、補充期間、売れ残り |
現地販売者を通じて販売 | 輸出入や卸取引を経て、現地販売者が消費者に販売 | 卸条件、販売価格への関与、顧客情報、返品対応の分担 |
日本からの直接発送は、海外に商品をまとめて置く前に注文を受けられる一方、配送費用や日数が購入判断に影響し得ます。現地在庫を使う場合は、消費者への配送条件に加えて、需要をどこまで予測できるかが判断材料になります。
現地販売者を通す場合は、販売や顧客対応を誰が担い、どの情報を共有できるかを契約ごとに確認する必要があります。自社ECの海外対応だけでなく、卸販売や現地パートナーとの取引も含めて考えると、海外展開の方法を自社の体制に合わせて選べます。
世界市場の拡大予測と、競争の変化をどう読むか
報告書は、民間調査機関Expert Market Researchによる世界の越境BtoC-EC市場の予測も紹介しています。それによると、2025年の推計1.24兆米ドルに対し、2035年は9.91兆米ドルまで拡大する見通しです。これは同調査機関による将来予測であり、経済産業省による実績推計や、日本企業の売上予測とは区別して読む必要があります。
市場拡大への期待がある一方、報告書はTemuやSHEINの成長と、既存ECサイトとの競争にも触れています。また、消費者が越境ECを利用する理由として、自国では手に入らない商品や限定品、価格面の優位性、品質やメーカーへの信頼を挙げています。
日本の商品であることだけで購入理由が伝わるとは限りません。国内で評価されている商品の特徴を、現地の顧客が理解できる言葉や写真で示し、現地で入手できる代替品と何が異なるかを明確にすることが、販売ページを作る際の検討点になります。
進出先と販売方法を決めるために確認したいこと
海外販売の採算を考える際は、商品価格だけでなく、送料、販売手数料、現地の保管・出荷費用、返品対応などを販売方法ごとに並べると比較しやすくなります。消費者が支払う総額と、自社に残る粗利の両方を把握することが大切です。
例えば、問い合わせは多いのに注文につながらない国では、送料や納期、決済方法のどこで購入が止まるかを確かめます。継続注文が見込める商品では、現地在庫を置いた場合の配送条件と、在庫・保管コストを比較できます。これらは今回の市場統計が直接示す結論ではなく、調査の販売モデルを自社の判断に結び付けるための考え方です。
米中向け4兆円超という数字は、日本からの購入需要の大きさを示しています。その需要にどの方法で接点を持つかは、商品の特徴、注文の継続性、運用体制によって変わります。まずは対象国と商品を絞り、購入理由と配送・販売条件を具体化することで、自社に合った展開方法を検討できるのではないでしょうか。
参考情報
経済産業省「令和7年度電子商取引に関する市場調査報告書」掲載ページ
参照箇所:42~48ページ。調査対象年は2025年。
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