帝国データバンク、中国進出日本企業が2026年に1万118社へ減少と発表 2年間で3千社純減

株式会社帝国データバンクが、2026年における日本企業の中華人民共和国への進出状況に関する調査結果を発表しました。この調査は同社が保有する企業概要データベース「COSMOS2」や信用調査報告書ファイル「CCR」、各企業の公開情報などを活用して実施されたもので、2024年に続いて9回目の調査となっています。
中国進出企業数は過去最少の1万118社に
2026年6月時点で中華人民共和国(香港・マカオ両特別行政区および台湾を除く)に進出している日本企業は1万118社であることが判明しました。これは前回調査の2024年時点(1万3034社)と比較して2916社、率にして22.4%の大幅な減少となっています。また、進出企業数が最多だった2012年(1万4394社)と比べると4276社・29.7%の減少となりました。統計データが存在する2010年調査以降では、中国への進出企業数は最少の水準となっており、日本企業の中国ビジネスは拡大から再編へと局面が明確に移行していることが示されています。
前回調査からの変化を詳しく見ると、現地法人や工場拠点、駐在事務所などを新たに開設した「新規参入」企業は1221社でした。この数値は、コロナ禍で中国ビジネスの見直しが急速に進んだ2020年から2022年の期間(1352社)を下回り、過去最少の新規参入数となっています。一方で、拠点を閉鎖するなどの「撤退・所在不明」企業は4137社に達し、過去最多を記録しました。この結果、2年間で2916社の純減となり、日本企業の中国進出数は大幅な減少傾向が続いていることが明らかになりました。

中国市場の位置づけが変化、製造拠点から巨大マーケットへ
中国進出企業の特徴を売上高規模別に見ると、「1億円未満」(4.8%)や「1億円以上10億円未満」(24.3%)といった中小企業の割合が低下傾向で推移している一方、売上高10億円以上の中堅・大企業の比率が上昇しています。これは中国が安価で豊富な労働力を背景とした「世界の工場」から、巨大な消費・物流拠点を有する世界最大級のマーケットへと性格を変化させていることを反映しています。
しかしながら、近年では日中関係の悪化に加えて、不動産不況による中国国内の景気停滞、レアアース(希土類)の輸出制限といった経済的威圧行為、改正反スパイ法や過剰生産問題、政府支援を受けた中国現地企業との低価格競争など、各種カントリーリスクが高まっている状況です。
このような中国事業における「予見できないリスク」に対しては高度なリスク管理能力が求められており、企業規模によって中国市場の見極めが進んでいる可能性があります。ベトナムをはじめとする東南アジア諸国や日本国内への拠点移設・分散といったサプライチェーン再編の動きも目立っており、「安価な生産基地」としての重要性が低下している点も、中小零細企業における中国事業の縮小・撤退を促進する要因になっていると考えられます。
一方で、「巨大市場」「商流拠点」「サービス拠点」としての魅力は依然として大きく、巨大なマーケットとしての進出が見られます。特に、現在の中国進出は従来の低コスト生産を目的とした進出から、高付加価値製造、販売・マーケティング、研究開発、情報サービスなどを目的とした進出へと変化しており、中国市場を戦略的に活用できる経営資源を持つ企業への集中が進んでいます。
地域別動向、上海市が最多も2割減少
具体的な進出先を見ると、「上海市」が3961社で中国全体において最多となりました。依然として日本企業の中国ビジネスにおける最大集積地であることに変わりはありませんが、2024年の5046社から1085社・21.5%減少しており、2022年比では3割減となっています。上海市は日本企業の中国ビジネスの主要拠点として、製造拠点のほか営業・販売拠点、物流拠点としての進出が多かったものの、近年は現地法人の統合や事業再編、地域統括本部の役割を担う管理機能の効率化や整理が進んでおり、進出企業数は減少が続いています。
次いで多いのは「江蘇省」(1517社)で、蘇州市や無錫市、南京市などを中心に製造業の集積地としての地位を維持しています。2024年比で7%減、2022年比では約2割減少したものの、主要地域の中では減少率が比較的小さく、中国国内でも競争力の高い製造拠点として一定の評価を維持しているものと見られます。また、「広東省」(1409社)は深セン市、広州市、東莞市などを中心に電子機器や自動車関連産業の集積が進んでおり、2024年時点に続いて江蘇省に近い水準で推移しました。
一方、「遼寧省」(859社)は2022年比で3割超の減少となったほか、「北京市」(555社)は同5割減と、主要地域の中でも減少幅が特に大きくなっています。遼寧省は大連市や瀋陽市を中心に古くから製造業やアウトソーシング拠点として発展してきましたが、中国経済の構造変化や生産拠点再編の影響を受けた可能性があります。また北京市では、金融・コンサルティング・ITなど管理機能を担う拠点が多かったものの、近年は規制対応負担の増加や統括機能の見直しなどから拠点整理が進んだと見られます。
2024年調査では一部で内陸部へのシフトの可能性が見られましたが、2026年時点では「陝西省」(58社)、「重慶市」(61社)、「四川省」(93社)など西部・内陸部の主要地域でも企業数は減少しており、沿海部から内陸部へ移転する動きは小規模なものにとどまりました。
業種別動向、製造業と卸売業で大幅減少
業種別(日本国内の事業内容に基づく)で見ると、最も進出企業数が多いのは「製造業」(4206社)で、全体の約4割を占めました。次いで「卸売業」(3320社)、「サービス業」(1213社)が続き、この3業種で全体の約86%を占めています。中国進出企業の大部分が製造業と流通分野に集中する構図に変化はありませんでした。
しかしながら、2024年から2026年にかけては、ほとんどの業種で企業数が減少しています。特に「製造業」は5139社から4206社へと933社減少し、「卸売業」は4218社から3320社へ898社減少となり、進出企業数を大きく押し下げる要因となりました。「サービス業」も1803社から1213社へ590社減少しており、幅広い業種で中国事業の見直しや縮小、撤退が進んでいることが明らかになりました。
製造業では労働集約型業種の縮小が顕著
製造業の内訳を見ると、「一般機械器具製造業」が1005社で最多となり、「電気機械器具製造業」(601社)、「鉄鋼業・非鉄金属・金属製品製造業」(572社)、「その他製造業」(571社)、「化学工業・石油製品等製造業」(357社)が続きました。特に工作機械や電子部品、精密機械、自動車関連部品など、機械製造関連で多く見られました。
一方で、「繊維工業・繊維製品製造業」は2024年の310社から2026年には218社へ大幅に減少したほか、「出版・印刷関連」「家具・装備品製造業」をはじめ、繊維や軽工業分野での減少が目立っています。現地の人件費上昇やサプライチェーン再編の影響を受け、チャイナプラスワンや国内回帰など中国外へ移転・分散した可能性もあります。
卸売業の内訳では、「機械器具卸売業」(997社)をはじめ、2024年から2026年にかけては全体的に減少したものの、依然として1000社規模を維持する業種も多く、中国が生産基地だけでなく調達・販売・物流を担う商流拠点として重要な地位を維持しています。特に「機械器具卸売業」は、製造業の集積地である上海市や江蘇省、広東省への進出も多く、中国市場向けの販売拠点としての役割も担っています。
サービス業ではIT関連の減少が顕著
「サービス業」の内訳では、受託開発ソフトウェアが最も多く、ゲーム開発などパッケージソフトウェアを含めた広告・調査・情報サービス業が約6割・728社を占めましたが、減少幅はサービス業全体で見ても最も大きくなっています。「金融・保険業」は2024年の414社から2026年には343社へ減少したものの、2010年代前半との比較では依然として多く、大手都市銀行や証券会社のほか、中国・アジア地域の統括機能を有する拠点として進出した事業持ち株会社、製造拠点の立地支援や投資管理機能、中国事業統括機能との関連が強いと見られます。
今後の見通し、中長期的に撤退増加の可能性
中国では依然として巨大な消費市場と充実したサプライチェーンを有しており、日本企業にとって重要な事業基盤であることに変わりはありません。しかしながら、近年は米中対立や地政学リスク、中国経済の減速、人件費上昇に加えて、中国企業の台頭による競争の激化なども重なり、中国市場への過度な依存を見直す動きが強まっています。
当面は中国リスクを前提とした対中ビジネスを行うものの、中長期的には中国市場への依存度を引き下げる目的で、現地法人の統合や閉鎖を伴う「中国撤退」の動きが強まる可能性があると分析されています。
出典元:株式会社帝国データバンク
