【第4回】SNS運用を成果につなげるコミュニティ分析入門 「誰に、何を届けるか」からSNS施策の優先順位を決める

前回までの連載では、「ヒト軸(誰が語っているか)」と「コト軸(何が語られているか)」という2つの観点から、UGCを分析する方法をご紹介しました。
【第2回】 「誰がブランドを語っているのか」を把握する
【第3回】 「どんな文脈で語られているか」で競合との差が見える
ヒト軸では、自社ブランドがどのような層から語られているのかを競合と比較し、どの層を狙い、どの層はあえて狙わないのかを考えました。
コト軸では、UGCが生まれている利用場面や選ばれる理由を整理し、自社が強い文脈、競合が先行している文脈、新たに参入する余地がある文脈を確認しました。
最終回では、この2つを掛け合わせて、どの層にどのようなメッセージを届けるべきか、SNS施策の優先順位を決める方法について解説します。
柴岡 幸輝
株式会社ホットリンク
ソリューション営業部 部長
新卒で広告代理店に入社し、デジタル領域のマーケティング支援に従事。その後、インフルエンサーマーケティング専業会社でのクライアント支援を経て、2022年にホットリンクへ入社。アカウント運用・SNS広告・UGC活用を横断した支援経験を積み、現在はソリューション営業部の部長として新規案件の獲得を牽引。2026年6月には、現場で得た知見とノウハウを凝縮した書籍『SNSマーケティング「超」攻略事典88』を発売。
文脈ごとに「誰が語っているか」を見る
まずは、UGCの文脈ごとに、どのような人が語っているかを確認します。
第3回でもご紹介したとおり、似た話題や利用場面、体験を含むUGCをまとめたグループを、本連載では「文脈クラスタ」と呼びます。
今回も冷凍宅配弁当を例に、コト軸分析によって、次のような文脈クラスタが見つかったとします。
- 残業後の夕食
- 在宅勤務中の昼食
- たんぱく質やカロリーの管理
- 家族の食事準備
- 急な残業や体調不良に備えたストック
この文脈クラスタごとに、投稿者の属性や関心、ターゲットとの合致度、フォロワー規模などの「ヒト軸」の情報を重ねます。
すると、「忙しい会社員が、残業後の夕食として語っている」「筋トレ・ボディメイク層が、栄養管理の手段として語っている」といった組み合わせが見えてきます。あわせて、UGCの投稿量や、競合ブランドでは誰からどの程度語られているかも確認します。
重要なのは、同じ文脈でも、誰が語っているかによって施策上の意味が変わることです。
「手軽に食べられる」というUGCが多くても、その大半が自社のターゲットではない層から生まれているのであれば、企業が狙った想起を形成できているとは限りません。
反対に、UGCの数はまだ少なくても、狙ったターゲット層から、意図した利用場面と結びついた投稿が生まれていれば、今後強化する価値のある領域だと考えられます。
狙った層から、狙った文脈で語られているか
前回までと同じ、架空の冷凍宅配弁当ブランドを例に考えてみます。
このブランドは、忙しい会社員や在宅勤務者に、「仕事で時間がない日でも、自分の食事を手軽に整えられるブランド」として選ばれることを目指しているとします。
分析の結果、忙しい会社員や在宅勤務者から、次のようなUGCが生まれていました。
- 残業後でも短時間で夕食を用意できた
- 会議が続く日の昼食に便利だった
- 料理をする時間はないが、外食には頼りたくない日に助かった
この場合、狙ったターゲット層から、狙った利用場面や価値と結びついたUGCが生まれていると判断できます。「忙しい平日の食事を支える」という文脈は、自社の強みとして優先的に伸ばす候補になります。
一方、同じ会社員からの投稿でも、「キャンペーンで当選した」「割引で安く買えた」といった内容に偏っている場合は、ターゲットには届いていても、狙った理由で選ばれているとは言えません。価格やキャンペーン以外に、ブランドを選ぶ理由を十分に形成できていない可能性があります。
また、「栄養バランスを整えやすい」というUGCが多くても、その大半を筋トレ・ボディメイク層が語っているのであれば、当初狙っていた会社員層には、まだその価値が浸透していないと考えられます。
ただし、想定外の層から語られているからといって、直ちに問題と判断する必要はありません。
自社商品に栄養設計やメニュー構成の強みがあり、競合と戦えるのであれば、新たなターゲット候補として検討できます。勝ち目が薄いのであれば、無理に広げず、すでに強い会社員・在宅勤務者向けの文脈に集中して施策を行うことも戦略です。
優先順位を4つのパターンに整理する
施策の優先順位を決める際は、文脈クラスタごとに、投稿者が自社のターゲットとどの程度一致しているかを確認します。投稿者のフォロワー規模やUGCの投稿量、自社と競合のどちらで多く語られているか、商品特性と合っているかも見ていきましょう。
ただし、フォロワー数が多ければ、優先度が高いというわけではありません。
フォロワー数が少ないユーザーでも、身近な人との強いつながりの中で、商品選びに影響を与えている場合があります。フォロワー規模は、投稿者の価値を決めるものではなく、UGCが生まれているコミュニティの特徴を理解するための一つの情報です。
それを踏まえ、文脈クラスタを次の4つのパターンに整理します。
優先して強化するクラスタ
自社が狙うターゲット層から、自社の強みとなる文脈でUGCが生まれている状態です。さらに、一定の投稿量があり、競合と比べても自社から多く生まれているのであれば、優先的に強化する候補になります。
冷凍宅配弁当の例では、忙しい会社員や在宅勤務者が、「残業後の夕食を短時間で用意できる」という文脈で語っている状態が該当します。生活者が実際に使っている言葉や利用場面を、投稿や広告にも反映し、現在の強みをさらに伸ばします。
今後育てるクラスタ
狙ったターゲット層から、意図した文脈で語られているものの、UGCの投稿量や広がりがまだ限定的な状態です。
たとえば、忙しい会社員から「外食に頼らず、栄養バランスを整えられる」と語られ始めているものの、投稿数はまだ多くない場合です。商品との親和性が高く、自社ならではの強みになり得るのであれば、今後育てる価値があります。
利用場面を具体的に示す、既存のUGCを紹介する、体験を共有しやすい企画を行うなど、UGCが生まれやすい環境を整えます。
参入するか見極めるクラスタ
一定の投稿量や広がりはあるものの、自社が現在狙っているターゲットや文脈との一致度が低い状態です。
冷凍宅配弁当の例では、筋トレ・ボディメイク層から、「たんぱく質を取りやすい食事」として語られている場合が該当します。この層を新たに狙うかどうかは、自社がその領域で競合に勝てるかを見極めて判断します。
商品特性やブランドの強みを活かせるのであれば、訴求や広告配信を小さく試します。優位性を発揮しにくい場合は、話題が広がっていても、あえて同じ領域を狙わないことが重要です。
現時点では優先しないクラスタ
自社が狙うターゲットや文脈と一致せず、UGCの広がりも限定されている状態です。このクラスタに過度な投資をする優先度は高くありません。
たとえば、一人分の食事に適した商品が、家族全員の食事準備という文脈でわずかに語られていたとしても、商品設計と合わなければ、無理に取りに行く必要はありません。
ただし、今後の商品展開や事業方針によっては活用できる可能性もあるため、必要に応じて動向を確認します。
投稿量だけで優先順位を決めない
UGCの投稿量は、文脈の大きさや広がりを把握するうえで重要な情報です。
しかし、投稿量が多いクラスタを、そのまま最優先にするわけではありません。「セールで安く買えた」というUGCが多くても、価格以外の選ばれる理由が形成されていなければ、自社ならではの強みにはなりにくいと考えられます。
一方、「残業後の食事を短時間で用意できた」というUGCの数がまだ少なくても、自社が狙う会社員層から生まれ、競合ではあまり見られないのであれば、今後強化する価値があります。
見るべきなのは、次のような点です。
- 狙ったターゲット層から生まれているか
- 自社が強化したい文脈と一致しているか
- 競合と比べて、自社の強みが現れた語られ方をしているか
- 商品やブランドの強みを活かせるか
- 継続的に選ばれる理由になり得るか
UGCの量だけではなく、「誰から、どのような理由で生まれているか」まで確認して、優先順位を決めます。
分析結果をSNS運用にどう反映するか
優先するターゲット層と文脈が決まると、SNS運用の打ち手も具体化しやすくなります。
投稿テーマや切り口を決める
優先するクラスタで語られている利用場面や選ばれる理由を、投稿テーマに反映します。
「忙しい平日の食事」を強化するのであれば、残業後、会議が続く日、在宅勤務中など、商品が必要になる場面を具体的に示します。
また、実際のUGCで使われている言葉を参考にすることで、企業側の一方的な訴求ではなく、生活者の実感に近いコンテンツをつくりやすくなります。
広告の配信先と訴求をそろえる
誰に、どの文脈を届けるかが明確になれば、広告の配信対象とクリエイティブをそろえやすくなります。
忙しい会社員に対して、単に「おいしい冷凍宅配弁当」と伝えるのではなく、「帰宅が遅くなった日でも、短時間で食事を用意できる」といった、その層の利用場面に合ったメッセージを届けます。
新たなターゲットや文脈を検討する場合は、最初から大きく投資するのではなく、少額の広告などで反応を確認する方法もあります。
インフルエンサーやタイアップ先を選ぶ
フォロワー数の多さだけではなく、自社が強化したいコミュニティや文脈との相性を見て選びます。
忙しい会社員への浸透を狙うのであれば、仕事と生活の両立や、在宅勤務中の食事について日常的に発信している人などが候補になります。起用する人の属性だけでなく、普段どのような文脈で商品や生活について語っているかまで確認することが重要です。
予算や施策の比重を決める
自社がすでに強いクラスタには、継続的に投資して強みを維持します。
今後育てたい領域や、新たに参入する領域は、小さく試し、反応を確認してから投資を広げます。自社が勝ちにくい領域には過度な予算をかけず、現在の強みに集中します。
すべてのターゲットや文脈、施策へ均等に投資するのではなく、強化する領域、検証する領域、現時点では狙わない領域を分けることが大切です。
施策後の変化を確認する
コミュニティの構成や、ブランドの語られ方は固定されたものではありません。施策や季節、新商品の発売、競合の動きなどによって、UGCを生み出す人や文脈は変化します。
分析は、一度実施して終わりではありません。施策後に、狙った層や文脈が実際に動いたのかまで確認することが重要です。たとえば、「忙しい平日の食事」という切り口で投稿や広告を強化したのであれば、単に投稿数やインプレッションが伸びたかを見るだけでは不十分です。
次のような変化が起きているかを確認しましょう。
- 忙しい会社員や在宅勤務者からのUGCが増えたか
- 残業後や在宅勤務中といった利用場面が語られるようになったか
- 価格やキャンペーンだけでなく、商品を選ぶ理由が語られているか
- 競合と比べて、自社ならではの文脈として定着し始めているか
投稿数が増えても、語っている層や文脈に変化がなければ、届け方や訴求内容を見直す必要があります。
どの施策によって、誰から、どのようなUGCが生まれたのかを継続的に確認することで、自社にとっての勝ちパターンを言語化し、次の施策に活かせるようになります。
まとめ
「誰が語っているか」と「何が語られているか」を掛け合わせることで、誰に、どのようなメッセージを届けるべきかが具体的になります。
自社がすでに強い領域を伸ばすのか、競合が先行する領域へ参入するのか、新しい領域を小さく検証するのか、あるいはあえて狙わないのか。どこに、何を、どの程度投資するのかを決めることが、分析の役割です。
全4回にわたり、UGCを「多軸コミュニティ分析」で読み解き、SNS運用の意思決定につなげる考え方をお伝えしてきました。
分析は、現状を把握するためのゴールではなく、次の施策を決めるための起点です。まずは、自社ブランドが「誰から、どのような文脈で語られているか」を確認するところから始めてみてください。
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