
ドイツ・ボン発:DHL eCommerceが実施した最新の調査により、近い将来AIが人間に代わって買い物を行う時代の到来が現実味を帯びてきたことが明らかになりました。サステナビリティは「あることが望ましい」という位置づけから「必須」の要件へと変化しており、中古品のオンライン取引が急速に一般化している実態が浮き彫りになっています。
「2026年版 Eコマーストレンドレポート」では、世界29カ国の消費者2万9,000人とEC事業者5,800社を対象とした大規模調査が実施され、EC事業者が今後直面すべき変化や、競争が激しさを増す市場において勝ち残るための知見が示されています。
消費者の行動様式は急激に変化しており、「消費者が望むもの」と「EC事業者が提供可能なもの」の間のギャップは拡大し続けています。AIは購買体験を根底から変革しながら、Eコマース全体におけるイノベーションを推進しています。これまでのECフォーマットは既に揺らぎ始めており、最終的にはECサイトそのものの形態が大幅に変わる可能性も指摘されています。変化し続ける市場において消費者のロイヤルティを確保するためには、スピードを追求するだけでは不十分であり、チェックアウト時における信頼性、多様な決済手段の提供、そして各地域に適した配送の利便性を向上させることが不可欠となっています。
DHL eCommerceのCEOであるパブロ・チアーノ氏は、「消費者のニーズを把握し、適切に対応する能力が成功の要因であることに変わりはありません。しかしながら、今回のレポートが明らかにしているのは、AIがその競争上の優位性を現在では超高速で書き換えているという現実です。消費者はミリ秒単位で最適なオファーを選択できるようになり、EC事業者側も変動する需要にリアルタイムで対応可能になりました。ECの配送インフラを支えるDHLにとって、AIはスピード・柔軟性・精度において新たな次元を開拓するものです。この新時代において勝利を収めるのは、誰よりも迅速に行動し、そのスピードを卓越した顧客体験へと転換できる企業です」とコメントしています。
DHL eCommerceと応用未来学者のトム・チーズライト氏は、EC事業者が見逃すことのできない短期・長期における主要なトレンドを特定しています。
消費者側とEC事業者側におけるAI機能の導入度
この記事の目次
次世代のオンラインショッパーは「人間以外」の可能性
消費者の約3分の1にあたる29%が、5年以内にAIに対して商品選択や購入決定を委ねても構わないと回答しています。特にZ世代では33%、ミレニアル世代では36%がこの考えを持っています。また、事業者側の約3分の2にあたる59%が、将来的には消費者がバーチャルアシスタントを介して商品を検索し、購入するようになると予測しています。
生成AIが商品探索から購入後のカスタマーサポートまで、購買体験全体を変革していく中で、事業者の73%が今後5年間でAI活用をさらに拡充する方針を示しています。その一方で、プライバシーやセキュリティに対する懸念を抱く消費者は依然として48%に達しています。
ECにおけるAIの将来性について、チーズライト氏は次のように見解を述べています。「オープンソースAIエージェントの台頭は、日常の煩わしい作業を代行してくれる『本物のAIアシスタント』に対する需要がいかに大きいかを物語っています。この流れは今後さらに加速するでしょう。やがてショップやブランドは、ウェブサイトやアプリに取って代わる『ボット・フロント』を運営するようになる可能性があります。AIが消費者のアシスタントと直接コミュニケーションを取り、最適な条件を交渉して購入を完結させる世界が現実のものとなるでしょう」
自宅外配送(OOH)が新たな標準へ
消費者が配送に対して期待するのは、一貫して「利便性」と「選択できる柔軟性」です。「配送が速くなれば購入意欲が高まる」と回答したショッパーは20%にとどまっている一方で、10人に3人が宅配ボックスや店頭での受け取りといった自宅外配送(OOH)を日常的に利用しています。
チーズライト氏は「柔軟な配送オプションへのニーズは今後も増大し続け、自宅外での配送・返品拠点の整備が一層進展する」と見通しを示しています。この潮流に適切に対応するためには、柔軟性・信頼性・利便性に優れた受け取り・返品体制の構築が求められます。
無料配送・無料返品は現在でも購買意欲を促進する重要なファクターですが、EC事業者にとってはコストとマージンを圧迫し続ける課題でもあります。さらに、消費者の10人に7人が「どの配送会社を利用するかがブランド選択に影響を与える」と答えており、配送パートナーの信頼性が購買判断に直結していることが明らかになっています。
デジタルチェックアウトにおいても認識のギャップが確認されています。「希望する決済手段がなければ即座に購入を中止する」と回答したショッパーは62%に上る一方で、これをカート放棄の主要因と認識しているEC事業者は45%にとどまっています。
消費者がオンライン出品で販売した仕向け国トップ10ランキングおよび使用した送付手段
自宅が「サステナブルな販売拠点」へと変化
消費者と販売者の境界線は確実に曖昧になっています。C2C(個人間取引)による中古品売買がいよいよ主流となりつつあり、消費者の2人に1人にあたる52%がオンラインマーケットプレイスで商品を出品した経験を持っています。世代別で見ると、ミレニアル世代が62%、Z世代が58%、ベビーブーマー世代が35%となっています。地域別ではヨーロッパが最も活発で、57%がマーケットプレイスでの販売経験があると回答しています。
購買行動の観点では、ショッパーの45%が「環境への配慮から中古品・再生品を選択している」と回答し、さらに15%が「今後試してみたい」と答えています。
チーズライト氏は「10年以内に、成人の4分の3が家具・ファッション・テクノロジー製品をマーケットプレイスでリサイクル・リセールするようになる」と予測しています。その背景には、生活コストの上昇への対応から環境負荷を低減したいという意識まで、多様な動機が存在しています。
EC事業者にとってこれが意味するのは、競争環境の根本的な変化です。従来の競合は他ブランドでしたが、現在では消費者自身が販売者として市場に参入しており、ターゲット層と競合が重複する新しい構図が形成されています。
サステナブル物流に関しても、従来は「他社との差別化要素」として位置づけられていましたが、消費者の42%が5年以内に「業界標準」となると見込んでいます。
2026年版DHL Eコマーストレンドレポートについて
本レポートは、欧州・北米・アジア太平洋・中南米・中東・サブサハラアフリカの29カ国を対象として、消費者2万9,000人とEC事業者5,800社への調査をベースに作成されました。購買者・事業者の双方の視点を統合することで、変化する市場環境に適応するための実践的なインサイトが提供されています。
出典元:DHL eCommerce












