
Alphabet(Googleの持株会社)は、2026年第1四半期決算を発表しました。売上高は1,099億ドル(前年同期比22%増)、営業利益は396億ドル(同30%増)となり、2桁成長を維持しています。
検索広告を含む「Search & Other」は19%増と引き続き成長を牽引し、YouTube広告も11%増と拡大しました。Google Cloudは前年同期比63%増と高い伸びを示しており、主要事業がそろって成長しています。
こうした中、生成AIの活用による検索体験の変化も進んでおり、検索利用の拡大とともに広告や購買体験への影響が見られます。

この記事の目次
検索は「拡張」へ、AIによりクエリは過去最高に
AI機能の導入で検索体験が変化
AI OverviewsやAI Modeの導入により、検索体験は従来のキーワード入力中心から、より文脈を含んだ対話型へと変化しています。ユーザーは断片的な単語ではなく、より具体的で複雑な質問をそのまま入力する傾向が強まっているとのことです。
こうしたAI機能の拡張により、検索は単なる情報取得の手段にとどまらず、意思決定を支援するプロセスへと広がりつつあります。
クエリ増加と売上成長の関係
AIによる検索体験の変化を背景に、検索クエリ数は過去最高を更新しました。長文クエリや複雑な検索ニーズに対応できるようになったことで、検索の利用シーンが広がっている状況です。
こうした利用拡大は業績にも反映されています。検索広告を含む「Search & Other」の売上は前年同期比19%増の603億ドルとなり、引き続き主力収益源として成長を維持しました。検索体験の変化が、利用増加と収益成長の双方につながっている点が今回の特徴です。
AI導入とコスト効率の改善
AI機能の拡張と並行し、検索の効率化にも取り組んでいます。AI OverviewsやAI Modeでは、応答速度の改善やコスト削減が進んでいます。AI活用に伴う運用負荷の増加を抑える狙いです。
同社は、AI機能を検索結果に組み込みながらもコスト構造の改善を図っていると説明しており、大規模なユーザー基盤に対応するため、スケーラビリティの確保が進められています。このように、検索は機能面と効率面の双方で進化しています。
検索から購入までの一体化が進む「エージェント型コマース」
検索内で完結する購買体験の検証
AI Modeでは、ユーザーの質問に応じて商品提案や比較を行い、条件によっては購入につながる体験の検証が進められています。
具体的には、「どの商品を選ぶべきか」という意思決定のプロセスを検索結果内で支援する形です。商品情報の提示にとどまらず、比較や選択を経て購入に進む一連の流れを一つの体験として扱う設計が検討されています。
こうした取り組みは試験的な段階にあるものの、従来は複数サイトを横断して行っていた購買プロセスを、検索の中で完結させる方向で開発が続けられています。
エージェントによる意思決定支援の位置づけ
同社は、こうした購買体験を「エージェント型」として位置づけています。ユーザーがすべての情報を自ら収集・比較するのではなく、AIがそのプロセスを補助する形です。
カンファレンスコールでは、検索において「agentic workflows(エージェント的な処理)」を導入する方針が示されており、ユーザーの行動を支援する機能の拡張が図られています。
このアプローチでは、商品選定の効率化に加え、比較や判断にかかる負担の軽減も狙いとされています。
リテールが検索成長を牽引、コマースとの接続が強化
このような変化の中でも検索広告は引き続き成長しています。特にリテール分野は主要な成長ドライバーとされており、検索とコマースの結びつきが強まっている状況です。
検索の利用が拡大する中で、リテール分野がSearch & Otherの成長を牽引しており、検索とコマースの接点が業績面でも重要になっていることがうかがえます。AIによる検索体験の変化が、結果としてコマース領域の利用拡大にもつながっている構造です。こうした動きを支える取り組みとして、標準化に向けた動きも見られます。
業界横断で進む標準化「UCP」
エージェント型コマースを支える共通仕様
検索から購入までを一体化する動きの中で、その基盤として位置づけられているのがUniversal Commerce Protocol(UCP)です。
UCPは、商品発見、比較、購入、さらには購入後のサポートまでを一貫して扱うための共通仕様として開発されています。従来は検索、ECサイト、決済といった機能が個別に分かれていましたが、それらを連携させるための標準化の取り組みです。
同社は、エージェント型コマースでは複数のサービスやプラットフォームの連携が前提になるとの認識を示しています。
AmazonやShopifyなど主要プレイヤーが参加
UCPの特徴の一つが、参加企業の広がりです。発表では、ShopifyやEtsy、Target、Wayfairに加え、Amazon、Meta、Microsoft、Salesforce、Stripeといった企業が参画していることが明らかにされています。
これらの企業は、商品データ、決済、広告、顧客接点など異なる役割を担っています。UCPは、こうしたプレイヤー間のデータ連携や機能接続を前提とした設計です。
検索・EC・決済を横断した体験設計
UCPの導入により想定されているのは、検索から購入、さらに購入後までが分断されない一連の体験です。
例えば、検索結果で提示された商品をそのまま比較・選択し、外部サイトに遷移することなく購入まで進む形が検討されています。この際、商品情報や在庫、価格、決済情報などが複数の事業者間で連携される前提です。
現時点では検証段階にありますが、コマース体験の設計は個別サービスからエコシステム全体へと広がりつつあります。
広告は「意図理解」を軸に進化、購買文脈との接続が強化
Geminiによる意図理解の高度化
同社はAIモデル「Gemini」を広告基盤全体に適用し、ユーザーの検索意図の理解を高度化しています。
従来はキーワード単位でのマッチングが中心でしたが、現在は検索文全体の文脈やユーザーの行動履歴などを踏まえ、より適切な広告を表示する仕組みへと進化。これにより、従来は捉えきれなかった複雑な検索意図にも対応できるようになっています。
また、DiscoverやMapsといったサービスにおいても、ユーザーの興味関心や位置情報などをもとに広告の関連性を高める取り組みが行われています。
広告運用の自動化と成果の向上
広告主向けの機能においてもAIの活用が進んでいます。「AI Max」や「Performance Max」といったAI活用型キャンペーンの提供が行われており、広告配信の最適化が自動化されています。実際に、検索広告の出稿においては、すでに3割以上がAI活用型キャンペーンを利用しているとされているとのこと。
これにより、広告主はより少ない設定で効率的に配信を行うことが可能となり、同じ予算でより多くのコンバージョンを獲得できるケースが増えていると説明されています。
購買プロセス内に組み込まれる広告
検索体験の変化に伴い、広告の表示位置や役割も変わりつつあります。AI Modeでは、商品提案と連動した新たな広告フォーマットの検証が進められており、ユーザーの購買検討プロセスの中で広告が表示される形が模索されているのです。
例えば、AIが提示した商品に対して、それを販売する事業者の情報が広告として表示される仕組みなどが検討されています。これにより、広告は単なる誘導ではなく、意思決定を支援する情報として組み込まれる方向にあります。
YouTubeを含めたマルチチャネルでの購買接点
広告の役割は検索にとどまりません。YouTube広告は前年同期比11%増の99億ドルとなり、特にダイレクトレスポンス広告が成長を牽引しました。動画コンテンツを通じて商品理解を促し、その後の購買につなげる流れが拡大しています。
また、同社はクリエイターと広告主を結びつける仕組みの強化も進めており、ブランドとユーザーの接点は多様化しています。
クラウドは63%増、AI需要が企業側の変化を促進
売上63%増、AI関連需要が成長を牽引
Google Cloudの2026年第1四半期の売上は200億ドルとなり、前年同期比63%増と大きく伸長しました。同社のセグメントの中でも最も高い成長率となっており、クラウド事業の拡大が全体の成長を押し上げています。
この成長の背景として、同社はAIソリューションおよびAIインフラ需要の拡大を挙げています。特に、Google Cloud Platform(GCP)におけるAI関連サービスの利用が増加しているとのことです。
AIソリューションが新たな成長ドライバーに
カンファレンスコールでは、クラウド事業の成長においてAIソリューションが主要なドライバーとなっていることが示されました。
企業は生成AIモデルの活用に加え、データ分析や業務効率化、セキュリティ対策など、さまざまな領域でAI導入を進めています。これに伴い、モデルの実行基盤やデータ処理基盤としてクラウドの利用が拡大している状況です。
また、同社は自社開発のTPUやGPUなどのインフラを提供しており、AIワークロードに最適化された環境を構築している点も特徴です。
AIインフラ需要の増加と供給制約
一方で、AI需要の急拡大により、インフラ供給には制約も生じています。クラウド事業について「需要を完全には満たせていない」状況にあると説明しており、供給能力の拡張が課題となっています。
このため、データセンターやサーバーへの投資を拡大し、AIインフラの供給体制を強化しています。企業のAI活用が進む中で、それを支える基盤としてクラウドの重要性が一段と高まっています。
まとめ:AIを軸に検索・広告・購買が連動
今回の決算では、AIの導入によって検索の利用が拡大し、その変化が広告やコマース領域にも波及していることが示されました。
検索においては、対話型の利用が進むことでクエリが増加し、収益成長につながっています。広告では、ユーザーの意図理解を軸とした最適化が進み、購買検討のプロセスの中で機能する形へと変化が見られます。
また、検索と購買の接続を前提とした取り組みとして、エージェント型コマースやUCPの検証・導入が進められており、商品発見から購入までの流れを一体化する動きが広がりつつあります。
さらに、クラウドの成長に見られるように、企業側でもAI活用が進展しており、その需要を支える基盤としてインフラ投資が拡大しています。
このように、検索、広告、購買、クラウドといった各領域が個別に進化するのではなく、AIを軸に相互に連動している点が今回の決算の特徴といえるでしょう。
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