既によく知られた存在「Temu」その解像度を上げて実態に迫る

(株)デジタルコマース総合研究所代表でECアナリストの本谷(もとたに)と申します。EC業界の調査研究、消費財のマーケット分析、および経営戦略のアドバイスなどを行っている者です。日々EC市場をウォッチしている立場から、私は消費者、ならびにECで商品を販売したい事業者双方にとって近年新たな選択肢となっている「Temu」に注目しています。

Temuへの注目度を高めている理由ですが、意外にもというと失礼になるかもしれませんがTemuの利用者数は実は多く、流通総額も想像以上に大きいことがわかっているためです。また多くの事業者は、Temuの利用者像を「リーズナブルな商品を求める消費者」というイメージで捉えているように思います。しかし利用者の属性が実はとても興味深く、そのことも私が注目度を高めている大きな、そして客観的な理由です。

そこで本コラムではTemuの利用者属性や流通総額などの実態について、一部TikTok Shopのデータも交えながら紹介し、ECモールとしての解像度を上げてみたいと思います。私なりの視点でTemuに対する考察を加味していますので、ご参考いただければ嬉しい限りです。

この記事の執筆者

本谷 知彦
株式会社デジタルコマース総合研究所
代表取締役  ECアナリスト

大和総研にて国内外の産業調査・コンサルティング業務にチーフコンサルタントとして従事。EC業界のスタンダードな調査レポートである経済産業省の電子商取引市場調査を2014年から2020年にかけて7年連続で責任者として手掛ける。その他日本政府の調査研究案件の実績多数。
2021年末に退職後、2022年初に株式会社デジタルコマース総合研究所を設立。EC市場の調査研究、消費財のマーケット分析、事業戦略のアドバイス、および講演・執筆活動等を行っている。

既存の主要ECモールとは別物としてのTemuへの新たな需要

Temuの詳細な話の前に、まずは日本のEC市場の実態について一点お話しさせてください。次のグラフは国内の主要ECモール合計の推計流通総額の推移に関するものです。ここで言う主要ECモールとは、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、au PAYマーケット、Qoo10,ZOZOTOWNの6モールを指します。

コロナ禍の2020年、2021年に急増していますが、その後も衰えることなく流通総額は増え続けています。ここでTemuが開始された2023年7月というタイミングに着目いただきたいのですが、Temuを除くそれら主要ECモールの合計流通総額はご覧の通り減ってはいません。つまりこれから先はわかりませんが、これまでのところTemuはそれらと真っ向から競合しているわけではなく、新しい需要が掘り起こされていると私は捉えています。

主要ECモール合計の流通総額の推移 (単位:億円)
出所:株式会社デジタルコマース総合研究所推計

利用者の年齢構成はバランスが取れている状態

Temuの利用者の年齢構成を見てみましょう。ここでは同じく新興勢であるTikTok Shopのデータも併せて紹介したいと思います。

Temuはグラフの通り、30代が15%とやや低いものの、全体的にバランスのとれた年齢構成となっています。Temuは比較的若者層に人気があるECモールのように思われる方がいらっしゃるかもしれません。しかし40代23%、50代23%となっており、また60代も21%を占めているなどシニア層も好んで利用していることがわかります。

一方TikTok Shopですが、studio15株式会社の調査によれば、35歳~44歳が28%と最も比率が高く、次いで45歳~54歳が26%、25歳~34歳が23%となっています。TikTok ShopもTemu同様、若者層に人気があると思われるかもしれませんが、ご覧の通りむしろ中高年層が好んで利用しているようです。年齢構成のバランスの点ではTikTok Shopは25歳~55歳が中心である一方、TemuはTikTok Shopよりもフラットな年齢構成となっている点が特徴的です。

出所:
※1 イプソス「オンラインショッピング実態調査」調査時期:2025年6月 n=2,000
※2 studio15株式会社「TikTok Shop日本市場白書2025」のプレスリリースを参照

利用者数は5,721万人とAmazon、楽天に引けを取らず

では利用者数はどうでしょうか?ニールセン・デジタルの調べでは、2025年の平均月間利用者数についてAmazonは6,804万人、楽天は7,215万人です。一方Temuは5,721万人と発表されており、Amazon、楽天市場と比較しても見劣りしません。

ただし、この数値には単にWebサイトにアクセスしただけの人も含まれています。ですがその点を差し引いても相当数の消費者がTemuで購入していることが容易に想像できます。

なおTikTok Shopですが、月間利用者数は最大で2,000万人と私は見ています。まだ2025年6月末に始まったばかりですし、もとよりTikTok自体のユニークユーザー数は4,000万人に達していることもあって、相応のポテンシャルはあるものと思われます。

出所:
※3 ニールセン・デジタル株式会社発表のデータを参照
※4 株式会社デジタルコマース総合研究所推定

日本での流通総額は4,200億円と巨大

続いては流通総額です。Temu自身から公式発表はありませんが、ドイツに拠点を構えるデータ調査会社「ECDB」によれば、2024年の全世界のTemuの流通総額は475億USDと推計されています。そのうち日本は5.9%のシェアとなっており、計算すると28億USDとなります。1USDを150円として計算すると、日本での流通総額は実に4,200億円と巨大です。

なお参考までに楽天市場は約4兆円(※当社推計による物販のみの数値)ですので、4,200億円という推計値が正しければ、その規模は楽天の10分の1といったところでしょうか。楽天と比較すると一見小さく感じるかも知れません。しかし4,200億円は相当な規模であることに変わりはありませんし、今後さらに伸びることでしょう。

ちなみにTikTok Shopについて、私は2026年の日本での流通総額は最終的に1,500億円あたりで着地すると見ています。TikTok Shopは「ソーシャルコマース」ですので、一概に両者の流通総額を単純比較するわけにはいきませんが、その点をいったん脇においても、やはりTemuの規模が相当大きいことを理解できるでしょう。

出所:ECDB発表のデータを基に算出

特定の商品カテゴリーだけに人気が偏らず購入ニーズは均等

推定で4,200億円とみられる流通総額ですが、消費者はいったい何を購入しているのでしょうか?次のグラフの通り、最も購入されているのは「衣料品・靴」で58%、次いで「インテリア・家具・生活雑貨」40%、「家電製品」25%、「アクセサリー・貴金属」24%、「スポーツ用品」21%、「アウトドア用品」20%となっています。Temuのユーザー層が多様であることを裏付けるデータです。

ただし、これらはあくまでも回答率です。ここで日本のAmazonの平均購入単価を見てみると、アパレル(メンズ、レディース)は3,220円、インテリア・家具・生活雑貨は3,064円に対し、家電は5,782円、スポーツ・アウトドア用品は4,539円と高額です(※Nint ECommerceを参照)。したがって金額ベースで考えれば、商品カテゴリーの人気に偏りがあるわけではなく購入ニーズは均等と見てよいでしょう。

加えて言うならば、「家電製品」は男性で32%、「アクセサリー・貴金属」は女性で30%、「スポーツ用品」は男性で29%となっており、性別で異なる消費者ニーズにうまく対応できているように見えます。この点も他のECモール同様にバランスが取れていることの証でしょう。

イプソス「オンラインショッピング実態調査」調査時期:2025年6月 n=2,000

参考までに私の推計では、TikTok Shopのカテゴリー毎の売上高構成は「食品・飲料」26%、「コスメ・ビューティ」21%、「家電製品」20%、「アパレル・服飾雑貨」15%となっています。こちらも比較的バランスのとれた構成となっています。

Temuの利用者像は「スマートショッパー」

Temuの利用者属性について掘り下げてみましょう。次のグラフは「Temu利用者」と「Temuを含むEC利用者全体」について比較したものです。このなかでまずは「平均世帯年収」に着目してください。Temuというと収入がそれほど高くない消費者が頻繁に利用しているイメージを抱いている方は多いかもしれません。しかし実際にはそうではないことがわかります。

続いて「ECを月1回以上利用する」「EC支出増を見込んでいる」「価格を(常に+よく)比較する」に着目してください。いずれもTemu利用者の方がEC利用者全体を上回っており、ECを積極的に活用する消費者ほど好んでTemuを利用していることがわかります。

以上の2点を踏まえれば、Temuの利用者像は「賢く買い物をするヒト」とでも言えるでしょうか。そのような消費者のことをマーケティングの世界では「Smart Shopper(スマートショッパー)」と表現することがあります。まさにその表現に合った消費者がTemuをよく利用していると言えそうです。Temuのユーザー層はセール時期をただ待つ受動的な消費者ではなく、理性的に判断してスマートに買い物する消費者であると言えます。

「Temu利用者」と「Temuを含むEC利用者全体」の属性比較
出所:イプソス「オンラインショッピング実態調査」調査時期:2025年6月 n=2,000

日本でこれからTemuはどう歩むのか?

本コラムで述べてきた点を次の通り整理します。

さて、最後にこれから先Temuが日本でどう歩もうとしているかについて、個人的に注目している動向に関して触れさせていただきたいと思います。ポイントはふたつです。

1点目は「国内セラーの開拓」です。2025年5月より同社は日本の販売事業者(セラー)の開拓に力を注いでいるようです。咋秋の日本経済新聞の報道によれば、月に1,000件以上のペースで増えているとのことです。越境ECと国内ECを組み合わせた「ハイブリッド型ECモール」の様相を呈しはじめており、これから先のセラーサイドの動向に着目したいと思っています。

2点目は「信頼の基礎固め」です。2026年に入り同社は次の動きを見せています。

  • 消費者庁が主導する「製品安全誓約」に署名
  • 世界的な試験・検査・認証機関のDEKRA(デクラ)と提携
  • 知財保護の観点で国際模倣対策連合(IACC)に加盟

※各々プレスリリース参照:https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/151947

これらの動きはTemuが急速な拡大から、信頼性の構築へと長期的な投資を始めた表れであり、同社が守りを強化しようとしているように思われます。日本市場で信頼を深めることは、同プラットフォームが次のステージへと踏み出す重要な一歩です。こちらについてもその効果がどのように発揮されるのかについて、私は着目しています。

▼Temuのセラー募集プログラム
https://jp.seller.temu.com/

▼株式会社デジタルコマース総合研究所
https://dcri.jp/

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