
株式会社日本SPセンターが運営するコンテンツマーケティング・アカデミーは、国内のコンテンツマーケティング運営実態を把握する「コンテンツマーケティング・サーベイ(CM-SURVEY)」を毎年実施しています。
第5回目となる「CM-SURVEY 2025」では、調査期間を2025年11月18日から2026年1月31日に設定し、コンテンツマーケティングの実務担当者65名(B2B企業:36名、B2C企業:29名)を対象に調査が行われました。調査項目は、チーム体制・戦略・予算・施策に加えて、今回初めてAI検索(Google AI Overviews、ChatGPT、Perplexityなど)が業務へ及ぼす影響について定量的に調査されました。国内でコンテンツマーケティング実務者を対象にAI検索の影響を定量調査した初めてのレポートとなっています。
この記事の目次
調査結果のポイント
今回の調査で明らかになった主要な発見事項は5つあります。
第一に、約6割の企業がAI検索の影響を実感しており、最も多い影響は「検索流入・訪問数の減少」でした。「すでに影響が出ている」または「一部で影響を感じている」と回答した企業は合計で約6割に達しており、B2B・B2C共に「検索流入・訪問数が減少した」という回答が最多となりました。一方で、「AIに引用・要約され認知が向上した」というポジティブな影響を感じている層も約1割存在しています。
第二に、対策意向は8割を超えていますが、B2Bでは「特に対策していない」企業が2割に達しています。AI検索への追加対策に前向きな層はB2Bで80.5%、B2Cで82.7%でした。しかし「特に対策していない・必要性がわからない」と回答した企業はB2Bで20.0%と、B2Cの9.2%の2倍以上となっており、危機意識の差が明確になっています。
第三に、AI検索対策として「一次情報の強化」よりも「Q&Aナレッジ型コンテンツ」の方が成果実感で上回る結果となりました。取り組み企業数が最も多い「一次情報・専門知見の強化」の成果実感はB2Bで64.7%、B2Cで63.2%でしたが、「Q&Aナレッジ型コンテンツ」ではB2Bで87.5%、B2Cで75.0%と20ポイント以上高い結果になっています。
第四に、B2BとB2Cで外注トレンドが逆方向に動いています。B2Bの外注比率は63.9%(前年比約6ポイント低下)と内製化が進展している一方、B2Cは75.9%(前年比約6ポイント上昇)と外部依存が強まっており、事業形態による戦略の違いが鮮明になっています。
第五に、テキスト生成AIツールが主要ツールの一角へと成長しました。テクノロジー活用においてB2Bの29.2%(19名)が「テキスト生成AIツール」を活用しており、前回調査では少数派だったAIツールが1年間で主流ツール群に仲間入りしました。
約6割がAI検索の影響を実感、影響認識層は成果実感も84.6%
AI検索(Google AI Overviews、AIモード、ChatGPT、Perplexityなど)が自社コンテンツへ与えている影響について質問したところ、「すでに影響が出ている」と「一部で影響を感じている」を合わせた回答は、B2Bで約61%、B2Cで約63%となり、いずれも約6割の企業がAI検索の影響を体感していることが分かりました。
特に注目すべきは、AI検索による影響認識とコンテンツマーケティングの成果の相関関係です。B2B企業においてAI検索が自社コンテンツに与える影響について「すでに影響が出ている」と回答した層(13名)のうち、「コンテンツマーケティングでビジネス上の成果をあげている」と回答したのは84.6%と高い水準を示しました。AI検索の影響を早期に認識して対応している企業ほど、コンテンツマーケティングの成果につながっている傾向が明確に表れています。一方、「よくわからない・判断できない」と回答した層の成果実感はB2Bで60.0%、B2Cで85.8%と差が見られ、AI検索への感度を高めて自社コンテンツへの影響を把握・対応していくことが今後の成果向上につながると考えられます。
最も実感されている影響は「検索流入・訪問数の減少」、一方で「認知向上」も約1割
AI検索の影響として特に実感していることを尋ねたところ、最も多かったのは「検索流入・訪問数が減少した」(B2B 13名、B2C 12名)で、AI検索によるトラフィック減少が広く体感されています。
一方、「自社の情報がAIに引用・要約され、認知が向上した」と回答した層もB2Bで9名、B2Cで7名おり、この層のコンテンツマーケティングにおけるビジネス上の成果実感はB2Bで66.7%、B2Cで57.2%と比較的高い水準にあります。AI検索をリスクとして捉えるだけではなく、AIに引用・参照されやすいコンテンツ設計を意識することが、AI検索時代における成果向上につながると考えられます。
「一次情報の強化」より「Q&Aナレッジ型」が成果実感で20ポイント超の差
現在実施している、または優先的に検討しているAI検索対策を複数選択で質問したところ、取り組み企業数が最も多かったのは「一次情報・専門知見の強化」(B2B 17名、B2C 19名)でした。しかし、この対策でのコンテンツマーケティングにおけるビジネス上の成果実感はB2Bで64.7%、B2Cで63.2%にとどまっています。
取り組み企業数は少ないものの、「Q&Aナレッジ型コンテンツの導入・強化」(B2B 8名、B2C 8名)では成果実感がB2Bで87.5%、B2Cで75.0%と、一次情報強化の取り組みを20ポイント以上上回る結果となりました。例えば「〇〇とは?」という解説記事よりも、「〇〇と△△の違いは?」「〇〇はどんな会社に向いている?」のような、読者が実際に検索しそうな一歩踏み込んだ問いに答える形式のコンテンツが、AI検索時代には有効に機能している可能性があります。
また「従来のSEOの継続・強化」でもB2Cで80.0%と高い成果実感が見られ、AI検索対策と従来SEOは二者択一ではなく、併用が有効と考えられます。
追加対策への意向は8割超、B2Bは「緊急度」、B2Cは「計画性」が成果に直結
今後AI検索への追加対策を実施する意向について尋ねたところ、「強く意向がある(できるだけ早く着手したい)」「ある程度意向がある(数か月以内に検討)」の合計はB2Bで80.5%、B2Cで82.7%と、8割を超える企業が前向きな姿勢を示しています。
B2B企業では「強く意向がある」層(13名)のコンテンツマーケティングにおけるビジネス上の成果実感が76.9%であるのに対し、「ある程度意向がある」層(16名)は50.1%と約27ポイント差があり、対策への緊急度の高さが成果実感と明確に連動しています。
一方、B2C企業では「強く意向がある」層(7名)の成果実感が57.2%にとどまる一方、「ある程度意向がある」層(17名)が70.5%と逆転しています。B2C企業では焦って着手するよりも、計画的に取り組む姿勢が成果実感につながっている可能性があり、事業形態によって最適な対応スピードが異なることが示唆されています。
経年比較で見えてきた変化
2023年調査・2024年調査の過去2回との比較では、今回AI検索への対応以外にも注目すべき変化が見られました。
成果実感は約6割で安定、定着フェーズへの移行を示す
コンテンツマーケティングでビジネス上の成果をあげていると回答した層(「非常に」+「ある程度」あてはまる)は、B2Bで61.1%(22名)、B2Cで58.6%(17名)と、いずれも約6割が成果を実感しています。2024年のB2B約65%からは微減ですが、2023年からの推移を見ると高水準での安定が続いており、コンテンツマーケティングが「お試し」ではなく「定着・成熟フェーズ」であることを示していると考えられます。
一方で「どちらでもない」以下がB2Bで38.9%、B2Cで41.4%と約4割を占めており、成果実感の底上げは引き続き業界全体の課題と言えます。
メインCMSの首位逆転、SaaS型からインストール型へ
メインプラットフォームとして使っているCMSについて、B2B企業では「インストール型CMS(WordPressなど)」が30.6%(11名)で首位となり、前年首位だった「SaaS型CMS」(27.8%・10名)を逆転しました。B2C企業でも同様にインストール型が37.9%(11名)で最多です。
この変化は、企業が「自社でコントロールできる基盤」を重視し始めたことを示唆しています。AI検索時代において、プラットフォームへの依存リスクを下げ、コンテンツの所有権と柔軟性を確保しようとする動きと見ることができます。
B2BのメインチャネルがEメールからオウンドメディアへ逆転
オーガニックチャネルの活用状況では、B2B企業で「オウンドメディア(企業サイト・ブログなど)」が44.6%(29名)で首位となり、前年首位の「Eメール」27.7%(18名)を大きく上回りました。B2C企業は引き続き「SNS」36.9%(24名)が首位を維持しています。
B2B企業におけるオウンドメディア回帰の背景には、メール到達率の低下やAI検索時代における「検索で見つかるコンテンツ」の重要性の再認識があると考えられます。
テキスト生成AIツールがB2Bの主要ツールに
テクノロジー活用では、B2B企業で「テキスト生成AIツール」が29.2%(19名)と、「アクセス解析ツール」(50.8%・33名)に次ぐ2位に浮上しました(B2C企業は13.8%・9名)。前回調査ではまだ少数派だったAIツールが、わずか1年で主要ツール群に食い込んだ格好です。B2B企業とB2C企業の差(約15ポイント)は、AI活用の浸透度に事業形態による大きな差があることを示しています。
予算は「堅実維持」フェーズへ、ただしB2Bで二極化が進む
2026年度のコンテンツマーケティング年間予算は、B2B・B2C共に「100万円未満」が最多(各41.7%・15名、41.4%・12名)で、「500万円未満」までで約7割を占めます。一方でB2B企業では1000万円以上の層が合計約30%を占めており、「低予算で手探り」層と「本格投資」層の二極化が顕著になっています。
予算増加意向については「変化なし」がB2Bで75.0%、B2Cで79.3%と約8割を占め、「増えそう」はそれぞれ約1割にとどまっています。広告予算からの振り替えも限定的で、コンテンツマーケティングへの投資は積極的な拡大よりも「現状維持・堅実運用」フェーズにあることが示されています。
外注トレンドがB2BとB2Cで逆方向に
外注状況では、B2B企業が63.9%(23名)と前年の約70%から約6ポイント低下し、内製化が進んでいます。一方B2C企業は75.9%(22名)と前年の約70%から上昇しており、B2B企業とB2C企業で外注への依存度が逆方向に動いていることが今回の特徴的な発見のひとつです。
外注内容ではB2B・B2C共に「コンテンツ制作」が最多ですが、B2C企業では「編集」「SEO対策」が僅差で続き、複数の領域に外注が分散している傾向が見られます。B2B企業では専門性の高い特定業務への絞り込みが進む一方、B2C企業では制作から配信・最適化まで幅広く外部リソースを活用するスタイルが定着しつつあります。
少人数精鋭チームの定着、「2〜5名」が最多で増員の動きは限定的
専任メンバー数は「2〜5名」が最多(B2Bで41.7%・15名、B2Cで44.8%・13名)で、「0名(専任なし)」もB2Bで27.8%(10名)、B2Cで27.6%(8名)と約3割を占めており、少人数で運営する体制が完全に定着しています。
直近12か月のメンバー数変化では「変わらない」がB2Bで61.1%、B2Cで69.0%と最多で、増員の動きは限定的です。体制の安定を維持しながら、安易な増員よりも効率化とツール活用で成果を上げるスタイルが、今後のスタンダードになっていくと考えられます。
調査結果についてのコメント
近年急速に発展する生成AI技術について、コンテンツマーケティング領域、特にオウンドメディアにおいて、AI検索の影響は無視できないものとなりました。
今回のレポートは、マーケティング現場担当者のAI検索に対する危機感と対策の方向性が生々しく感じられるものとなっています。
これまでのSEOは、主にGoogleなどの検索エンジンで上位表示を目指し、SERP(検索結果ページ)でのクリック獲得を重視していました。一方、AI検索では、ChatGPT、Perplexity、Geminiなどの生成AIが回答を生成する際に、コンテンツが引用・推奨されることを目的とします。これまでの「検索結果の表示」から「AI生成回答内の存在感」へのシフトが今まさに起こっています。
AI検索への対策について、今回の調査結果では「Q&Aナレッジ型コンテンツ」の成果実感が高くなっていました。AI生成回答の「中間材料」として引用されやすい形式とされており、一定の有効性が示された結果です。一方で、全ての検索ニーズを満たすことは難しく(網羅限界)、自社ならではの強みも表現しなければいけません。コンテンツで表現するストーリーや文脈、独自性がさらに重要になるでしょう。
日々の変化が激しく、混迷を極めるAI対応ですが、今後のコンテンツマーケティングの発展には、これからのAI検索時代を「Content is King」の回帰機会と捉えるべきではないでしょうか。そのためには、ユーザー中心の良質なOwned Contentをさらに強化することが重要です。単なる集客を超え、AIと人に響く「意味あるストーリー」設計が求められます。
(Content Marketing Academyチーフ・ストラテジスト 村上健太)
調査概要
調査名:コンテンツマーケティング・サーベイ 2025(CM-SURVEY 2025)
調査期間:2025年11月18日〜2026年1月31日
調査対象:コンテンツマーケティング業務に関係するビジネスパーソン
有効回答数:B2B版36名、B2C版29名(合計65名)
調査手法:インターネットによるアンケート調査
主な調査項目:コンテンツマーケティングの成果、チーム体制と外注、コンテンツ制作と拡散、指標とビジネスゴール、予算と費用、生成AI・AI検索への対応 など
レポート公開:2026年3月31日公開
コンテンツマーケティング・アカデミーについて
コンテンツマーケティング・アカデミー(CMA)は、株式会社日本SPセンターが運営するコンテンツマーケティング専門のコミュニティ・研究機関です。毎年実施するCM-SURVEYのほか、勉強会・ウェビナー・書籍出版など、国内のコンテンツマーケティングの普及・発展に取り組んでいます。
出典元:株式会社日本SPセンター コンテンツマーケティング・アカデミー













