株式会社帝国データバンクが、国内企業における人手不足動向について調査・分析を行い、その結果を公表しました。

調査結果の要約

2025年1月時点では、正社員の不足を実感している企業の割合が53.4%に達し、これはコロナ禍が始まった2020年4月以来の最高値となっています。また、非正社員の不足感を抱える企業は30.6%にのぼっています。

今後は、初任給の引き上げや賃金の増加が人材確保や定着を図る鍵として期待されています。「初任給30万円時代」とも言われる中、賃上げに追いつかない中小企業が増加する見込みで、「人手不足倒産」のリスクも引き続き警戒されるべきです。

調査が実施された期間は2025年1月20日から1月31日まで、全国26,765社を対象に行われ、有効回答数は11,014社で、回答率は41.2%となっています。

なお、雇用過不足に関する調査は2006年5月から毎月実施されており、今回の結果は2025年1月のデータに基づいてまとめられています。

正社員不足の企業は53.4%、非正社員は30.6%の高止まり

慢性的な人手不足はさらに深刻化しており、2025年1月の段階で正社員不足を感じる企業は53.4%に達しています。これはコロナ禍以降での過去最高で、その上昇傾向が止まる兆しは見られません。特に1月という時期においては、2024年の52.6%を上回り、4年連続での増加となっています。

人手不足割合推移
人手不足割合 推移

非正社員に関しては30.6%で、1月としては2年ぶりに3割を超え、過去4番目の水準になっています(2019年の34.4%が最高)。正社員の状況が厳しい中で、非正社員の不足感も持続的に高い数字を維持しています。

業種別分析

正社員:システムエンジニア不足が影響する「情報サービス」が72.5%でトップ

業種別に見た正社員の人手不足割合では、「情報サービス」が72.5%と最も高い結果となりました。前年同月比で4.5ポイントの低下を示しているものの、システムエンジニアの不足が続き、業種別での首位を確保しています。

次いで「建設」が70.4%で、こちらも同様に深刻な状況にあります。「2024年問題」に絡んだ企業の声には、「十分な仕事量があるが、ビジネスモデルの変革や労働コストの上昇により、単純に受注が得られる状況ではない」との意見や、「職人の高齢化と若手育成の不足から協力業者が減少している」との声があがっています。

さらに「メンテナンス・警備・検査」が66.5%、「運輸・倉庫」が66.4%など、全体で8業種が60%以上の人手不足を実感しています。

業種別人手不足割合

非正社員:「人材派遣・紹介」がトップ、飲食店は低下

非正社員の人手不足割合は「人材派遣・紹介」が65.3%で最も高く、2021年6月以来、約3年7か月ぶりに業種別のトップとなりました。この人手不足の全体的な拡大が、企業の派遣人材利用の増加を反映しています。

一方、非正社員の不足感が顕著だった「飲食店」(60.7%)や「旅館・ホテル」(50.0%)は、削減された割合が大きく、順位が逆転しています。コロナで減少した非正社員の人数が回復していることが寄与していると考えられます。

また、「各種商品小売」が56.8%や「飲食料品小売」が54.5%など、個人向け小売業やサービス業が上位に入る現象も確認されています。

業種別非正社員人手不足割合

「人手不足」を感じる企業の68.1%が賃上げを予定

帝国データバンクの調査によると、2025年度に正社員の賃上げを実施予定の企業の割合は61.9%に達し、この中で人手不足を感じている企業は68.1%に上り、全体を大きく上回っています。

この調査は毎年1月に実施され、2025年度の数値は過去の傾向から見ると、2020年度以前の6割を越える数値から一時的に低下した後、2023年度には79.8%にまで上昇し、2025年度には前年度比2.2ポイント増加して、コロナ禍前を上回る水準になっています。

賃上げ見込み

景況感は横ばいでも人手不足は深刻な状況に 大企業の賃上げに中小企業は追いつけるか

2025年1月時点で、正社員の人手不足を感じている企業は53.4%、非正社員では30.6%に達しています。これは調査開始以来の高い水準であり、特に2018年11月の53.9%に近い結果となっています。しかしながら、現在はその時とは異なり、景況感が改善しているわけではありません。

企業にとっては人手不足は深刻な問題であり、従業員の退職や採用の難しさ、さらには人件費の上昇が影響し、「人手不足倒産」が増加しています。2024年には342件が発生し、過去2年間で最多を記録する事態となっています。今後も人手不足が続けば、賃上げ競争は激化することが予想されます。

初任給の引き上げは特に大きな課題とされ、大企業が30万円の初任給を提示する一方で、急激に上昇する原材料やエネルギーコストが中小企業の負担となり、この賃上げに追いつけない状況が続く可能性があります。このように、多くの中小企業が人材の確保と定着に苦しむ中、状況はますます厳しくなっていくことが予想されています。

出典元:株式会社帝国データバンク プレスリリース

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