
2024年10月1日に、ナイキは2025年度第1四半期の決算を発表しました。売上高は115億ドルで、前年同期比10%減少し、全体的な業績は期待を下回る結果となりました。ブランド戦略の見直しとデジタル事業の再構築に注力しているものの、引き続き課題が残っています。
売上減少とデジタル事業の課題
ナイキはデジタル事業の売上が前年同期比で20%落ち込み、これが全体の業績に大きく影響しています。直営店の売上は1%増加し、店舗での顧客の購買意欲は依然として見られますが、ホールセール部門は7%減少し、需要の低下が全体にわたって顕著です。
デジタル分野における成長停滞に加え、地域別でも売上に伸び悩みが見られ、特に北米や中国市場での業績が低迷しています。
ブランド戦略の見直しと製品ポートフォリオの再編
ナイキは、製品ポートフォリオの見直しに着手しており、Air Force 1やAir Jordan 1、Dunkといった定番フランチャイズ商品の供給を減らし、新たな製品ラインアップを展開する方針です。この結果、デジタル事業では売上が大幅に減少しましたが、ホールセール部門では比較的安定した売上が続いています。
今後は、より高いトラフィックが見込まれるチャネルに製品供給を集中させ、利益率の最大化を図る戦略を取っていくとのこと。この取り組みは短期的には売上に影響を与えるものの、長期的にはより健全な製品ポートフォリオの構築を目指しています。
利益率の改善とコスト削減の進展
粗利益率は45.4%に改善し、前年同期の44.2%から増加しました。この改善は、ナイキブランド製品のコスト削減、物流コストの低下、および前年の戦略的価格設定が主な要因です。
また、販売費および一般管理費は40億ドルで、前年同期比2%減少しました。ブランドのプロモーション費用が増加している中、その他の経費を効率的に削減することで、全体的なコストバランスを維持しています。特にスポーツイベントやブランドプロモーションへの積極的な投資が行われる一方で、オペレーティングコストの削減により、経費の効率化が図られています。
地域別の売上動向と課題への対応
地域別では、北米市場が前年同期比で11%の減少を記録し、デジタル事業は15%の落ち込みとなりました。欧州、中東、アフリカ(EMEA)地域も12%の減少が見られ、特にデジタル分野では24%の大幅な下落が報告されています。一方、中国市場では、デジタル事業が34%減少しましたが、ホールセール部門では10%の増加が見られ、地域ごとに異なる動向が浮き彫りになっています。
ナイキは、これら地域別の課題に対応しながらも、特に成長が期待される市場に焦点を当てた戦略を展開するとのことです。中国市場においては、ナイキの強いブランド力を活かし、製品ラインアップの強化を図ることで、さらなる成長を目指すと言います。
CEO交代と今後の展望
ナイキは、2024年10月にエリオット・ヒル氏を新CEOに迎える予定で、ブランドの再構築とデジタル事業の強化に注力するとのこと。また、2025年度の年間ガイダンスを一時撤回し、今後は四半期ごとのガイダンス提供に切り替え、柔軟な対応を行う方針です。
新たな製品の導入と戦略的な取り組みによって、デジタル事業の再構築を進め、長期的な成長基盤の確立を目指していくと発表されました。
あわせて読みたい