CCCMKホールディングス株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 兼 CEO:髙橋誉則)にて、『暮らす人と共に歩み、共に考えるシンクタンク』をコンセプトとする「CCCマーケティング総合研究所」(以下「CCCマーケティング総研」)は、2023年6月の「産業動向レポート」および「産業天気予報(https://thinktank.cccmk.co.jp/industry-29)を発表いたしました。

本レポートは、CCCMKホールディングス株式会社がT会員にサービス提供している家計簿アプリ「レシーカ」ユーザー(約5万人)のレシートデータと、CCCマーケティング総合研究所による全国主要企業へのヒアリング調査に基づき、独自の視点で「食」業態を中心としたレポートをお届けします。
- 簡便性の進化が内食市場を刺激する
食料品の値上げが続いている。インスタント食品やレトルト食品では価格上昇の動きが続いたことから、やや安価な商品やPB商品への移行がみられるが、調味料や食用油などは値上げ後も堅調に推移している。
今回の値上げの動きの中では「水道光熱費の上昇が家計を圧迫していると感じている」という生活者が多く、長く煮炊きする調理や揚げ物などの調理が敬遠されている傾向が表れている。スーパーマーケットの惣菜ではフライや天ぷらの動きが好調で、猛暑の夏には さらにその傾向が強まることが予想されるが、全体としては今後も内食は堅調に推移していきそうだ。
内食においては長く調理の簡便化が重要視されてきたが、この数年で目覚ましい進化を遂げ、簡便調理の市場拡張を牽引しているのがレトルト食品だ。レトルト食品の代表アイテムであるカレーも以前は湯煎をして食べるか、器に移してレンジで温めるのが一般的であったが、包装技術の進化によりレンジでそのまま温められる商品も出ており、簡便化の流れは一層加速している。
レトルト食品は今まで“手抜き”と思われるので主婦層からは敬遠される傾向もみられたが、ここ数年で登場してきた各社の商品はそうした心理的な障壁を打破することにも成功している。
味の素のお肉を入れて圧力調理する「スチーミー」はレンジで温めるだけの簡便さも実現しつつ、調理感を残している点が主婦層にも受け入れられている。明治の「まるごと野菜」シリーズは、栄養分を損なわず野菜を摂るというコンセプトが人気を集め、幅広い世代の利用を取り込んでいる。業務用の世界で長く活用されている真空調理をはじめとする新調理の家庭への転用は今後も続くとみられ、レトルト食品の世界はさらに拡大してくるだろう。
レトルト食品以上に簡便さが売りになっている冷凍食品市場においても従来とは異なる簡便志向の商品が注目を集めている。「冷やし中華」は盛夏に人気の定番メニューだが、麺を茹でて冷やすという調理工程が面倒という声が多く、内食での利用は減少傾向にあり、中食転換が進んでいるメニューの一つだった。この調理工程の面倒さをレンジで温めるだけで完成できる「冷やし中華」は再度、内食への転換を促す可能性もある。
内食においては調理機器の進化も目覚ましく、家庭で作れるメニューは各段に増している。コロナ禍によって家庭での調理はより本格志向が強まったと言われるが、やや内食疲れが出て家庭での調理は再び簡便志向が強まっている。コロナ禍で活性化した内食がさまざまな値上げの波という追い風を受けて拡大していくか、その行方は簡便性への対応が担っているかもしれない。
- 2023年6月の「産業天気予報」

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