パーソルキャリア株式会社が運営する、転職サービス「doda(デューダ)」は、2023年1月の小売・流通業界の転職求人倍率をまとめた「業界版doda転職求人倍率」を発表いたします。なお、本業界の最新動向は、doda編集長 大浦 征也が解説します。

doda転職求人倍率は、中途採用市場における需給バランスを表すもので、dodaの会員登録者(転職希望者)1人に対して、中途採用の求人が何件あるかを算出した数値です。
<算出式※:求人数(採用予定人員)÷ 転職希望者数>※分子・分母はdoda独自の定義により算出したものです。

■doda編集長が語る“小売・流通業界”の最新転職トピックス

アパレル・雑貨系企業は業績回復や人手不足リユース系企業は市場拡大を背景に、販売・サービス職の採用を強化。これらが1月の求人数増加を押し上げる1つの要因に。
・販売・サービス職の経験がある転職希望者の中で、リスキリングへの意識の高まりから「IT」や「マーケティング」のスキルを身に着けたい人が増加傾向。異職種転職は今後もトレンドとなる予想

■2023年1月の概況
新年度の入社を目指す転職希望者が増加し、転職求人倍率は前月比でマイナス。ただし、企業の採用難易度は依然高い状態。

求人数(採用予定人員、以下求人数)とは、転職求人倍率を算出する月に新たに掲載された求人に加え、算出月の前月末時点、かつ算出月に掲載があった求人に記載されている採用予定人員のことを指します。

2023年1月の小売・流通業界の転職求人倍率は、全体の2.34倍※1に対し、 0.50倍となり前月比-0.04ポイントでした(図①、表①)。前月に引き続き、人手不足から企業の採用意欲は高く、求人数は前月比103.5%、前年同月比133.5%と増加。先月に続き過去最多を更新しました(表②)。転職希望者数は、4月入社を目指した登録が増える季節性要因などから、前月比111.8%と伸長し、前年同月比では115.3%でした。1月は、求人数の増加に対して転職希望者の増加が上回ったため、結果的に転職求人倍率は先月と比べマイナスとなりました。


2023年2月は、1月と同じく4月入社を目指して転職活動を始める人が多いため、転職希望者数は増加し、転職求人倍率は下降する見込みです。しかし、小売・流通業界では他業種を視野に入れて転職活動する人も多いことから、依然として企業の採用難易度が高い状態は続くでしょう。
※1:全体版は、doda転職求人倍率レポート< https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/ >を参照ください。

■2023年1月の動向
アパレル・雑貨系企業は業績回復や人手不足、リユース系企業は市場拡大を背景に、販売・サービス職の採用を強化。1月の求人数増加を押し上げる要因に。
1月は、小売りの中でもアパレル・雑貨系企業と、リユース系企業において、販売・サービス職の求人数の増加が目立ちました。販売・サービス職は1求人あたりの採用予定人数が10名規模と比較的多いため、1月の求人数を押し上げたと考えられます。

なお、販売・サービス職の求人増加の背景は、アパレル・雑貨系企業とリユース系企業とでは異なります。アパレル・雑貨系企業においては、2022年後半にかけて行動制限が緩和されたことも影響し、店舗に人流回帰の動きが見られてきています。それに伴い、企業の業績も徐々に回復基調になりました。そこで、これまで控えていた採用への投資ができるようになり、人手が不足していた店舗スタッフの採用を強化したことが求人増加の背景といえます。一方、市場拡大フェーズにあるリユース系企業においては、店舗を拡大することで買取量を増やし、販売する商品ラインナップを充実させる狙いがあります。そのため、新規店舗での販売・接客スタッフが必要になったことが求人増加の背景です。

リスキリングへの意識の高まりから「IT」や「マーケティング」のスキルを身に着けたい販売・サービス職の人が増加。異職種転職は今後もトレンドに。
小売業界において、販売・サービス職の人は、シフト制のはたらき方への不満や、業界への先行き不安といった理由から、職種を変えたいと考える人が多い傾向にありました。
しかし、最近ではリスキリングやキャリア自律といった考え方が浸透しつつあり、手に職をつけたい・スキルを身に着けたいといったポジティブな理由から、異職種転職を検討する人が徐々に増えています。
具体的には、「エンジニア」や「webマーケティング」など、未経験でも挑戦する間口が広がりつつある専門職を目指す人が多く見られます。そのため、今後もしばらくは異職種転職がトレンドになる見込みです。

なお、小売業界の求人の大部分は販売・サービス職が占めます。販売・サービス職の経験者が他職種を希望する分、企業の経験者採用の難易度は高い状況がつづくでしょう。こうした状況を受け、人材確保のため未経験採用にまで間口を広げる動きも加速していく見込みです。

■2023年1月の求人案件数の動向

求人案件数とは、採用予定人数に関係なく、その月のうちに1度でも「doda」に掲載された求人票の数を指します。(新規、繰り越しを含む)

求人案件数は、小売・流通ともにほぼすべての業種で前年同月比が大きく減少。
昨年採用が急務だったデジタル領域の「ミドル・バック」求人が充足したことが要因か。

2023年1月の求人案件数をみると、小売10業種のうち、8業種での前年同月比が大きく落ち込んだのが特徴です。求人案件数減少の背景には、小売業の求人ポジションの変化が影響していると考えられます。

前提として、「ミドル・バック」は専門性の高い職務が多いことから、求人が細分化され、掲載数が多くなりやすい傾向にあります。
2022年は、コロナ禍で人々の購買行動がリアルからデジタルに移行したこともあり、多くの企業ではデジタル領域を強化することが最優先事項でした。そのため、専門性が高いECサイト構築、アプリ開発を行うエンジニアや、デジタル分野における販売促進(SNSを活用したPRなど)、さらにこれらに伴うデジタルマーケティングなどの分野で採用ニーズが高まり、求人案件数が増加しました。しかし、2023年1月時点では、こうした「ミドル・バック」の求人が充足してきたことから、求人数が前年同月比で減少したと考えられます。

ただし、昨年に比べて接客対応などを行う「フロント」の求人は回復してきており、求人ポジションの変化はあるものの、企業の採用ニーズは依然高い状況です。

【解説者プロフィール】doda編集長 大浦 征也(おおうら せいや)


2002年、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。一貫して人材紹介事業に従事し、法人営業として企業の採用支援、人事コンサルティングなどを経験した後、キャリアアドバイザーに。担当領域は、メーカーやIT、メディカルやサービス業等多岐にわたり、これまでにキャリアカウンセリングや面接対策を行った転職希望者は10,000人を超える。
その後、複数事業の営業本部長、マーケティング領域の総責任者、事業部長などを歴任。2017年より約3年間、doda編集長を務め、2019年10月には執行役員に。2022年7月、doda編集長に再就任。転職市場における、個人と企業の最新動向に精通しており、アスリートのセカンドキャリアの構築にも自ら携わる。社外では、公益財団法人スポーツヒューマンキャピタル(SHC) 理事、一般社団法人日本人材紹介事業協会 理事にも名を連ねる。

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