AIショッピング・エージェントが2030年までに全eコマースの約4分の1を占める可能性、A.T. カーニーが論考を公開

2030年までに年間10兆~12兆ドルの市場規模に成長する見通し
Kearneyの分析によると、AIショッピング・エージェントは2030年までに全eコマース取引の約25%を占め、年間オンライン売上として約10兆~12兆ドル規模を取り扱う可能性があるとされています。利用者が設定した目標や制約に基づいてAIが購買プロセス全体を担当するこのモデルが浸透すれば、日常的な反復購入や、比較検討に時間がかかる商品の購入において、大幅な利便性と効率性の向上が期待できるとのことです。
消費者の行動にも、AI活用の拡大を示す明確な傾向が現れています。Vox Mediaが2024年に実施した調査によれば、Z世代の消費者の61%が、従来の検索エンジンや小売サイトではなく、AIツールを使用して商品のリサーチを開始していることが明らかになりました。さらに、同論考で引用されている別の調査データでは、Z世代の購買者の82%が、購買の意思決定を行う際の指針としてAIツールを活用していると報告されています。

人間の意図とエージェントの実行による購買プロセスの再構築
エージェンティック・ペイメントの仕組みでは、消費者が予算、希望するブランド、配送希望時間帯などの条件をあらかじめ設定した後、AIエージェントが商品の発見、比較、交渉、検証、決済までを一貫して担います。リスクレベルや事前に定められたポリシーに応じて、必要な場合にのみ利用者に確認を求める仕組みとなっており、即時購入、価格モニタリング、商品の自動補充やサブスクリプション管理、さらには返品・保証請求まで、購買に関する一連のプロセスをサポートすることが想定されています。
取引の実行方法には、大きく分けて2つの主要なシナリオが存在します。1つ目は「Human present」と呼ばれる方式で、特定の商品やカート内容について最終的な承認を利用者自身が行うものです。2つ目は「Human not present」という方式で、価格帯や商品カテゴリーなど事前に設定した範囲内で、AIが自律的に判断して行動するものです。この変革は、単なる新しい顧客体験の創出にとどまるものではありません。技術基盤、オペレーティングモデル、広告・収益モデルという3つの領域に広範な影響を及ぼし、利用者の意図、取引の承認、トラブル発生時の責任の所在といった、決済バリューチェーン全体の再設計を促すものとなります。
安全な普及に向けた3つの重要課題への対応
同論考では、エージェンティック・ペイメントのエコシステムに参加する企業が検討し解決すべき重要な課題として、以下の3点が提示されています。第1に、エージェントが利用者に代わって支出を行う「権限」の問題、第2に、利用者の意図に合致した商品を購入する「正確性」の確保、第3に、トラブルが発生した際の「責任」の所在の明確化です。
エージェントの不正利用や設定の不備、利用者の意図の誤った解釈、AIによるハルシネーション(誤った情報生成)、チャージバック発生時における責任範囲の不明確化など、従来の決済システムとは異なる新たなリスクへの対策が求められます。
具体的な対応策としては、署名付きで取り消し可能な委任設定の仕組み、利用範囲を限定した支払いトークンの活用、一定の条件を超えた場合に人による確認を求めるHuman-in-the-loopの閾値設定、利用者の意図や制約を構造化して確認する仕組みの構築、紛争対応に活用できる取引証跡の保存、そして関係者間での共有責任モデルの確立などが挙げられています。
さらに、安全性、説明責任、追跡可能性を確実に担保するためには、取引前における本人確認と委任設定、取引中の認証・リスク判定、取引後の監査ログと責任配分を一貫してつなぐ、正式な「トラスト・スタック」の構築が極めて重要であると指摘されています。
監修者プロフィール
河野 修平氏(シニアパートナー)
東北大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)を経て、A.T. カーニーに入社しました。10年以上にわたる戦略コンサルティング経験を保有しており、金融機関を対象とした全社戦略、新規事業開発、営業戦略、IT戦略、オペレーション改革など、広範なテーマにわたって数多くのコンサルティングプロジェクトを手がけています。さらに、様々な業界に向けて、ITインフラ構想、デジタルケイパビリティの強化、デジタル投資評価などのテクノロジー分野におけるコンサルティングも提供しています。
A.T. カーニーについて
A.T. カーニー(グローバル・ブランド名:Kearney)は、100年の歴史を持つ世界有数の経営コンサルティングファームとして、Fortune Global 500企業の75%以上をはじめ、世界各国の政府機関から信頼されるパートナーであり続けてきました。世界40カ国以上に拠点を有し、同社の最大の強みは「人」にあります。インパクト・ファーストを掲げ、独創的な発想と実行力によって、顧客企業が直面する最も困難な課題に挑み、変革の実現を共に推進しています。日本には1972年に進出し、主要産業のリーディングカンパニーに対して、戦略策定から変革の実行まで一貫した支援を提供しています。
出典元:A.T. カーニー株式会社プレスリリース
