株式会社帝国データバンクは、中国政府による日本への渡航自粛要請に伴う日本経済への影響について、企業を対象としたアンケート調査を実施したことが発表されました。この調査は、変化する日中関係が実際のビジネスにどのような影響を与えているのかを明らかにするものです。
調査結果の概要
調査によりますと、中国から日本への渡航自粛が現在の日本経済に「マイナスの影響がある」と回答した企業は42.8%、「影響はない」とした企業は40.8%と、それぞれ約4割で拮抗する結果となっています。一方、「プラスの影響がある」と回答した企業は5.6%にとどまっています。
今後半年程度の影響については、「マイナスの影響がある」と回答した企業は36.4%に低下する一方、「プラスの影響がある」とする企業は11.1%に上昇する見通しとなっています。この結果から、多くの企業は今回の渡航自粛の影響を比較的冷静に受け止めており、その影響は限定的であると認識していることがうかがえます。
この調査は、2025年12月5日から12月9日までの期間にインターネットを通じて実施され、有効回答企業数は1,197社となっているとのことです。
中国「渡航自粛」、日本経済への影響に関する企業の見解
中国外務省は2025年11月14日に、自国民に対して日本への渡航を当面控えるよう注意喚起を行いました。この動きが現在の日本経済にどのような影響を与えているかについて企業に質問したところ、「マイナスの影響がある」と回答した企業が42.8%、「影響はない」と回答した企業が40.8%と、ほぼ同程度の割合となっています。また、「プラスの影響がある」と回答した企業は5.6%でした。
さらに、今後半年程度の影響については、「マイナスの影響がある」と回答した企業は36.4%と現在のマイナス影響の割合を下回り、「プラスの影響がある」と回答した企業は11.1%に上昇しています。このような結果から、多くの企業は今回の渡航自粛を比較的冷静に受け止め、その影響は限定的であると考えていることが示唆されています。

企業からの具体的な声
「マイナスの影響がある」と回答した企業からは、様々な意見が寄せられています。飲食店からは「日本人などで代替できない部分であるため、客数の減少による影響が多少みられる」という声が、不動産業からは「観光業、小売店にはマイナスの影響が出る」という懸念が示されました。これらは小売業や飲食業における来店客数の減少、旅客運送など観光関連への影響を危惧する意見です。
また、精密機械・医療機械・器具製造業からは「ビジネス渡航の自粛に影響があり、日本からの渡航も安全確保の観点から控えざるを得ない」といった、ビジネス渡航への影響を懸念する声も寄せられているとのことです。
一方で、今後の影響については「中国経済にとってもマイナスになりかねないため、半年後には影響は小さくなっていると考える」(機械製造)といった、事態が収束に向かうと予想する意見もありました。また、「中国への過度な依存が望ましくないことを痛感することで、ターゲットを国内や中国以外の市場へ移すきっかけとなるため、今後はプラスの影響があると予想」(その他製造)のように、「脱・中国依存」の動きによるプラスの影響を見込む企業も見られています。

その他にも「オーバーツーリズムの改善に加え、日本人の国内ビジネス活動についても宿泊や移動面でプラスとなる」(情報サービス)など、観光地や宿泊施設の混雑緩和による好影響を期待する意見もあったと報告されています。
業界別の影響の違い
現在「マイナス影響がある」と回答した企業を主要業界別に見ると、観光客の減少により直接的な影響を受ける旅客運送業や旅行業を含む「運輸・倉庫」業界が53.8%と、突出して高い割合を示しています。
今後半年程度の影響については、中国人留学生などによる賃貸需要や、マンション購入需要の減少が懸念される「不動産」業界が42.6%と「マイナスの影響がある」と回答しており、主要7業界の中で唯一、今後のマイナス影響が現在の割合を上回っているとのことです。
一方、「プラスの影響がある」と回答した企業の割合は、「小売」業界で21.7%に上昇し、全体平均を10ポイント以上上回る結果となったことが報告されています。

調査結果のまとめと今後の展望
本アンケート調査の結果、中国から日本への渡航自粛による現在の日本経済への影響については、小売や飲食、宿泊、観光関連への懸念から「マイナスの影響がある」とする企業は42.8%でした。一方、「影響はない」と回答した企業は40.8%と、両者が約4割ずつで拮抗しています。
今後の影響については、「脱・中国依存」の動きによる経済への好影響や、オーバーツーリズムの改善を見込む企業も複数あり、その結果、マイナスの影響は36.4%に低下し、プラスの影響は上昇する見通しとなっています。総じて、多くの企業は今回の渡航自粛を冷静に受け止め、企業マインドには堅調さがうかがえるとのことです。
しかしながら、防衛省は2025年12月7日に、航空自衛隊の戦闘機が中国戦闘機からレーダー照射を受けたと発表しており、日中間の緊張は一段と高まっています。このため、事態の収束は見通しにくく、たとえ収束したとしても同様の問題が再発し、観光産業やビジネス渡航、さらにはサプライチェーンへの影響が生じる可能性も指摘されています。
このような状況下において、日本が観光や生産面などで中国への依存度を高めてきたことが、改めて課題として認識されています。企業はこの機会を捉え、顧客ターゲットや調達先などの取引先を中国に過度に依存しないよう分散化を進めるとともに、国内市場の需要拡大にも注力することが重要であると考えられます。
日中関係の変化は、短期的には一部の業種に影響を与える一方で、中長期的には日本企業のビジネス戦略の見直しや多様化につながる可能性もあります。企業は今後も国際情勢の変化に柔軟に対応していくことが求められるでしょう。
また、今回の調査結果は、日本経済の中国依存度に関する再考を促すものであり、リスク分散や新たな市場開拓の重要性を改めて示唆しています。各企業が自社のビジネスモデルや戦略を見直す契機となることが期待されます。
出典元:株式会社帝国データバンク プレスリリース












