株式会社電通(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員:佐野 傑)は、推し活を行うファン層(ファンダム)の行動欲求をAIで分析するリサーチツール「ファンAIリサーチ 推し活」を開発し、12月5日より社内での本格運用を開始しました。このツールは、企業やIPファンの熱量を活用したマーケティングの支援を目的としており、同社独自のAI戦略「AI For Growth」におけるファン領域のプランニング強化・変革支援を推進する「AI For Growth Fan Marketing」の活動として設計されたものです。
ファンダムが持つ「推しのために何かしたい」という合理性を超えた行動欲求に着目し、AIを活用することでその背景にあるインサイトを迅速に可視化・分析することが可能になります。


近年、アニメやアイドル、スポーツ選手などへの"推し活"は一般的な文化として定着し、ファンの熱量が企業活動に影響を与える事例が増加しています。しかしながら、ファンの心理を十分に理解せずに施策を実施した場合、期待とは異なる反応を招くケースも少なくありません。特に、知的財産(IP)やタレントとのタイアップ施策では、一時的な消費喚起は見込めるものの、施策の途中や終了後に盛り上がりや売り上げが減少し、ファンとの関係性が途切れてしまうという課題も指摘されています。
ファンサーキュレートマーケティングの設計
このような背景を踏まえ、電通では、コンテンツやIPそのものだけでなく、その周囲に存在するファンダムの力に注目。ファンの継続的な愛情を企業やブランドに対する支持へと循環させる新たなマーケティング手法「ファンサーキュレートマーケティング」を設計したとのことです。
さらに、ファンダムを起点とした循環型マーケティングを支援し、企業とファンの間に持続可能な関係性を構築する企画の第一段階として重要なファンダムのインサイトを深掘りするリサーチツール「ファンAIリサーチ 推し活」を新たに開発し、社内での本格運用をスタートさせていることが明らかになりました。
これにより、IPやコンテンツの評価軸に「ファンダムインサイト」という新たな視点が加わることになります。従来は認知度やリーチ力が中心に評価されていましたが、今後はIPの外側に広がるファンダムの熱量やエンゲージメントも含む総合的な評価が可能になると期待されています。
「ファンAIリサーチ 推し活」の概要
電通が独自開発したファンダム解析モデル「ファンダム欲求曼荼羅」を基に、SNSや動画配信サービスにおける公開コメントなどのデータをプライバシーに配慮してAIが解析し、ファンの"推し"に対する感情や行動の背景を素早く明らかにします。また、ファンダムの"ニン"(個性や文脈)を理解したキャスティングやコンテンツ設計を行うことで、ファンの共感が得られる施策とマーケティング戦略の立案に活用できるようになっているとのことです。
さらに、分析と戦略立案の高度化を図るため、電通が保有する大規模調査データとAIによる文脈解析を組み合わせることで、ファンの価値観やブランドへのモチベーションを可視化し、ファンダムとブランドとの接点をより精緻にしながら、ファンの継続的な愛情を短期に終わらせず、企業やブランドに対する支持へと循環させる「ファンサーキュレートマーケティング」を実現させるための「Premium」なリサーチツールも近日導入される予定だということです。
加えて、それらのデータを活用し、ファンダムの特徴を反映した「ファンダムAIペルソナ」の生成も行われます。これにより、企画プロセスにおける受容性検証やチーム内でのアイデア検討時のシミュレーションパートナーとしての活用が可能になります。電通は、今後もファンダムを起点としたマーケティングの高度化を推進し、企業とファンの間に持続可能な関係性を築くことで、ブランド価値の向上に貢献していく方針を示しています。

用語解説
ファンダム:特定の作品や人物を熱心に応援するファン集団のことです。
IP(知的財産):Intellectual Propertyの略で、キャラクターや作品などの権利を指します。
AI For Growth Fan Marketing:電通社内でAIを活用したプランニングサービス系におけるファンマーケティング領域を示す総称です。
ファンダム欲求曼荼羅:ファンの行動欲求を体系化した電通独自の分析モデルです。
ニン:キャラクターや人物の個性や背景を示す概念として使用されています。

この「ファンAIリサーチ 推し活」の開発により、企業はファンの心理や行動をより深く理解し、効果的なマーケティング施策を展開できるようになることが期待されます。特にアニメやゲーム、アイドル、スポーツなど、熱心なファン層を持つジャンルにおいては、このツールを活用することで、ファンの共感を得られるコンテンツ開発やプロモーションが可能になるでしょう。
ファンダムの力を活かしたマーケティングは、一時的な盛り上がりではなく、持続的な関係性の構築を目指すものであり、今後のブランド戦略において重要な位置を占めていくことが予想されます。電通の取り組みは、ファンの感情や行動の背景にあるインサイトをAIによって科学的に分析するという新たなアプローチであり、ファンマーケティングの領域に新たな可能性をもたらすものと言えるでしょう。
出典元:株式会社電通 プレスリリース












