
株式会社ビズヒッツ(本社:三重県鈴鹿市、代表取締役:伊藤 陽介)は、アパレルの仕事をしたことがある363人を対象に「アパレルの仕事できついことに関する意識調査」を実施し、その結果をランキング形式でまとめたとのことです。
アパレル業界は華やかでおしゃれなイメージがあり、流行の最先端で働けることや、ファッションセンスが磨かれたり、顧客とのコミュニケーションにやりがいを感じたりできる魅力的な仕事です。
しかし一方で「きつい」という声も多く、実際に業界で働いている方々の中には、様々な負担を感じている人も少なくないようです。
今回、株式会社ビズヒッツが運営するBiz Hits採用サイト制作代行サービスでは、アパレルの仕事経験者363人に「アパレルの仕事できついこと」についてアンケート調査を実施したとのことです。結果をランキング形式でまとめ、一般社団法人日本服装心理学協会代表理事の久野梨沙氏からの考察も得られています。
この記事の目次
調査概要
調査対象:アパレルの仕事をしたことがある人
調査期間:2025年9月17日~10月1日
調査機関:自社調査
調査方法:インターネットによる任意回答
有効回答数:363人(女性302人/男性61人)
回答者の年代:10代 1.1%/20代 30.0%/30代 35.0%/40代 25.9%/50代以上 8.0%
調査結果サマリー
・アパレルの仕事できついと感じることは「ノルマがある」
・アパレルの仕事がとくにきついと感じる時期は「年末年始」
・アパレルの仕事のきつさをやわらげる工夫は「スタッフ同士で助け合う」
・アパレルの仕事を続けるモチベーションは「お客様に感謝される」
アパレルの仕事できついことは「ノルマがある」
アパレルの仕事経験者363人に「アパレルの仕事できついこと」について質問したところ、最も多かった回答は「ノルマがある(30.3%)」だったとのことです。続いて「立ちっぱなしで働く(24.0%)」「クレームを処理する(22.3%)」という結果になっています。
1位 ノルマがある
・ノルマがあること。個人ノルマがなくなってチームノルマになったが、それでも足を引っ張っている人間に対しての当たりがきつい(20代 男性)
・明確な数字を一人ひとり与えられるわけではないですが、ノルマはありました。空気的に「達成の圧」をかけられるのが辛かったです。「周りはできているから自分もやらなくては」という感覚に陥っていました(30代 女性)
アパレル販売の現場では、売上目標や販売ノルマが設定されることが多く、それを達成できない場合の雰囲気やプレッシャーを感じる人が多いことがわかります。数字で成果を測られるため、顧客本位の接客ができず、売上優先の働き方になってしまい、苦しさを感じるケースも見られるようです。個人目標であれチーム目標であれ、ノルマの存在が大きな負担になっているとのことです。
2位 立ちっぱなしで働く
・ずっと立ち仕事で、足がむくみすぎて頭が痛くなる(30代 女性)
・ハイヒールで立ちっぱなし(40代 女性)
アパレル販売の仕事は基本的に終日立ちっぱなしであるため、脚や腰に負担を感じる人が多くなっているとのことです。特に女性スタッフはヒールを履いて勤務することも多く、身体的負担がさらに大きくなるケースが見られます。
3位 クレームを処理する
・クレーム対応がとくにきついと感じます。お会計の際に返品交換不可の説明をしっかりしているのにも関わらず、数日経ってから返品交換の希望を出されると対応に困ります。とくに電話だと心無い言葉ばかり浴びるので心が痛いです(20代 女性)
・長時間のクレーム対応(50代以上 女性)
理不尽なクレームを経験した人も多く、精神的な負担になっているようです。また、クレーム対応を行いながら他の業務も並行して処理しなければならず、他のお客様を待たせてしまうことで更にプレッシャーが増すケースもあるとのことです。
4位 接客対応が難しい
・人見知りなので、話しかけることに勇気が必要でした(20代 女性)
・お客様にお声かけをしないといけないのに、煙たがられるときが一番辛かったです(30代 女性)
アパレル販売では、お客様のニーズや好みを理解して適切な提案をする力が求められます。人見知りの方にとっては声かけ自体が大きな壁となりますし、お客様に声をかけた際に「話しかけられたくない」という反応をされて傷つくこともあるようです。お客様の性格や状況によって最適な対応は変わるため、正解がない難しさがあります。
5位 自腹で仕事服を買う
・勤務中に自社商品を着用する必要があり、定期的に購入する必要があったことです。アルバイトなのに洋服代がかさみ、金銭的にも精神的にも負担が大きかったです(40代 男性)
・歩合制で、新作は必ず買う必要がある。そのため売り上げがなければ、給料はほぼ消える(50代以上 女性)
お客様に商品を知ってもらうため、多くの店舗では自社製品の着用が求められ、社員割引を使って自費購入するケースが一般的だといいます。「店頭に出ている商品を着なさいというルールがあるため、シーズンごとに新作を購入する」といった体験談もあり、季節ごとにまとまった出費が発生していることがうかがえます。
6位 暇な時間がある
・お客さんが来ないときに、暇すぎてまったく時間が進まないこと(30代 女性)
・小さな百貨店などに配属になると、客数が少なくとにかく暇で時間を持て余します。売り上げゼロもざらにあります。暇な感じがとにかく苦痛です(40代 男性)
忙しさよりも「暇さ」をきついと感じる人も少なくないようです。来店客が少ない時間帯や場所では、やることがなくなり、退屈で時間の進みが遅く感じられ、精神的な負担になるケースもあるとのことです。
7位 勤務が不規則
・キャンペーン期間中は連勤になること(20代 女性)
・シフトで働く。休みが不定期になる(40代 女性)
アパレルショップの勤務体制は、シフト制を採用していることが多く、早番・遅番など勤務時間が不規則になりがちだとのことです。休憩や食事の時間も日によって異なり、繁忙期には連勤になるなど勤務頻度も一定ではありません。「プライベートで予定があっても休みにくい」という声も見られました。
アパレルの仕事がとくにきつい時期は「年末年始」

アパレルの仕事がとくにきつい時期として最も多く挙げられたのは「年末年始(46.3%)」で、わずかな差で2位に「セール期間(46.0%)」が続いたとのことです。
・年末年始、お盆などの長い休み。スーツ販売なので、12月から4月始めまではずっと忙しい(20代 男性)
・年始。人が多いことよりも、ノルマや通し業務がきつい(30代 女性)
・12月~1月前半は予定があっても自由に休みにくい。セール期間も「きつい」と感じる時期。売り上げが伴っていればあまりきつく感じないのだが、伴っていないとやりがいを得られずきつく感じる(40代 女性)
・きついと感じるのは、意外と暇なときでした。繁忙期は忙しくて、商品整理や品出しなどバタバタ動いて時間の流れも早いです。しかし暇なときは時間の流れが遅く感じて、逆に疲れました(30代 女性)
「年末年始」「セール期間」「大型連休」などは来店客数が増えて忙しくなるだけでなく、ノルマが増えたり長時間勤務が続いたりする傾向があるようです。また、年末年始や大型連休は一般的には休暇ムードの中、自分だけが働いているという状況に精神的な負担を感じる人も見られました。
一方で、閑散期には「暇で時間が進まない」「やりがいを感じにくい」といった別の苦労もあり、繁忙期と閑散期それぞれに異なる負担があることがわかります。
アパレルの仕事のきつさをやわらげる工夫は「スタッフ同士で助け合う」

「アパレルの仕事のきつさをやわらげる工夫」を聞いたところ、1位は「スタッフ同士で助け合う(25.3%)」、2位は「しっかり休憩をとる(17.9%)」という結果になったとのことです。
1位 スタッフ同士で助け合う
・店のスタッフは優しい人ばかりなので、暇なときは話してストレス発散。話すくらいしかできることがない(10代 男性)
・役割分担をしっかり決める。「発注」「SNS更新」「時間帯別のレジ担当者」など、スタッフの役割分担をしっかり決めておき、一部のスタッフだけに負担がかからず協力し合えるようにしていました(30代 女性)
身体面でもメンタル面でも、スタッフ同士の助け合いやコミュニケーションが効果的であることがわかります。職場のコミュニケーションが円滑であれば、休暇の調整なども行いやすくなるようです。人間関係の良好さと協力体制の構築が、アパレルの仕事の負担を軽減する重要な要素となっているとのことです。
2位 しっかり休憩をとる
・こまめに休憩をする(30代 男性)
・休憩はしっかりとらせてもらう(40代 女性)
アパレル販売の仕事は立ちっぱなしが基本で、商品入荷時には重い荷物の運搬もあります。また季節を先取りする服を着用するため、暑さや寒さで体力を消耗しやすい環境でもあるとのこと。そのため、しっかり休憩をとることで疲労の蓄積を防ぎ、集中力を維持している人も多く見られました。
3位 在庫管理をする
・在庫管理をしっかりする。ないサイズを表記するなどして、お客さんにわかりやすいようにしておく(30代 女性)
・在庫用の裏ストックの整理整頓を心がけて、必要なときに探しやすくしておく(40代 女性)
在庫管理が適切にできていないと、お客様からサイズ違いや色違いの商品を求められたときに対応が遅れ、お客様の不満につながりかねません。その結果、スタッフにもプレッシャーがかかることになります。そのため、正確な在庫管理に取り組んでいる人も多いようです。
4位 気分転換に努める
・ランチや休憩時間を楽しむ(40代 女性)
・仕事のストレスを発散できる趣味をもつ(40代 女性)
体力的にも精神的にも消耗するアパレルの仕事では、心のリフレッシュが欠かせないとのことです。適切に気分転換を図ることで、困難な状況があっても「気分を新たに頑張ろう」という姿勢を維持しやすくなるようです。
5位 楽しいことを探す
・自分の中で、仕事のやりがいを見つける(20代 女性)
・お気に入りを試着して楽しむ(50代以上 女性)
「お気に入りの商品を試着する」「新作を使ってコーディネートを考える」など、自分なりのやりがいや楽しみを見つけることで、きつさを乗り越えている方法も多く見られました。仕事を単なる作業として捉えるのではなく、楽しさを見出すことで負担感を軽減できる可能性があるようです。
アパレルの仕事を続けるモチベーションは「お客様に感謝される」

アパレルの仕事を続けるモチベーションとして圧倒的に多かったのは「お客様に感謝される(45.5%)」だったとのことです。続いて「売り上げに貢献できる(22.6%)」「おしゃれになれる(16.3%)」という結果になっています。
1位 お客様に感謝される
・お客様からのポジティブな言葉や笑顔(20代 男性)
・入店時は真顔だったお客様が徐々に心を開いてくれて、お買い物後は笑顔で帰られたとき。接客したお客様から、お礼のお手紙をいただいたとき(40代 女性)
真心を込めた接客の結果、お客様から感謝の言葉をもらえることがモチベーションになっているという回答が多く見られました。アパレルの仕事においては、数値では測定しにくい「人の気持ちに寄り添う」というやりがいが、モチベーション維持に大きく貢献していることがわかります。
2位 売り上げに貢献できる
・接客したお客様が商品を購入してくださったとき(20代 男性)
・ディスプレイがうまくいったときと、ディスプレイした商品が売れまくって品切れになったとき。売り上げに貢献できてモチベーションが上がる(40代 女性)
アパレル販売だけでなく、商品企画や販促に関わる人たちにとって、自分の努力が売上につながるという実感はやりがいとなるようです。成果が数字として目に見える形で表れる職種ならではの喜びといえるでしょう。
3位 おしゃれになれる
・かわいい服に囲まれてセンスを磨けること(20代 女性)
・いつも綺麗にして、人の目や流行を気にして、おしゃれを心がけられること(30代 女性)
自身が磨かれる、おしゃれになれるという点もアパレル業界で働く上でのモチベーションとなっているようです。様々な服に囲まれて働くことで、自然とファッショントレンドに触れることができます。販売員やプレスなどはブランドの顔として見られることも多いため、「おしゃれでいよう」という意識も自然と高まります。ディスプレイやコーディネート提案の経験を重ねることで、センスも磨かれていくようです。
4位 リピーターができる
・自分を目的に来店いただけるお客様がいたこと(20代 男性)
・お客様と常に関わる仕事なので、自分で選んだコーディネートを喜んでいただけて、再来店につながったときはかなりモチベーションになります。どこの店舗に異動してもついてきてくれるお客様がいることも!(20代 女性)
常連客ができることで大きな喜びを感じる人も多くいるとのことです。これはスタッフにとって「仕事への自信」や「自分の存在価値の確認」につながる面もあるようです。自分の接客や提案が誰かに必要とされているという実感が、大きなモチベーションとなっているようです。
5位 社員割引で服を購入できる
・やはり、好きな服をお安く着られるところです(20代 女性)
・間違いなく社割と、サンプル商品をもらえること。社割とサンプル商品がなければ、絶対辞めている(40代 女性)
社員割引で商品を購入できることは、アパレル企業で働く上での魅力の一つだといいます。特に自分の好きなブランドで働いている場合は、大きなメリットと感じられるようです。
まとめ
今回の調査結果から、アパレルの仕事には「精神的なプレッシャー」と「体力的な負担」の両方があることが明らかになりました。しかし、スタッフ同士の協力関係の構築や適切な休息をとるなどの工夫によって、その負担は軽減できる可能性があるとのことです。
繁忙期が明確で大変な場面も多いアパレルの仕事ですが、「お客様からの感謝」「売上貢献の実感」などのやりがいも存在します。またファッションを楽しめるという点は、アパレル業界ならではのモチベーション源となっているようです。
華やかな表面の裏には大変さもある一方で、やはり固有の魅力も多い仕事であることがわかります。
久野梨沙氏の考察
今回の調査では「売上ノルマ」「立ちっぱなし」「クレーム対応」が上位に挙げられ、アパレルの仕事が身体面と心理面の両方で負荷がかかりやすいことがよくわかる結果となっています。
特にクレーム対応や接客などは、自分の本心を抑えて店員としての態度を保ち続けるいわゆる「感情労働」であり、疲労につながりやすいもの。負担を軽減するには、この「店員モード」を意識的に切り替えることが有効です。
接客がひと区切りついた瞬間に心の中で「一旦カット」とつぶやき、演じていた自分を一度終えるイメージをつくると、張り詰めた感情も和らぎます。販売員の方には、ぜひこの小さな切り替えを日常に取り入れてみてもらいたいですね。
監修者紹介

久野 梨沙(ひさの りさ)
公認心理師。一般社団法人日本服装心理学協会 代表理事。
アパレル業界での接客研修を長年行ってきた背景から、現場が抱える感情負荷に詳しい。近年は離職防止やメンタルヘルス支援の依頼が増えており、心理面から働きやすい職場づくりをサポートしています。
出典元:株式会社ビズヒッツ プレスリリース












