
株式会社ベンチマークジャパンが、「業務におけるメールソフト(Gmail・Outlook)の生成AI機能利用状況調査 2025年度版」の結果を発表しました。この調査では、GmailとOutlookに搭載された生成AI機能について、認知度やユーザーの活用状況などが明らかにされています。
同社は「メールマガジン購読状況調査」「メルマガ配信業務における失敗談調査」など、日本国内のインターネットユーザーを対象に様々な調査を行っているとのことです。今回の調査は、最新のメールサービスにおける生成AI機能の浸透度や利用実態を把握するために実施されました。
この記事の目次
調査概要
調査方法はインターネット調査で、2025年9月2日~9月11日の期間に実施されたとのことです。対象者は会社員、公務員、自営業を含めた経営者の20代〜60代で、回答者の年齢分布は国勢調査の人口比率に対応しています。有効回答数は409となっています。
【調査結果サマリー】
✔️ メールサービスの生成AI機能を使ったことがある人は37.6%、過半数が未利用
✔️ 生成AI機能を使わない理由1位は「使い方がよくわからないから」
✔️ メリット1位は「メール確認の効率が上がった」
✔️ 困った点・不便な点1位は「プライバシーやセキュリティが気になる」
✔️ 受信者のうち、6割以上はAIが生成した画像や文章だと気づかない
調査結果ダイジェスト
メールサービス(メールソフト)の利用状況
調査ではまず、業務においてGmailとOutlookのどちらを主に利用しているかについて質問されています。その結果は以下の通りです。

Outlookがやや優勢ですが、約5割ずつという結果になっています。世代別の傾向としては、20〜30代はGmail、40〜60代はOutlookの利用がやや多い傾向が見られるとのことです。
メールサービスの生成AI機能の利用状況
次に、メールサービスの生成AI機能について、実際に利用したことがあるかどうかが尋ねられました。

過半数が未利用という結果で、使ったことがある方は37.6%にとどまりました。また、「知らない・使っているかわからない」と回答した方も7.3%存在していることがわかります。

メールサービス別に見ると、Gmailユーザーの方が生成AI機能の利用率は高い結果となっています。「よく使っている」と回答した割合はGmailがOutlookより12.1ポイント高くなっていることがわかります。

年代別の分析では、「使っている」と回答した割合は30代が最も高い結果となっています。「一度も使ったことがない」と回答した方の割合は、概ね年代が上がるほど増加する傾向にありますが、60代ではやや低下しているようです。
また、20代では「知らない・使っているかわからない」と回答した割合が15.7%と、他の年代より高い傾向が見られました。
メールサービスの生成AI機能を使わない理由
「一度も使ったことがない」と回答した方を対象に、使ったことがない理由について尋ねられています(複数選択可)。

「使い方がよくわからないから」が最も多く43.6%となり、次いで「使うメリットを感じないから」が多い結果となっています。生成AI機能に対する理解不足や価値を実感できないことが、利用のハードルになっていることがわかります。
また、自分の言葉で書きたいと考えている方や、正確性やセキュリティへの不安がある方も2〜3割程度いることが明らかになりました。

メールサービス別の分析では、Gmailでは「使うメリットを感じないから」という理由が最も多く、Outlookでは「使い方がよくわからないから」が最も多い結果となっています。また、プライバシーやセキュリティに対する懸念は、Outlookユーザーの方が多い傾向が見られるとのことです。
【Gmail】生成AI機能の利用状況
Gmailユーザーに対し、これまでに使用したことのある具体的な生成AI機能について質問されています(複数選択可)。

「メールの要約」が最も多く57.3%、「返信文の自動生成」が52.1%と、この2つの機能の利用が多いことが明らかになりました。
【Outlook】生成AI機能の利用状況
Outlookユーザーに対しても、使用したことのある具体的な生成AI機能について質問されています(複数選択可)。

Outlookでは「メール下書きの自動生成」が最も活用されており、次いで「メールスレッドの要約」が2位となっています。
Gmail、Outlookのいずれにおいても利用経験がある機能として多く挙げられたのは、メールの要約と返信文作成の補助でした。どちらも日常的なメール業務を効率化するものであり、実務との相性の良さが利用を促進していると考えられます。
メールの要約機能を使う場面
「メールの要約機能を使ったことがある」と回答した方に対し、どのようなメールを受信した時に使用するのかについて質問されています(複数選択可)。

「社内からのメール」「顧客からのメール」がそれぞれ7割を超え、主に社内外の関係者から受け取ったメールで要約機能が使われていることがわかりました。
また、メールマガジンや定期ニュースレター(42.5%)、英語などの外国語メール(20.0%)でも活用されており、日々の情報整理のツールとしても活用されている状況が見られます。
メールサービスの生成AI機能を使うメリット
メールサービスの生成AI機能を使ったことがある方に対し、使用するメリットについて質問されています(複数選択可)。

最も多かったのは「メール確認の効率が上がった」(53.9%)、2位は「メール返信の効率が上がった」(46.8%)、3位は「1日あたりに確認できるメールの件数が増えた」(27.3%)でした。メール業務全体の効率化に役立っていることがうかがえます。
また、約10%弱が「メール経由でのサイト訪問や購入をする機会が増えた」と回答しており、生成AI機能が受信者の行動変化にもつながっていることがわかります。一方で、特にメリットを実感していない方も11%存在し、効果の実感には個人差があるようです。

メールソフト別に見ると、GmailとOutlookのいずれも「メール確認の効率が上がった」が最も多い結果となっています。「メール経由でのサイト訪問や購入をする機会が増えた」と回答した方はGmailでは15.6%いる一方で、Outlookでは0%という結果になっているとのことです。
メールサービスの生成AI機能について困った点・不便な点
生成AI機能を使う中で困った点や不便に感じた点についても調査されました。

最も多かったのは 「プライバシーやセキュリティが気になる」(39.6%) で、続いて「正確性に不満がある」(34.4%)、「意図と合わない・書き直すことが多い(31.2%)」 となりました。安心感の不足や品質への不満が比較的多い結果となっています。
一方で、「特に困ることはない」と回答した方も20%程度おり、一定の利用者は不便を感じずスムーズに活用できている様子も見られました。

GmailとOutlookを比較すると、Gmailは「プライバシーやセキュリティが気になる」、Outlookでは「正確性に不満がある」が最も多い結果となっています。また、Outlookでは「意図と合わない・書き直すことが多い」の回答がGmailより22ポイント程度高くなっていることがわかります。
「特に困ることはない」と回答した方はGmailの方が14ポイント程度高く、生成AI機能に対する不満が少ない傾向が見られるようです。

年代別の分析では、20代は「日本語が不自然だと感じる」と回答した割合が他の世代より高い傾向があり、60代以上は「正確性への不満」が高い結果となっているとのことです。
受信側はAIが生成したものだと気づくか?
日常的にメールを読む中で、画像や動画、文章について、それぞれAIが生成したものだと気づくかどうかについての調査結果も示されています。


AIが作った画像や動画・文章に対し、全体の6割前後は「気づかない」と回答しており、多くのAI生成コンテンツは違和感なく受け入れられていることがわかります。
一方で、約4割弱は「気づくことがある」と答えており、AI特有のパターンを見抜ける利用者も一定数いるようです。こうした違いは、AIコンテンツへの慣れや経験の差によるものと考えられます。
AIが生成したものだと気づいた時にどう感じるか
受信したメールの画像・動画や文章について、AIが生成したものだと気づいた時に、どのように感じることが多いかについても調査されました。

AI生成だと気づいたときの印象は、「特に何も感じない」が最も多く41.0%となりました。また、「ネガティブな印象」が33.2%、「ポジティブな印象」が25.8% となり、全体として受け止め方はまだ分かれている状況であることがわかります。

年代別の分析では、30代は「ポジティブな印象を受ける」と回答した割合が他の年代より高く、「ネガティブな印象を受ける」と答えた割合は最も低い結果となっています。
一方、60代では「ネガティブな印象を受ける」と回答した人が多く、世代によって感じ方に違いがあることが明らかになりました。
メールサービスにあると嬉しいAI機能
調査では、メールソフトにあったらいいなと思うAI機能についての自由記述も集められました。回答の傾向と実際の回答例は以下の通りです。
文章の正確さ・自然さを高める機能
最も多かったのは、メール文章の正確さや自然さを高めたいという声だったとのことです。誤字脱字のチェック機能はGmailやOutlookにすでに備わっていますが、「文脈に合った敬語や自然な表現」といった高度な提案が期待されていることがわかります。
具体的な回答例:「きちんとした敬語の挨拶文」「文章の校正、内容にあった情報の紹介(画像、リンク先)」「過剰な丁寧さの是正機能」「敬語の使い方の正しいAI」「文章構成の見直し、時節に合わせた挨拶文を自動で作成」
セキュリティ・迷惑メール対策機能
次に多かったのは、安心してメールを使いたいというニーズだったようです。迷惑メール対策はすでに標準で備わっていますが、「発信元の詳細を確認できる機能」など、より安心して使える仕組みを求める声が多く見られたとのことです。
具体的な回答例:「自動で判断して迷惑メールやウイルスを隔離・削除してくれる機能」「フィッシングメール振り分け機能」「詐欺メール見分ける」「スパムなど詐欺系のメールと思われるモノについては発信元の詳細を教えてくれる」「社内メールで、誤送信されてくるメールを自動判別&ブロックする機能」
自動化・効率化を高める機能
メール作成や管理を自動化して手間を減らしたいという声もあったとのことです。現在の機能に加え、複数の返信案を提示したり、過去の履歴を学習して内容をパーソナライズしたりと、より高度な自動化を期待する意見が見られました。
具体的な回答例:「自動でメールを作って送ってくれればいい」「返信メールを数パターン用意してくれる」「事務的回答の定型文を数パターン用意しておいてシチュエーションに応じて選択する」「過去のメール文章を読み込んで学習すること」「送信先を解釈して全文を作成してほしい」「メール毎に言葉使いを調整して返事を作成してくれる」
その他のユニークな要望
ごく少数ではありますが、ユニークな要望や「文章の読み上げ」機能を求める声もあったようです。
具体的な回答例:「秀逸なギャグがあると良い」「文章を読み上げてくれる」「やんわりお断り機能」
まとめ
今回の調査により、メールソフトの生成AI機能の認知度や利用状況、ユーザーが感じるメリットや課題が明らかになりました。利用率はまだ37.6%にとどまっていますが、特に若年層を中心に徐々に浸透しているようです。
生成AI機能のメリットとしては業務効率化が挙げられる一方、プライバシーやセキュリティへの懸念、精度の問題なども課題として残されています。今後、これらの課題が解決されることで、より多くのユーザーに活用される可能性があると言えるでしょう。
出典元:株式会社ベンチマークジャパン プレスリリース













