
ブランディング会社TCDの調査研究ユニット「Culture Insight Labo」は、企業理念が従業員の仕事や意識にどのような影響を与えているかを明らかにするため、2025年5月に全国の企業に勤める696名を対象に調査を実施しました。この調査により、企業理念の認知度や共感度において管理職と現場社員の間に大きなギャップが存在することが明らかになりました。

同社はこれまで多くの企業・組織ブランディング支援に携わってきたとのことです。昨今では企業が理念やパーパスを掲げることは一般的になっていますが、それらが実際に現場でどのように意識され、働き方や判断にどう影響しているかについては、これまで十分に議論されてこなかったといいます。
TCDでは、これからのブランディングには「読ませる、見せる表現」だけでなく、「人や組織にどう届くか」という観点が必要と考えているそうです。今回の調査は、ブランドが単なる"言葉"としてだけでなく、"働く力"として機能しているかを明らかにする取り組みとなっています。
この記事の目次
調査結果サマリー:企業理念浸透の実態
今回の「企業ブランドと働き方に関する実態調査」で判明した主要ポイントは以下の通りです。
・事前調査を3,000人に実施したところ、企業理念が存在しない会社が半数以上を占めたとのことです。
・正社員で理念を「はっきり覚えている」のは14%に留まっています。現場を支える社員と管理職以上の間には大きな認知ギャップが存在しています。
・企業理念に強く共感し、日常的に意識している一般社員は1桁台と低水準です。
・理念を「判断基準になる」「モチベーションが上がる」など、ポジティブに受け止めている人は約6割。理念にネガティブな印象を持たない人は約8割にのぼりました。
・理念に求める要素は"シンプル・具体的・進化"です。「新人でも理解できる平易な言葉」「実践できる内容」「時代に応じたアップデート」を求める声が多く見られました。
理念浸透の3つのポイント
理念浸透という課題を乗り越え、組織で活かすためには、具体的に何が必要なのでしょうか。今回の調査結果から、そのために必要な3つの重要なポイントが明らかになりました。
・思い出せるシンプルさ
・語れるストーリー化
・行動につながる仕組み
思い出せるシンプルさ
・横文字・難しい言い回しは最小限にし、新入社員でも一瞬で理解できる言葉にすることが大切です。
・漠然とした内容ではなく、日々の具体的な行動に繋がりやすいように提示することが求められています。
語れるストーリー化
・社員が理念を自分ごととして捉え、入社動機やキャリア形成の基盤に結びつけられるようにすることが重要です。
・経営層だけでなく、現場の社員も自身の言葉で自信を持って語れるような、納得感のある内容にする必要があります。
行動につながる仕組み
・理念を日々の業務における判断基準や具体的な行動指針として機能させることが大切です。
・社員が理念を記憶するだけでなく、実践へと落とし込めるような運用を徹底することが求められます。
・理念の実践が社員のモチベーション向上に繋がるよう、理念に基づいた評価・表彰を行うことも効果的です。
調査ハイライト(抜粋)
正社員で理念を「はっきり覚えている」のは14%、現場と管理職以上の認知ギャップが大きい

理念の認知度は職位間で格差が見られました。経営層・管理職の40.3%が「はっきり覚えている」と回答したのに対し、正社員の確実認知層は14.3%まで低下しています。
社員の意識を望ましい方向に導くインナーブランディングを推進するためには、「認知・共感・実践」の3つのフェーズを経る必要があるとされています。その入口である「認知」が不十分であれば、その先フェーズである「共感」や理念の「実践」の足かせになってしまいます。現場の主力となる正社員の認知度の低さは喫緊の課題であると言えるでしょう。
企業理念へ強く共感、意識する一般社員は1桁台と低水準。理念に強く共感し、実践する連鎖が生まれていない
正社員と契約/派遣社員の中で、理念に「とても共感している」・日常業務で理念を「よく意識している」と回答した人はいずれも1桁台に留まりました。理念を自分事として捉え、その内容に納得感や親近感を抱くことが「共感」形成の鍵となります。「共感」されない企業理念は「実践」には結びつきにくいため、企業理念の社内浸透における最も重要なKPIは「共感」のスコアアップだと考えられます。
・ブランド(理念)の共感度

・日頃のブランド(理念)の意識度

理念が単なるスローガンで終わるか、社員一人ひとりの働く支えになるかを分けるのは、"言葉のデザイン"と"企業と社員の関わり方"にあると同社は分析しています。企業が自らのブランドを再定義し、社員との関係性を見直すうえで、今回の調査が一つのヒントとなることが期待されます。
同社のCulture Insight Labでは、今後もブランド、企業文化、働き方にまつわる実態を深掘りしながら、価値ある継続的な発信を行っていく予定だそうです。
調査概要
調査対象
従業員数21名以上の会社・団体に属し、且つ企業理念が策定されていると回答した22歳〜65歳の方々です。
・男性414名、女性282名 計696名
・経営者/役員、管理職(部長以上)、正社員、契約/派遣社員
調査方法/期間
インターネット調査/2025年5月10日〜2025年5月20日
調査内容
自分の勤める会社の理念に対する認知や共感、意識度合いを調査しています。
・勤める会社の理念を覚えているか
・勤める会社の理念に共感しているか
・理念があることでポジティブ(ネガティブ)な影響を感じたことがあるか
・理念を日頃どの程度意識してるか
・勤める会社の理念を社内外の人に自信を持って説明できるか など
TCDについて
東京銀座・兵庫芦屋を中心に50年の実績を持つブランド・デザイン・カンパニーです。「経営にデザインの力を」をパーパスに掲げ、企業・事業のブランド戦略立案から、ネーミングやブランド・アイデンティティの開発、商品施策に関わるパッケージ・デザインの開発、さらに販売施策に関わるストア・ブランディング、ブランド・プロモーションまでブランディングに関する様々な活動をサポートしています。
「Culture Insight Lab」(カルチャーインサイトラボ)とは
ブランディングに関する幅広い支援を行うTCDが、ブランディングから生活に関することまで、あらゆる調査を実施し、テーマの真相を深く掘り下げ"TCDスコープ"として社会に発信していく調査研究チームです。
出典元:株式会社TCD プレスリリース