
経済産業省は2025年8月26日、「令和6年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」の結果を公表しました。本調査は1998年度から毎年実施されており、今回は27回目となります。国内BtoC・BtoB市場の拡大に加え、CtoCや越境ECでも成長が確認されました。
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国内BtoC-EC市場:26.1兆円に拡大

2024年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は26.1兆円となり、前年の24.8兆円から5.1%増加しました。直近2年間でも22.7兆円→24.8兆円→26.1兆円と拡大を続けています。
また、BtoCのEC化率は9.8%(前年比0.4ポイント増)となり、引き続き着実なデジタルシフトが進展しています。

分野別では、以下のカテゴリーが2兆円を超える規模となりました。
- 食品・飲料・酒類:3兆1,163億円
- 生活家電・AV機器・PC等:2兆7,443億円
- 衣類・服飾雑貨:2兆7,980億円
- 生活雑貨・家具・インテリア:2兆5,616億円
EC化率が特に高いのは「書籍・映像・音楽ソフト」(56.45%)や「家電・PC関連」(43.03%)であり、物販系分野の中でもデジタル適合度の高い商材が存在感を示しています。
サービス・デジタル分野の動向

サービス系分野では「旅行サービス」が3兆5,249億円と大きなシェアを占めました。コロナ禍で打撃を受けていた旅行、飲食、金融サービスは2023年に続き回復基調が鮮明です。
一方、デジタル系分野では「オンラインゲーム」が1兆2,553億円と最大市場を形成していますが、前年比0.58%減と横ばいで推移しました。成熟市場に入りつつある様子もうかがえます。
BtoB-EC市場:514兆円超え
企業間取引における電子商取引(BtoB-EC)は、2024年に514.4兆円へと拡大しました(前年比10.6%増)。
BtoBのEC化率は43.1%(前年比3.1ポイント増)となり、企業取引の半分近くが電子化されていることになります。特に製造業や流通分野での導入が進み、業務効率化とコスト削減の観点からも今後さらなる浸透が期待されます。
CtoC-EC市場:2.5兆円規

フリマアプリなどを中心とするCtoC-EC市場は、2024年に2兆5,269億円(前年比1.82%増)と推計されました。成長率は鈍化傾向にあるものの、日常生活に定着した売買形態として一定の市場規模を維持しています。
ただし、実際にはCtoCの取引の中にBtoBやBtoCが混在している点には留意が必要です。
越境EC:日中間で2兆6,000億円規模に

越境ECも堅調に拡大しています。2024年における中国消費者による日本事業者からの購入額は2兆6,372億円(前年比8.5%増)、米国事業者からの購入額は3兆1,397億円(前年比6.0%増)でした。
日本、米国、中国の3ヵ国間取引はいずれも拡大傾向にあり、特に中国市場向けの需要が伸びています。
日本企業にとっては、国内市場に加えて海外販路を強化する好機が続いているといえるでしょう。
まとめ
今回の調査結果からは、BtoC・BtoBともに市場規模が堅調に拡大し、EC化率も上昇していることが確認できました。旅行や飲食などのサービス系分野は回復が鮮明で、物販系では食品や家電、アパレルがけん引役となっています。
また、CtoC市場は定着段階に入りつつあり、越境ECも安定した成長を続けています。日本のEC事業者にとっては、国内外双方でのチャネル戦略を柔軟に組み立てることが重要になるといえそうです。