
株式会社ブランド総合研究所が第20回「地域ブランド調査2025」を行い、その結果を発表しました。
全国で最も魅力的と評価された都道府県は17年連続で北海道となっていますが、神奈川県は調査史上初めて4位にランクインしています。一方、東京都は5位に後退する結果となっています。
関西万博の開催地である大阪府は前年から順位を一つ下げていますが、隣接する奈良県と兵庫県はそれぞれ順位を上昇させています。市区町村ランキングでは函館市が2年連続で1位を獲得。鎌倉市が順位を上げるなど、上位地域で大きな変動が見られています。
この調査は、国内1,000の市区町村および47都道府県について、認知度や魅力度、イメージなど全90項目にわたって消費者が評価する大規模調査です。インターネットを通じて全国の消費者33,449人から得られた有効回答をもとに、20代から70代の人口構成に合わせて集計・分析されています。この調査は2006年から毎年実施されており、今回で20回目となります(都道府県の調査は2009年から開始され、今回が17回目)。
この記事の目次
2023年から地域ブランドは新たなフェーズへ
1000市区町村の魅力度の平均を年度別に比較すると、地域活性化に大きな影響を及ぼした出来事を境として、5つのフェーズに分けることができることがわかっています。
地域ブランド元年と呼ばれる2005年からの黎明期、東日本大震災を機に始まった復興期、2015年からの地方創生、2020年からのコロナ禍、そして2023年からの新フェーズです。このグラフからは、それぞれのフェーズで異なる傾向が見られることがわかります。

1000市区町村の魅力度の平均点の推移
これを回答者の年代別に分析すると、その傾向には大きな変化があることが明らかになっています。
黎明期や復興期では年代が高いほど平均点が高い傾向にありましたが、地方創生やコロナ禍のフェーズでは20代や30代の評価が上昇し、40代以上より高くなっています。
新フェーズでは20~30代は一度下降した後、2025年には再び上昇していますが、40代以上はほとんど変化していない状況です。

回答者の年代別による1000市区町村の魅力度の平均点の推移
つまり、新フェーズでは若年層とそれ以外の層で地域に対する評価の状況が大きく異なっている可能性があります。今後、各地域で地域活性化に取り組む際には、ターゲットによって綿密な分析を行い、それぞれのターゲットに適した戦略や情報を展開していく必要があるでしょう。
熊本はITと空港効果で上昇(都道府県・魅力度ランキング2025)

都道府県魅力度ランキング2025
1位以下で大きく順位を上昇させたのは19位の熊本県です。前年の24.1点から27.7点へと3.6点上昇し、これは奈良県に次ぐ大きな伸びでした。
熊本県では、世界最大の半導体企業関連の工場が2024年末に稼働したことから、「IT・先端技術の県」というイメージが全国5位と高くなっています(10年前の2015年には25位)。また、新空港の影響で観光意欲が前年の22位から14位へと急上昇し、「アクセスがいい」という評価も34位から25位へと上昇しています。
また、26位の山形県も前年の33位から順位を大きく上げており、山寺(宝珠山立石寺)や米沢上杉まつりが注目を集めています。
伊勢市、出雲市が急上昇(市区町村・魅力度ランキング)

市区町村魅力度ランキング50
市区町村ランキングでは、2033年の伊勢神宮の式年遷宮の儀式が始まった伊勢市が前年の23位から13位へと順位を上げています。また、出雲市も44位から20位へと大きく順位を上昇させています。
また、15位の屋久島町、26位の南富良野町、31位の美瑛町、42位の洞爺湖町、45位の白川村、48位の白浜町など、観光人気の高い町村も軒並み順位を上げています。
1000市区町村の魅力度の平均は11.2点で前年より0.3点上昇していますが、ランキング上位の地域では点数を落としているケースが見られます。一方で、500位以下の平均では0.6点上昇しており、中下位の地域が全体的に評価を高めていることがうかがえます。
居住意欲度は神奈川県が1位に、鎌倉市の観光意欲度も急上昇
地域ブランド調査には、魅力度以外にも観光意欲度や居住意欲度など「ヒト・モノ・カネ」の流入につながる行動指標や、地域資源やイメージなどの評価に関する項目など、魅力度を含めて都道府県、市区町村ごとに90項目の数値化した指標があります。その中で主要な指標の上位は以下のようになっています。
居住意欲度の1位は神奈川県で、2021年以来4度目の1位となりました。具体的な商品の購入意向を表す「食品想起率」では、静岡県や長崎県、福岡市や仙台市などで大きく順位が上昇した地域が見られます。

都道府県の各指標の上位

市区町村の各指標の上位
市区町村では、鎌倉市が観光意欲度で前年の16位から5位へ、居住意欲度も前年の7位から3位へといずれも大きく順位を上昇させています。同様に軽井沢町も顕著な上昇が見られます。
市区町村の個々の指標は、イベントや観光キャンペーン、スポーツチームや選手の活躍、テレビドラマや映画、アニメの舞台化などによって大きく変動することが多い傾向があります。
居住意欲は観光より伸びが大きく、産品は低下

各指標の平均点の経年比較
これまでに紹介した6つの指標が経年でどのように変化したかを、1000市区町村の平均値で比較しています(都道府県調査を開始した2009年の結果と比較)。数値は2009年の平均値からの伸びを%で算出しています。
最も伸びた指標は居住意欲度で、83.5%も上昇しており、特に地方創生への取り組みが本格化した2015年から急上昇しています。これは観光意欲度の伸び(21.4%)よりもはるかに大きいことがわかります。
一方、食品や食品以外の産品は2007年より低下しており、2015年以降の伸びも大きくない状況です。
調査概要
「地域ブランド調査2025」は、ブランド総合研究所が年1回実施している調査で、2006年にスタートし、今回で20回目を迎えます。調査対象は全792市(2025年4月末現在)と東京23区、および地域ブランドへの取り組みに熱心な185の町村を加えた計1000の市区町村と、47都道府県に対して魅力度など計90項目を数値化したものです。
・調査方法:インターネット調査
・回答者:20代~70代の消費者を男女別、各年代別、地域別にほぼ同数ずつ回収し、日本の縮図となるように、年齢や地域人口の分布にあわせて再集計しています。
・有効回収数:33,449人(一人の回答者に対して市区町村の調査票では20市区町村、都道府県は11または12都道府県を提示し、それぞれについて回答してもらいました。)
・調査対象:全国1,000の市区町村(全792市+東京23区+185町村)と47都道府県
・調査時期:2025年6月24日~7月9日
・調査項目:以下の計90項目(各地域の調査結果を数値化した項目数)
基本指標:認知度、魅力度
行動指標:情報接触度、観光意欲度、居住意欲度、産品想起率(食品想起率、非食品想起率)
説明指標:情報接触経路(「旅やグルメに関する番組」など14項目)
地域コンテンツの認知(「海・山・川・湖などの地理的名称」など17項目)
訪問経験(「行楽・観光のため」など6項目)
地域資源評価(「街並みや魅力的な建造物がある」など18項目)
地域の特性(「歴史・文化のまち」など14項目)
地域イメージ(「あこがれる」など14項目)
出典元: 株式会社ブランド総合研究所 プレスリリース